労働衛生(有害業務)51第一種職業性疾病

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問51:職業性疾病

職業性皮膚疾患に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 一次刺激性接触性皮膚炎は、アレルギー反応を介さない皮膚への直接的な化学的・物理的刺激によって生じる皮膚炎であり、初回曝露でも生じることがあり、感作(アレルギー化)は必要としない。正答
  • アレルギー性接触性皮膚炎(感作性接触性皮膚炎)は、初回の接触直後から強い皮膚症状が現れ、その後の接触でも初回と同様の強さの反応が持続する特徴がある。
  • ニッケル・クロム・コバルト等の金属化合物による接触性皮膚炎は、すべて一次刺激性であり、アレルギー性の機序はないとされている。
  • 職業性ざ瘡(クロルアクネ)は、クロロベンゼン・ポリ塩化ビフェニル(PCB)・塩素化ナフタレン等の塩素化芳香族化合物への曝露によって生じる難治性のざ瘡(にきび)様皮膚疾患であり、消退後に再発することは稀である。
  • コールタール・ピッチ等の多環芳香族炭化水素(PAH)への曝露は皮膚がんの原因となるが、これらは光に対して全く不活性であり紫外線(太陽光)との相互作用はないため、屋外作業でも屋内作業でも発がんリスクは同一であるとされている。
正答:一次刺激性接触性皮膚炎は、アレルギー反応を介さない皮膚への直接的な化学的・物理的刺激によって生じる皮膚炎であり、初回曝露でも生じることがあり、感作(アレルギー化)は必要としない。

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正しいのはアです。一次刺激性接触性皮膚炎はアレルギー反応を介さない皮膚への直接的な刺激(酸・アルカリ・洗浄剤・有機溶剤等の化学的刺激、摩擦・圧力等の物理的刺激)によって生じる皮膚炎です。アレルギー性接触性皮膚炎と異なり、感作(アレルギー化)が必要なく、初回接触から症状が出現しうる点が重要な特徴です。

各誤りの要点:イ→アレルギー性は初回接触では感作期間が必要(反応なし)→再曝露で増強する特徴。ウ→ニッケル・クロム・コバルトによる接触性皮膚炎はアレルギー性が主要な機序(一次刺激性ではない)。エ→クロルアクネは難治性で再発・悪化が問題(「再発が稀」は誤り)。オ→コールタール・ピッチ等のPAHは光毒性(光感作性)を持ち、紫外線(太陽光)との複合作用で皮膚炎・光発がんが促進される(「光に全く不活性・屋内外でリスク同一」は誤り)。屋外でのコールタール製品取扱い時は日焼け止め・防護衣が重要。

標準試験対策の基準レベル

職業性接触性皮膚炎の2類型の比較:

