衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問22:作業環境測定と評価
作業環境測定士の資格区分および作業環境測定の実施に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア作業環境測定士は第1種と第2種に分かれており、第1種作業環境測定士はすべての指定作業場の作業環境測定が実施でき、第2種作業環境測定士は分析機器を必要としない一定の作業環境測定のみ実施できる。
- イ特定化学物質(第1類・第2類物質)の測定が実施できるのは第1種作業環境測定士のみであり、第2種作業環境測定士は特定化学物質の測定を実施することができない。
- ウ特殊健康診断は、有害業務に従事する労働者に対して法令が定める頻度(多くは6か月以内ごとに1回)で実施しなければならず、測定結果の記録は5年間保存することが義務付けられている。
- エ作業環境測定機関とは、都道府県労働局長の登録を受けた事業者であり、指定作業場の作業環境測定の代行を行う機関である。作業環境測定の一部業務(分析等)を他の機関に委託することは一切認められていない。正答
- オ作業環境測定の実施が義務付けられる「指定作業場」とは、有害な業務が行われる作業場のうち、安衛法および安衛令により具体的に指定された作業場を指し、すべての有害業務作業場が対象となるわけではない。
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誤りはエです。「作業環境測定の一部業務(分析等)を他の機関に委託することは一切認められていない」という記述が誤りです。実際には、作業環境測定機関は測定・分析業務の一部を他の適切な機関に委託することが認められている場合があります。「一切認められていない」という全面禁止の記述は過剰に厳格すぎる誤りです。
ア(第1種・第2種の差)・イ(特定化学物質は第1種のみ)・ウ(特殊健診の頻度6か月ごと・記録5年保存)・オ(指定作業場は全有害業務ではなく安衛令に列挙されたもの)はすべて正しい内容です。
作業環境測定士の資格区分と測定対象の違い:
| 区分 | 測定対象 | 特化則測定の可否 |
|---|---|---|
| 第1種 | すべての指定作業場(分析機器使用を含む) | 可 |
| 第2種 | 分析機器を必要としない指定作業場(温熱・騒音・放射線の一部等) | 不可(特定化学物質・有機溶剤等は第1種のみ) |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 第1種作業環境測定士は分析機器使用を含むすべての指定作業場の測定が可能。第2種は定量分析等の専門的な測定を除く一定の測定に限定。作業環境測定法第3条。
- イ(正): 特定化学物質・有機溶剤等の化学物質の測定は分析機器(ガスクロマトグラフ・吸光光度計等)の使用と専門的な分析知識が必要なため、第1種のみが実施可能。
- ウ(正): 有害業務の特殊健康診断は6か月以内ごとに1回(有機則・特化則等)。健康診断結果の記録保存期間は一般的に5年間(特殊健診)。なお特定化学物質の一部(発がん性物質等)は30年保存の規定がある場合もある。
- エ(誤): 作業環境測定機関が業務の一部を委託することが「一切認められていない」は過剰な誤りです。作業環境測定法の規定において、適切な条件のもとでの業務委託(分析の一部等)は実務上認められる場合があります。「一切禁止」という断定が誤りの核心です。
- オ(正): 指定作業場(作業環境測定の義務が課される作業場)は安衛法・安衛令により列挙される作業場(有機溶剤業務作業場・特定化学物質作業場・鉛業務作業場・放射線業務作業場・粉じん業務作業場等)であり、有害業務全般が対象ではありません。
【理論的背景】
作業環境測定は専門的な資格者による測定と評価が求められる制度です。作業環境測定士という資格制度は、「正確な測定・適切な評価」を担保するために設けられており、資格の区分(第1種・第2種)は測定対象の難易度・必要な専門知識の範囲を反映しています。作業環境測定機関は外部委託の専門機関として事業者をサポートする役割を担います。
作業環境測定士の資格取得要件(概略):
- 第1種: 化学・物理・法学の試験(筆記)→実技講習→登録
- 第2種: 第1種より範囲が限定的な試験(筆記)→実技講習→登録
- いずれも5年ごとの登録更新・継続教育が求められる
指定作業場(作業環境測定の義務対象):
安衛令第21条が指定作業場を規定。主な対象:
- 土石・岩石・鉱物・金属・炭素の粉じん作業場(じん肺対策)
- 有機溶剤業務(有機則の対象)
- 特定化学物質業務(特化則の対象・第1類・第2類)
- 鉛業務(鉛則の対象)
- 四アルキル鉛業務
- 放射線業務(電離則の対象)
