衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問52:作業環境測定と評価
作業環境測定の実施頻度に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア有機溶剤業務に係る屋内作業場の作業環境測定(有機則第28条)は、6か月以内ごとに1回の頻度で実施が義務付けられている。
- イ特定化学物質(第1類・第2類)業務に係る屋内作業場の作業環境測定(特化則第36条)は、6か月以内ごとに1回の頻度で実施が義務付けられている。
- ウ電離放射線業務に係る放射線業務に用いる機器(エックス線装置等)を使用する場所の作業環境測定(電離則第53条)は、1か月以内ごとに1回の頻度で実施が義務付けられている。
- エ坑内の粉じん作業場(炭坑等)の作業環境測定(粉じん則第25条)は、3か月以内ごとに1回の頻度で実施が義務付けられており、屋内の一般粉じん作業場(6か月ごと)より頻繁な測定が義務付けられている。正答
- オ騒音作業に係る屋内作業場の作業環境測定は、6か月以内ごとに1回の実施が定められており、騒音計による等価騒音レベルの測定が基本となる。
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誤りはエです。「坑内の粉じん作業場の作業環境測定が3か月ごと」という記述が誤りです。粉じん則に基づく粉じん作業の作業環境測定の頻度は、坑内・屋内を問わず6か月以内ごとに1回が原則です。「坑内だから3か月以内ごと」という特別な規定は粉じん則にはありません。
ア(有機溶剤=6か月ごと)・イ(特化則第1・2類=6か月ごと)・ウ(電離放射線=1か月以内ごとに1回)・オ(騒音=6か月ごと)はすべて正しい内容です。作業環境測定の頻度は「電離放射線=最も頻繁(1か月ごと)」「その他の多くは6か月ごと」という大きな区分を押さえることが重要です。
主要な作業環境測定の頻度一覧:
| 対象業務(指定作業場) | 根拠法規則 | 測定頻度 |
|---|---|---|
| 有機溶剤業務(屋内) | 有機則第28条 | 6か月以内ごとに1回 |
| 特化則第1類・第2類物質 | 特化則第36条 | 6か月以内ごとに1回 |
| 粉じん業務(屋内・坑内含む) | 粉じん則第25条 | 6か月以内ごとに1回 |
| 鉛業務(屋内) | 鉛則第52条 | 6か月以内ごとに1回 |
| 電離放射線業務(エックス線・電子線使用場所) | 電離則第53条 | 1か月以内ごとに1回 |
| 騒音業務(85dB以上の場所) | 安衛則第590条等 | 6か月以内ごとに1回 |
| 暑熱・寒冷・多湿の屋内作業場 | 安衛則第607条 | 半月以内ごとに1回 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 有機則第28条の6か月以内ごとに1回は確立した知識。正確な頻度(「3か月ごと」は誤り・「1年ごと」も誤り)を覚えることが試験対策の基本。
- イ(正): 特化則の第1類・第2類物質も6か月ごと。発がん性物質(ベンゼン・クロム酸等)も6か月ごとの頻度は変わらないが、測定記録の保存期間がより長い(30年)点が異なります。
- ウ(正): 電離放射線業務での測定頻度は1か月以内ごとに1回と最も短いサイクル。これは放射線の健康影響の深刻さ・線量限度管理の厳密さを反映した設定。放射線測定器(電離箱・GM計数管等)による定期的な測定が必要。
- エ(誤): 粉じん則第25条の測定頻度は坑内外を問わず6か月ごと(「坑内は3か月」という特別規定はない)。「坑内の方がリスクが高いから頻繁」という直感的な誤解に基づく引っかけ。
- オ(正): 騒音作業(等価騒音レベルが85dB以上の場所)の作業環境測定も6か月ごとに1回。騒音計(積分型騒音計等)による等価騒音レベルの測定が基本となります。
【理論的背景】
作業環境測定の頻度は「有害物質・有害因子の種類と蓄積性・健康影響の速度・曝露変動の大きさ」を考慮して設定されています。ほとんどの有害化学物質(有機溶剤・特化物・粉じん・鉛等)では「6か月に1回」が標準的な頻度として設定されており、これは「年2回の測定で作業環境の代表的な状態を把握できる」という実用的な判断と「測定コストとのバランス」から決定されています。
電離放射線が1か月に1回という最短頻度である理由:
1. 健康影響の即時性・累積性:高線量被ばくは短期間(数週間〜数か月)でも確定的影響(骨髄抑制・白内障等)を引き起こしうる。6か月ごとの測定では問題発見が遅すぎる