| 特性 | 一次刺激性接触性皮膚炎 | アレルギー性接触性皮膚炎 |

|---|---|---|

| 機序 | 直接的な皮膚障害(非免疫学的) | 遅延型IV型アレルギー反応(免疫学的) |

| 感作の要否 | 不要 | 必要(初回接触で感作→再接触で発症) |

| 初回接触時の反応 | あり(初回から症状) | ほぼなし(感作のみが成立) |

| 再曝露時の反応 | 濃度・時間に依存した反応 | 増強(感作完了後は少量の抗原で強い反応) |

| 代表的な原因物質 | 酸・アルカリ・洗浄剤・有機溶剤 | ニッケル・クロム・コバルト・ゴム促進剤・エポキシ樹脂 |

| 境界の明確さ | 接触部位に比較的限局(明確な境界) | 接触部位を超えた広がりがある場合も |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 一次刺激性は非免疫学的機序→感作不要→初回曝露でも高濃度・長時間の接触で発症。職業性皮膚炎の約80%が一次刺激性とされており、清掃業・看護師・食品業等での洗剤・アルコールへの反復接触が代表例。
  • イ(誤): アレルギー性接触性皮膚炎では「感作期間(初回接触から1〜4週間)」が必要であり、この期間に免疫系がアレルゲンを認識(感作)します。感作後の再接触では少量のアレルゲンでも皮膚炎が生じ、しばしば初回より強い反応が出ます。
  • ウ(誤): ニッケル・クロム(六価)・コバルト等の金属イオンはアレルギー性接触性皮膚炎の最も重要な原因物質の一つです。ニッケルアレルギー(アクセサリー・作業工具等からの曝露)は一般人口でも有病率が高く、クロム(六価)はセメント・クロムめっき等での職業アレルギーとして重要です。
  • エ(誤): クロルアクネは非常に難治性で、原因物質の曝露中止後も多くの場合症状が長期間(数年〜数十年)持続し、再燃・悪化が起こりやすいことが特徴です。「消退後に再発は稀」は誤りです。
  • オ(誤): コールタール・ピッチ等のPAHsは光毒性(光感作性)物質であり、皮膚に付着した後に太陽光紫外線(UVB)との複合作用で日光皮膚炎・色素沈着・光発がんが促進されることが知られています。「光に全く不活性で紫外線との相互作用がなく、屋内外でリスクが同一」という記述は誤りです。ガス製造・コークス製造・道路舗装・屋根工事等の屋外作業ではコールタール製品取扱い時の日焼け止め・防護衣による遮光が重要です(なおPAHはIARCで皮膚がん・肺がん・膀胱がんの原因として確立しており、紫外線非存在下でも発がん性を持つが、紫外線は皮膚での発がんを増強する)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

職業性皮膚疾患は職業性疾患全体の約25〜30%を占め(国によって異なるが)、職場における重要な健康障害の一つです。「皮膚は最大の感覚・防護器官であると同時に最大の化学物質曝露面」という事実から、作業場での有害物質取扱い時の皮膚保護は呼吸器保護と同様に重要な課題です。接触性皮膚炎は「治療→曝露→再発→治療」という悪循環に入りやすく、適切な原因の同定と排除が根本的な治療と予防に不可欠です。

アレルギー性接触性皮膚炎の免疫学的機序(詳細):

1. 感作期(初回接触〜1〜4週間):

- 皮膚に浸透したハプテン(低分子アレルゲン)が皮膚タンパクと結合して完全抗原を形成

- ランゲルハンス細胞(皮膚の抗原提示細胞)がハプテン-タンパク複合体を貪食・処理

- リンパ節でT細胞(CD4+ helper T細胞・CD8+ cytotoxic T細胞)が感作される

- 抗原特異的メモリーT細胞が形成される

2. 誘発期(感作後の再曝露):

- 再曝露されたハプテン-タンパク複合体をメモリーT細胞が認識

- サイトカイン放出(IL-2・IFN-γ・TNF-α等)→炎症反応・皮膚炎発症

- 感作後は微量のアレルゲンでも反応→汎化(全身性アレルギーへの移行)が起こる場合も

クロルアクネの特殊性(確立した職業皮膚科学の知識):

クロルアクネは「皮膚の毛嚢皮脂腺が塩素化芳香族化合物によって選択的に傷害される病態」で、通常の思春期にきびとは全く異なる機序・予後を持ちます:

  • 原因物質:TCDD(2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン)・PCB・クロロナフタレン・ポリ塩化ジベンゾフラン等のハロゲン化芳香族化合物
  • 病態:毒性物質(主にDioxin様化合物)が毛嚢・皮脂腺の細胞(AHリセプター活性化)を傷害→角質貯留→粉刺・嚢腫・瘢痕
  • 難治性:原因物質曝露中止後も症状が持続・悪化することがある(毒性物質の脂肪組織への蓄積と徐放)
  • 全身毒性との関連:TCDD等の高毒性ダイオキシン類は皮膚症状だけでなく肝毒性・免疫毒性・発がん性・生殖毒性も持つ

【実務・条文構造】

職業性皮膚疾患の予防管理(実務的アプローチ):

皮膚危険性物質の特定(SDS確認):

SDSシートのセクション8(ばく露防止及び保護措置)に「皮膚の保護に関する情報」、セクション11(有害性情報)に「皮膚刺激性・感作性」の情報が記載されています。

皮膚保護の3段階(工業衛生の階層に対応):

