衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問46:有害化学物質の分類と性状
以下の業務のうち、作業主任者の選任が**不要な**ものはどれか。
- ア屋内の印刷工場において、第2種有機溶剤(トルエン含有シンナー)を使用して印刷機の洗浄作業を行う業務
- イ特定化学物質の第3類物質(アンモニア)のみを取り扱う屋内作業場での作業業務正答
- ウトンネル工事現場において、ずい道等の掘削作業(粉じんを発生させる作業)に従事する業務
- エ第1種酸素欠乏危険作業(地下ピット内での清掃作業・酸素濃度18%未満のおそれあり)に従事する業務
- オ特定化学物質の第2類物質(クロム酸)を製造・取り扱う業務
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作業主任者の選任が不要なのはイです。特定化学物質の第3類物質のみを取り扱う業務には、特定化学物質作業主任者の選任義務がありません。第3類物質(アンモニア・塩酸・硫酸・硝酸・フッ化水素等)は主に大量漏えいによる急性障害防止を目的として管理される物質群で、第1類・第2類に課される作業主任者の選任義務が適用されないのです。
ア(第2種有機溶剤=有機溶剤作業主任者が必要)・ウ(ずい道等の掘削=ずい道等の掘削等作業主任者が必要・安衛令第6条第10号の2)・エ(第1種酸欠危険作業=酸素欠乏危険作業主任者が必要)・オ(第2類特化物クロム酸=特定化学物質作業主任者が必要)はいずれも選任義務があります。
主要な有害業務と作業主任者の選任義務:
| 業務の種類 | 必要な作業主任者 | 根拠 |
|---|---|---|
| 有機溶剤業務(第1・第2種) | 有機溶剤作業主任者 | 安衛令第6条第22号 |
| 特定化学物質業務(第1類・第2類) | 特定化学物質作業主任者 | 安衛令第6条第18号 |
| 特定化学物質業務(第3類のみ) | 不要 | 安衛令第6条の規定外 |
| 鉛業務 | 鉛作業主任者 | 安衛令第6条第19号 |
| 酸素欠乏危険作業(第1種) | 酸素欠乏危険作業主任者 | 安衛令第6条第21号 |
| 酸素欠乏危険作業(第2種) | 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者 | 安衛令第6条第21号の2 |
| ずい道等の掘削の作業 | ずい道等の掘削等作業主任者 | 安衛令第6条第10号の2 |
| ※「粉じん作業主任者」という資格・選任規定は存在しない(粉じん則に作業主任者の規定なし) | — | — |
| 電離放射線業務 | 放射線作業主任者(免許) | 安衛令第6条第5号 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(選任が必要): 第2種有機溶剤の屋内業務には有機溶剤作業主任者の選任が必要(安衛令第6条第22号)。有機溶剤業務で作業主任者が不要なのは「第3種有機溶剤のみを使用する場合」が多い(有機則の適用除外規定による)。
- イ(選任不要=正答): 第3類物質のみの業務では特定化学物質作業主任者の選任義務なし。第3類は主に漏えい防止・急性中毒防止が管理目的であり、作業主任者制度の対象外。
- ウ(選任が必要): ずい道(トンネル)等の掘削作業は、安衛令第6条第10号の2に基づき「ずい道等の掘削等作業主任者」(技能講習修了者)の選任が義務。なお作業主任者の根拠は粉じん則ではなく安衛令第6条であり、「粉じん作業主任者」という資格は存在しない点に注意(粉じん則には作業主任者の選任規定はなく、防じんマスク・除じん装置・作業環境測定等を規定)。
- エ(選任が必要): 酸素欠乏危険作業(第1種)には「酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了者」の選任が必要。
- オ(選任が必要): 第2類物質(クロム酸等)の製造・取扱い業務には特定化学物質作業主任者の選任が必要(安衛令第6条第18号)。
【理論的背景】
作業主任者制度は、特に危険・有害な業務において専門的な知識を持つ者(技能講習修了者または免許保有者)が作業を指揮・監督することで労働災害を防止するための制度です(安衛法第14条)。「どの業務に・どの種類の作業主任者が必要か」は安衛法第14条の委任を受けた安衛令第6条に列挙されており、この列挙を正確に把握することが試験・実務両面で重要です。
特定化学物質第3類物質に作業主任者が不要な理由:
第3類物質(アンモニア・塩酸・硫酸・硝酸・フッ化水素・二酸化硫黄等)の主な管理目的は「大量漏えい時の急性中毒・環境汚染の防止」です。これらの物質は確かに刺激性・腐食性が強いですが、発がん性・慢性障害性という点では第1・2類より格段に低いとされます。そのため「作業中の専門的な指揮・監督(作業主任者)」よりも「漏えい防止設備・緊急時措置計画(主に工学的・設備的管理)」が中心となるため、作業主任者の選任は義務化されていません。ただし第3類物質でも安全衛生管理(保護具の使用・緊急連絡体制等)は別途義務があります。
有機溶剤業務の例外(第3種有機溶剤と全体換気の場合):