2. 線量限度管理の精密性:実効線量限度(5年100mSv・1年50mSv)を確実に守るためには、月次での線量モニタリングが必要
3. 個人被ばく線量と作業場測定の連動:個人線量計(ガラスバッジ・OSL線量計等)の交換サイクルが1か月単位であることとの整合性
暑熱・寒冷・多湿の半月以内ごとに1回という特殊な頻度:
温熱環境(WBGT等)は季節変動・日変動が大きく、6か月ごとでは夏季・冬季の過酷な時期を適切に代表できない可能性があります。特に夏季の屋内高温作業場(製鉄所・ガラス工場・厨房等)では2週間に1回程度の頻繁な測定が熱中症リスク管理に不可欠です。
【実務・条文構造】
作業環境測定記録の保存期間(測定頻度との組み合わせ):
| 業務種別 | 測定頻度 | 記録保存期間 | 保存の総期間コスト |
|---|---|---|---|
| 電離放射線 | 1か月ごと | 5年間 | 1年12回×5年=60回分 |
| 有機溶剤 | 6か月ごと | 3年間 | 1年2回×3年=6回分 |
| 特化則一般 | 6か月ごと | 3年間 | 6回分 |
| 特化則がん原性 | 6か月ごと | 30年間 | 1年2回×30年=60回分 |
| 粉じん | 6か月ごと | 7年間 | 1年2回×7年=14回分 |
| 石綿 | 6か月ごと | 40年間(廃業まで) | 1年2回×40年=80回分 |
電離放射線の1か月ごとの測定頻度は、5年保存と組み合わせると60回分の記録(有機溶剤の10倍)の管理が必要となります。これは実務上かなり大きな管理コストとなり、電離放射線使用事業場での適切な記録管理体制の整備が重要です。
測定頻度と管理区分の関係:
第3管理区分(作業環境が悪い・即時改善が必要)と判定された場合、通常の測定頻度(6か月ごと)に加えて、改善措置実施後の確認測定が義務付けられます。また改善が進まない場合は頻度を高めることが推奨されます。「改善後の確認測定(特定の業務の場合)」は通常の定期測定とは別に実施するものです。
【試験での位置づけ】
作業環境測定頻度問題の最頻出は「ほとんどの有害業務=6か月以内ごとに1回(電離放射線=1か月ごとが例外)」「暑熱・多湿=半月以内ごと(最短サイクルの一つ)」「坑内粉じんも6か月ごと(特別規定なし)」の3点です。エのような「坑内は3か月ごと」という誤りは「危険度が高そう→頻度が高い」という直感的な誤解を利用した典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 有機溶剤の6か月ごとという頻度は、1年の間に夏季(高温・蒸気圧上昇・蒸発量増加)と冬季(換気低下・滞留リスク)の両方をカバーするための設定として合理的です。夏季に集中的に測定を実施して「最悪のシナリオ」を把握する実務的なアプローチが推奨されます。
- ウ: 電離放射線の測定に使用する線量計の種類:①フィルムバッジ(古典的・月交換)②OSL線量計(最近普及・精度高い・月交換が多い)③TLD(熱蛍光線量計)④ポケット線量計(即時読み取り・日常管理用)。1か月ごとの頻度はこれらの線量計の交換・読み取りサイクルと連動しています。
- オ: 騒音の等価騒音レベル(LAeq)は「作業中の騒音の時間平均」であり、間欠的な騒音や変動する騒音を適切に評価するために積分型騒音計が使用されます。単純な最大騒音レベル(Lmax)だけでは長期的な聴力障害リスクを正確に評価できないため、LAeqが作業環境評価の主要指標となっています。
【根拠】有機則第28条・特化則第36条・電離則第53条・粉じん則第25条・安衛則第590条等(各特殊規則の作業環境測定頻度規定)。坑内外を問わず粉じん作業は6か月以内ごとに1回(「坑内は3か月」の特別規定なし)・電離放射線は1か月以内ごとに1回(最短頻度)は各規則の規定。
【補足】エ(誤): 坑内の粉じん作業場も6か月以内ごとに1回(「3か月以内ごと」は誤り)。電離放射線=1か月以内ごと(最も頻繁・例外的)。その他の多くの有害業務=6か月以内ごとに1回が標準。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 粉じん障害防止規則(粉じん則)第25条。坑内外を問わず屋内の粉じん作業場の作業環境測定は6か月以内ごとに1回(坑内だからといって3か月以内という特別な頻度規定はない)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。