- 騒音の著しい作業場(85dB以上等)
- 暑熱・寒冷・多湿の屋内作業場(一定の温熱条件)
「指定作業場ではない有害業務作業場」の存在(オの意義):
有害物質を扱う作業場であっても、安衛令第21条に列挙されていない種類の有害業務では作業環境測定の法的義務は生じません(ただし事業者の自主的な管理は推奨・義務的ガイドラインで求められることもある)。
【実務・条文構造】
作業環境測定の実施主体と外部委託:
実施主体:
- 事業者が自ら実施(事業場内に作業環境測定士を置く場合)
- 作業環境測定機関に委託して実施(外部委託)
作業環境測定機関(作業環境測定法第33条等):
- 都道府県労働局長への登録制
- 登録要件: 作業環境測定士の在籍・必要な測定機器の保有・業務規程の策定等
- 業務の一部委託: 測定の一部(特に専門的な分析)を他の分析機関に委託することは実務的に行われる場合がある(「一切認められていない」は誤り)
作業環境測定の記録保存期間(物質別):
| 物質・業務 | 記録保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 有機溶剤業務 | 3年間 | 有機則第28条 |
| 特定化学物質(一般) | 3年間 | 特化則第36条 |
| 特定化学物質(発がん性の一部:石綿等) | 40年間(または永久) | 石綿則等(特殊) |
| じん肺粉じん業務 | 7年間 | 粉じん則第26条 |
| 放射線業務 | 5年間 | 電離則第54条 |
| 特殊健康診断記録 | 5年間(一部30年・40年) | 各特別規則 |
測定の頻度(主要な業務):
- 有機溶剤業務: 6か月以内ごとに1回
- 特定化学物質業務(第1・第2類): 6か月以内ごとに1回
- 放射線業務: 1か月以内ごとに1回(放射線測定器による)・外部線量: 3か月以内ごとに1回
- 騒音作業: 6か月以内ごとに1回
【試験での位置づけ】
作業環境測定士・測定機関問題の最頻出は「第1種と第2種の区分(特定化学物質は第1種のみ)」「指定作業場の概念(全有害業務ではなく安衛令で列挙されたもの)」「特殊健診の頻度(6か月ごと)・記録保存(5年)」の3点です。エのような「業務委託が一切禁止」という過剰に厳格な誤りは「業務委託の可否」についての正確な理解を試すパターンです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 第1種・第2種の区別は「分析機器(ガスクロマトグラフ・分光光度計等)を使った化学分析が必要かどうか」が実質的な境界線です。温熱環境(WBGT計・乾湿球温度計等)・騒音(騒音計)等は比較的単純な機器で測定できるため第2種でも対応可能です。
- イ: 特定化学物質の測定に第1種が必要な理由: 有害性の高い発がん物質・慢性毒性物質の測定では、分析の精度(低濃度での検出能力)が特に重要であり、高度な分析技術・専門知識を持つ第1種作業環境測定士による実施が必要とされています。
- ウ: 特殊健康診断の種類(対応する業務): ①有機溶剤業務・②特定化学物質業務・③鉛業務・④四アルキル鉛業務・⑤放射線業務・⑥高圧室内作業・⑦潜水業務・⑧じん肺健診(じん肺法)・⑨騒音業務(聴力検査)等。いずれも6か月以内ごとに1回が基本。
- エ: 作業環境測定機関の外部委託の実態: 測定機関が保有していない特殊な分析機器が必要な場合や、サンプリングと分析を分担する場合等に、一部の分析業務を外部の専門分析機関に委託することは実務上行われます。ただし測定機関は委託先の分析の適切性に責任を持ちます。
- オ: 指定作業場以外の有害業務作業場では、法的義務としての作業環境測定はありませんが、化学物質管理の観点から「リスクアセスメント」(安衛法第57条の3)が義務付けられており(2022年改正で強化)、実態上は自主的な作業環境測定・曝露評価が求められます。
【根拠】作業環境測定法(第1種・第2種作業環境測定士の区分・測定機関の登録制度)・安衛法第65条・安衛令第21条(指定作業場の列挙)。特殊健康診断の頻度・記録保存期間は各特別規則に準拠。
【補足】エ(誤): 作業環境測定機関の業務委託が「一切認められていない」は過剰な誤り(一部委託は実務上認められる場合がある)。第2種では特定化学物質測定は不可(第1種のみ)。特殊健診=6か月ごと・記録保存5年。指定作業場=安衛令で列挙された特定作業場(全有害業務ではない)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 作業環境測定法・安衛法第65条。作業環境測定機関の登録・業務委託に関する規定は作業環境測定法に準拠。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。