労働衛生(有害業務)53第一種有害化学物質の分類と性状

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問53:有害化学物質の分類と性状

有機溶剤中毒予防規則(有機則)のタンク等の内部における有機溶剤業務に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • タンク等の内部での有機溶剤業務については、有機溶剤の区分(第1種・第2種・第3種)に関係なく、すべての有機溶剤を対象に有機則が適用され、換気・送気マスクの着用等が義務付けられている。
  • タンク等の内部における有機溶剤業務では、全体換気装置(給排気型)を設置することで、局所排気装置や送気マスクの使用義務を免除することができる。
  • タンク等の内部(密閉空間)での有機溶剤業務においては、局所排気装置の設置が実務上困難な場合も多く、送気マスクまたは空気呼吸器を使用させることが義務付けられており、防毒マスクのみでは法令上の義務を満たせない場合がある。正答
  • タンク等の内部での有機溶剤業務に従事する労働者の退避にあたっては、当該タンクの入口から最短距離の場所に退避させ、さらに送気マスクを外して新鮮な空気を吸わせることがタンクの外での回復に有効とされている。
  • タンク等の内部での有機溶剤業務において、作業に使用した有機溶剤の容器は、作業終了後に直ちにタンク外に搬出する義務があり、容器をタンク内に残置することは有機則上明確に禁止されている。
正答:タンク等の内部(密閉空間)での有機溶剤業務においては、局所排気装置の設置が実務上困難な場合も多く、送気マスクまたは空気呼吸器を使用させることが義務付けられており、防毒マスクのみでは法令上の義務を満たせない場合がある。

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正しいのはウです。タンク等の密閉空間での有機溶剤業務では、局所排気装置の設置が困難な場合があり、有機則第26条等に基づき送気マスクまたは空気呼吸器の使用が義務付けられています。密閉空間では有機溶剤の蒸気が滞留して酸素欠乏状態になるリスクがあり、防毒マスクは酸素を補給できないため、酸欠が懸念される場合は防毒マスクだけでは不十分です。

ア→第3種有機溶剤には有機則の一部規定の適用除外あり(すべて適用ではない)。イ→タンク内部は全体換気だけでは不十分で送気マスク等が必要。エ→退避中に送気マスクを外すのは危険(酸欠空間から出るまで保護具を維持)。オ→「作業終了後直ちに搬出する義務があり、容器の残置を有機則上明確に禁止」という条文は有機則に存在せず、この断定は誤り。

標準試験対策の基準レベル

タンク等の内部での有機溶剤業務の特殊性:

| 通常の屋内作業場 | タンク等の内部 |

|---|---|

| 空気の流通があり酸欠リスクは低い | 密閉空間→有機溶剤の蒸気蓄積→酸欠のリスクがある |

| 局所排気装置を設置可能 | 局所排気装置の設置が困難(空間的制約) |

| 防毒マスクで対応可能(酸欠リスクなし) | 送気マスク・空気呼吸器が必要(防毒マスクのみでは酸欠に対応できない場合) |

| 作業者が常時作業場内にいる | 入口での人数確認・救助体制の確保が重要 |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 有機則の適用は第1種・第2種有機溶剤が主な対象。第3種有機溶剤の一定条件(屋外作業・消費量が少ない等)では適用除外がある場合があります。「すべての区分に関係なく適用」は過剰な一般化です。
  • イ(誤): タンク等の内部では全体換気装置のみでは十分な換気が困難であり(空間的制約・換気の偏り)、送気マスクまたは空気呼吸器が義務付けられています(有機則第26条)。全体換気で免除できるという記述は誤りです。
  • ウ(正): 有機則第26条(タンク等の内部における業務)では、送気マスクまたは空気呼吸器を使用させること等が規定されており、密閉空間での酸欠リスクを考慮した保護具の選択が義務付けられています。防毒マスクは酸素補給機能がないため、酸欠リスクがある場合は法令上不十分です。
  • エ(誤): 有機溶剤密閉空間から退避する際には、退避が完了し安全な場所(タンク外の換気が良い場所)に移動するまで保護具を着用し続けることが重要です。「退避中に保護具を外す」ことは危険です(タンク出口付近でも蒸気が滞留している可能性)。
  • オ(誤): 有機則には「タンク内で使用した有機溶剤の容器を作業終了後直ちにタンク外へ搬出する義務」「容器の残置を明確に禁止する」といった条文は存在しません。実務上は残置すべきでないものの、「有機則上明確に禁止されている」という断定は条文上の根拠を欠き誤りです。なお有機則第26条が義務付けるのは換気・送気マスク等の使用・監視人の配置等であり、容器の残置禁止規定ではありません。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

タンク・船倉・地下ピット等の密閉空間(confined space)での有機溶剤業務は、通常の屋内作業とは本質的に異なる複合的なリスクを持ちます。「有機溶剤蒸気の急速な蓄積(低沸点・高蒸気圧の溶剤では特に)」と「酸素消費・不活性ガス置換による酸欠リスク」が同時に存在するため、呼吸器保護の観点から防毒マスク(ろ過式)だけでは不十分であり、給気式保護具(送気マスク・空気呼吸器)が必要となります。