有機溶剤業務について、「第3種有機溶剤のみを使用し、全体換気装置を設置している一定の作業」では有機溶剤作業主任者の選任が不要になる場合があります(有機則第3条のただし書等に基づく適用除外)。ただしこの適用除外の条件は複雑であり、試験では「第1種・第2種有機溶剤の屋内業務→作業主任者が必要」という原則で答えることが安全です。
【実務・条文構造】
作業主任者の資格要件(主要な有害業務):
特定化学物質作業主任者:
- 資格: 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習(都道府県労働局長の登録機関が実施)を修了した者
- 対象業務: 第1類・第2類物質の製造・取扱い業務(第3類は対象外)
- 職務: 作業の指揮・局所排気装置等の点検・保護具着用の確認等
有機溶剤作業主任者:
- 資格: 有機溶剤作業主任者技能講習修了者
- 対象業務: 第1種・第2種有機溶剤を使用する屋内作業場等での業務
- 職務: 作業の指揮・局所排気装置等の点検・保護具使用確認
酸素欠乏危険作業主任者・酸素欠乏硫化水素危険作業主任者:
- 第1種:酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了者
- 第2種:酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習修了者(第1種の講習を包含)
- 両者の違い: 第2種は硫化水素の追加リスク管理が含まれる(それだけ要件が高い)
放射線作業主任者:
- 作業主任者の中で唯一「免許試験合格」が要件(他の多くは技能講習修了で足りる)
- 国家試験(放射線作業主任者試験)合格→都道府県労働局長への申請→免許交付
- 職務: 放射線業務従事者の被ばく管理・放射線測定・線源の管理等
【試験での位置づけ】
作業主任者の選任義務問題の最頻出は「特定化学物質第3類=不要(第1・第2類は必要)」「有機溶剤第1・2種屋内業務=必要(第3種は条件次第で不要)」「酸欠第1種・第2種=それぞれ必要(資格が異なる)」「電離放射線=放射線作業主任者(免許が必要=技能講習では不可)」の4点です。イのような「第3類のみの業務で不要」という正しい知識の選択肢は、「特定化学物質だから全部作業主任者が必要」という誤解を問う典型的な問題パターンです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 印刷業での有機溶剤(トルエン・MEK・n-ヘキサン等含有シンナー)は職業性中毒の原因として重要です。印刷工場での有機溶剤作業主任者の職務として「呼吸用保護具の着用確認」「局所排気装置の点検(印刷機付属の局所排気)」「換気の確保」等が求められます。
- ウ: ずい道等の掘削作業は「ずい道等の掘削等作業主任者」(安衛令第6条第10号の2・技能講習修了者)の選任が必要です。あわせて粉じん則の対象作業として「粉じん濃度の測定・防じんマスクの使用管理・除じん装置等の措置」等の義務がありますが、これらは作業主任者制度とは別系統の規制です(粉じん則には作業主任者の規定がない)。トンネル工事は複数の危険有害要因(粉じん・騒音・振動・有毒ガス・酸欠)が重複する複合的な有害作業環境です。
- エ: 地下ピット内での清掃作業は第1種酸素欠乏危険作業(有機物の分解による酸素消費が主原因)の典型例です。作業前の酸素濃度測定・強制換気・作業主任者の選任・連絡体制の確保・給気式保護具の準備等が義務付けられます。
- オ: クロム酸(六価クロム)は特化則第2類物質の中でも特に発がん性(肺がん・鼻中隔穿孔)が問題となる代表的な物質です。クロムめっき工場・クロム酸製造工場では特定化学物質作業主任者が常に必要であり、特殊健康診断(6か月ごと)・作業環境測定(6か月ごと)・局所排気装置等の設備が義務付けられます。
【根拠】労働安全衛生法第14条・安衛令第6条(作業主任者を選任すべき作業の列挙)。第3類特定化学物質のみの業務では作業主任者選任不要(安衛令第6条第18号の対象外)。有機溶剤作業主任者(安衛令第6条第22号)・酸欠危険作業主任者(安衛令第6条第21号)の選任義務。
【補足】イ(正答=選任不要): 特定化学物質第3類物質のみ→作業主任者不要(第1・第2類は必要)。ア(必要): 第2種有機溶剤屋内業務=有機溶剤作業主任者。ウ(必要): ずい道掘削=ずい道等の掘削等作業主任者(安衛令第6条第10号の2・「粉じん作業主任者」は存在しない)。エ(必要): 第1種酸欠=酸素欠乏危険作業主任者。オ(必要): 第2類クロム酸=特定化学物質作業主任者。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 安衛法第14条・安衛令第6条。特定化学物質作業主任者の選任は第1類・第2類物質が対象であり、第3類物質のみを取り扱う業務では選任義務がない。有機溶剤(第1・第2種)、粉じん作業(ずい道等)、酸欠危険作業(第1・第2種)はいずれも作業主任者選任義務あり。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。