1. 代替・密閉化(工学的対策):刺激性・感作性物質の代替物質への変更・密閉工程への切り替え

2. 保護手袋・保護衣の着用(保護具):素材の適切な選択(化学物質の種類に応じたニトリル・ネオプレン・ブチルゴム等)

3. 皮膚保護クリーム・洗浄(補助的措置):作業前のバリア保護クリーム・作業後の適切な洗浄(アルコール等の強溶剤での洗浄は皮膚を傷める)

アレルギー性接触性皮膚炎の診断と職場対応:

  • 貼付試験(パッチテスト):疑われる物質を皮膚に貼付→48・72・96時間後の反応を評価→アレルゲンの特定
  • 特定されたアレルゲンからの完全除去:感作成立後は微量曝露でも反応するため、完全除去が唯一の根本的対策
  • 配置転換の検討:アレルゲンからの完全除去が職場で困難な場合は配置転換を検討

【試験での位置づけ】

職業性皮膚疾患問題の最頻出は「一次刺激性(感作不要・初回から発症)vs アレルギー性(感作必要・再曝露で増強)」「ニッケル・クロム・コバルト=アレルギー性接触性皮膚炎の代表的原因物質」「クロルアクネの原因(ダイオキシン類・PCB等の塩素化芳香族化合物)と難治性(再発・長期持続)」の3点です。イのような「アレルギー性皮膚炎が初回から強い症状」という誤りは感作と誘発の時系列を混同した典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 一次刺激性接触性皮膚炎の職業的原因として最も重要なのは「湿潤作業(water-damaged skin)」です。水(特に洗浄剤添加水)への長時間・反復接触は皮膚のバリア機能(角質層の脂質二重膜)を破壊し、その後の化学物質への感受性を高めます。看護師・食品加工業・美容師・清掃業での「ウェットワーク(1日4時間以上の水接触または手袋着用)」が代表的なリスク環境です。
  • ウ: ニッケルアレルギーは日本を含む先進国では最も一般的な接触アレルギーの一つです(有病率10〜15%程度)。ニッケル含有のアクセサリー(ピアス・ネックレス等)からの経皮感作が社会的問題となり、EU規制(ニッケル指令)では消費財へのニッケル溶出量の制限が設けられています。職業的にはニッケルめっき・金属加工・コイン取扱いでの曝露が問題です。
  • エ: 塩素痤瘡(クロルアクネ)は歴史的にも重要な職業病です。1937年の米国での塩素化ナフタレン製造工場での集団発症(Yusho型)が初期の報告例です。1968年の「カネミ油症事件」ではPCB・PCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)汚染の食用油摂取により多数の患者に皮膚症状(クロルアクネ様)が発生しました。これは職業性ではなく食品汚染による中毒ですが、原因物質は同系統の塩素化芳香族化合物です。

【根拠】医学的事実(確立した職業皮膚科学・免疫学)。一次刺激性(感作不要・直接障害)vs アレルギー性(感作後増強)の区分・ニッケル・クロムのアレルギー性機序・クロルアクネの原因と難治性は確立した職業皮膚科学の知識。

【補足】ア(正): 一次刺激性接触性皮膚炎=感作不要・初回から発症可能(非免疫学的)。イ(誤): アレルギー性は初回で感作(症状なし)→再曝露で増強。ウ(誤): ニッケル・クロム・コバルト=アレルギー性機序が主。エ(誤): クロルアクネは難治性・再発しやすい(「再発稀」は誤り)。オ(誤): コールタール・ピッチ等のPAHは光毒性(光感作性)を持ち紫外線との複合作用で皮膚炎・光発がんが促進される(「光に不活性・屋内外でリスク同一」は誤り)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した職業皮膚科学・免疫学)。一次刺激性接触性皮膚炎は感作(アレルギー化)を必要とせず初回曝露でも生じる点が確立した知識。アレルギー性接触性皮膚炎は初回接触では感作期間が必要、再曝露で増強という特徴。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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