タンク内部での有機溶剤蒸気の挙動(物理化学的考察):

  • 密閉タンク内に残留した有機溶剤(清掃前のタンク等)は揮発して蒸気を発生
  • 蒸気密度(分子量/空気の分子量≈29)が空気より重い溶剤(トルエン≈92・キシレン≈106等)は低所に滞留
  • タンク底部・地下部分での高濃度蒸気の滞留→短時間曝露でも意識障害・心停止のリスク
  • 同時に有機溶剤が酸素を消費するわけではないが、高濃度の蒸気が酸素比率を低下させる可能性(特にLPG・天然ガスが残留するタンクでの酸欠)

送気マスクの適切な設定(タンク内作業用):

  • ホースマスク(電動送風機型):外部の清浄な空気を送風機でタンク内作業者の顔面に供給
  • ホースの長さ:最大40〜50m程度(それ以上では送気圧の低下リスク)
  • 送風機の設置位置:タンク外の清浄な空気が取り込まれる位置(排気口近辺・地下作業時は地上)
  • 作業者の入退場管理:タンク入口での入場者名簿・人数確認・退避時の確認が義務

【実務・条文構造】

有機則第26条(タンク等の内部における業務)の主な規定:

  • 事業者はタンク等の内部での有機溶剤業務について以下を義務付けられる:

1. 当該タンク等の内部の換気(清浄な空気によって1時間当たり当該タンク等の内容積の20倍以上の換気を行う)またはそれに相当する対応

2. 送気マスクまたは空気呼吸器の使用(換気が困難な場合または強制的な換気が不十分な場合)

3. タンク等の入り口に常時連絡の取れる監視人の配置(または自動警報装置の設置)

4. 酸素欠乏状態等の緊急時の救出に備えた体制の確保

有機則のタンク内業務と酸欠則との関係:

タンク等の内部作業では酸欠リスクも伴う場合があるため、有機則のタンク内規定に加えて酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)が同時に適用される場合があります(酸素濃度18%未満のおそれがある場所=酸欠危険場所の場合)。この場合は有機則の要件に加えて酸欠則の要件(酸素濃度測定・作業主任者・給気式保護具)も満たす必要があります。

【試験での位置づけ】

タンク内作業問題の最頻出は「密閉空間の有機溶剤業務には送気マスク・空気呼吸器が必要(防毒マスクのみでは不十分な場合)」「全体換気のみでは義務を満たせない(局所排気または給気式保護具が必要)」「監視人の配置または自動警報装置の義務」の3点です。ウのような「送気マスク・空気呼吸器の義務化(防毒マスクのみでは不十分)」は密閉空間作業での保護具選択の重要な知識です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 第3種有機溶剤(ガソリン・石油ベンジン等)は毒性が比較的弱いですが、密閉タンク内ではその適用除外が限定的になります。「タンク内での第3種溶剤業務」は有機則の適用除外の対象外となる場合があり、実務上はタンク内作業全般に有機則の規定が適用されると理解することが安全です。
  • エ: 密閉空間から退避する際の正しい手順:①異常を感じたら(めまい・頭痛・息苦しさ等)→②保護具を着用したまま速やかにタンク外へ移動→③タンク外の安全な場所に到達後に保護具を外して新鮮な空気を吸う→④症状が改善しない場合は医療機関へ搬送。「タンク内で保護具を外す」「退避途中で保護具を外す」は非常に危険です。
  • オ: タンク内作業での有機溶剤の管理として重要なのは「作業終了時の残留溶剤の把握と適切な処理」です。有機溶剤を入れたままタンクを密閉すると内部の蒸気濃度が上昇し続けるため、次の作業者の入槽時に高濃度曝露のリスクが高まります。定期的な清掃・換気確認が予防の基本です。

【根拠】有機溶剤中毒予防規則(有機則)第26条(タンク等の内部における業務の規定)。タンク内有機溶剤業務での送気マスク・空気呼吸器の使用義務(防毒マスクのみでは酸欠リスクに対応不可な場合)は有機則の確立した規定。

【補足】ウ(正): タンク内部での有機溶剤業務には送気マスク・空気呼吸器が義務(防毒マスクのみでは酸欠リスクに対応できない場合あり)。イ(誤): 全体換気のみでは義務を満たせない。エ(誤): 退避途中で保護具を外すのは危険(安全な場所に出るまで保護具を維持)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 有機溶剤中毒予防規則(有機則)第26条等(タンク等の内部での規定)。密閉空間での有機溶剤業務では局所排気装置の代わりとして送気マスク・空気呼吸器の使用が必要であり、防毒マスク「のみ」では不十分な場合がある(酸欠リスクがある場合)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

関連論点

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