労働衛生(有害業務)55第一種職業性疾病

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問55:職業性疾病

石綿障害予防規則(石綿則)に基づく石綿関連業務の管理に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 石綿含有建材等の解体・改修工事において、石綿を含む仕上げ材(吹付け石綿・石綿含有断熱材等)の除去作業に従事する労働者には、石綿作業主任者の選任に加えて、当該業務に就く前に石綿に関する特別教育(安衛法第59条に基づく)を受けさせることが義務付けられている。
  • 石綿則では、吹付け石綿(フリアブルアスベスト:ブロークンアスベスト)の除去作業において、作業場所をシートや養生材で隔離して負圧環境を作り出す「負圧隔離工法」が義務付けられている(一定の規模・石綿濃度以上の場合)。
  • 石綿業務に従事した労働者が離職した場合、一定の要件(石綿等の製造・使用等業務への一定期間以上の従事)を満たす元労働者に対して、「健康管理手帳」が交付される制度があり、手帳を持つ者は無料で定期健康診断を受けることができる。
  • 石綿則では、石綿等の使用・取扱いを行う事業者に対して、石綿等を使用した設備・機械等の点検・整備作業(石綿含有ガスケット・断熱材の交換等)についても、石綿の飛散防止措置・保護具の使用が義務付けられている。
  • 石綿則に基づく石綿業務の特殊健康診断の測定記録の保存期間は、悪性中皮腫の潜伏期(30〜50年)を考慮して特別に設定されており、記録は3年間の保存で十分とされている。正答
正答:石綿則に基づく石綿業務の特殊健康診断の測定記録の保存期間は、悪性中皮腫の潜伏期(30〜50年)を考慮して特別に設定されており、記録は3年間の保存で十分とされている。

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誤りはオです。石綿則に基づく石綿業務の特殊健康診断の記録保存期間は3年間ではなく、40年間(または事業廃止まで)です。これは悪性中皮腫の潜伏期が30〜50年以上に及ぶことを考慮した特別の設定であり、他の有害業務の記録保存期間(有機溶剤3年・特化則一般3年・電離放射線30年等)の中でも最長クラスです。「3年間の保存で十分」という記述が完全に誤りです。

ア(石綿除去作業での特別教育・作業主任者の義務)・イ(負圧隔離工法の義務)・ウ(健康管理手帳)・エ(石綿含有設備の点検・整備での義務)はすべて正しい内容です。

標準試験対策の基準レベル

石綿関連法令の主要な管理義務:

| 義務の種類 | 根拠条文 | 主な内容 |

|---|---|---|

| 作業主任者の選任 | 安衛令第6条・石綿則第19条 | 石綿作業主任者技能講習修了者 |

| 特別教育 | 安衛法第59条・石綿則第27条 | 石綿除去作業等に就く前の教育 |

| 特殊健康診断 | 石綿則第40条 | 6か月以内ごとに1回 |

| 健診記録の保存 | 石綿則第43条 | 40年間(事業廃止まで) |

| 作業場の養生・負圧化 | 石綿則第6条等 | 吹付け石綿等の除去では隔離・負圧が義務 |

| 保護具の使用 | 石綿則第14条 | RS3(99.9%以上)または PAPR |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 石綿除去作業への従事前の特別教育(安衛法第59条・石綿則第27条)と石綿作業主任者の選任(安衛令第6条)の両方が義務付けられています。特別教育は「石綿の毒性・保護具の正しい着用・除去作業の手順」等の内容を含みます。
  • イ(正): 吹付け石綿(ブロークン・フリアブルアスベスト)は繊維が飛散しやすく最も危険な形態であり、除去作業では「隔離・負圧環境の形成(隔離シートで作業区画を密閉し排気装置で外部より低圧にする)」が石綿則第6条で義務付けられています(規模・石綿含有濃度の要件を満たす場合)。
  • ウ(正): 健康管理手帳制度(安衛法第67条)は石綿等の取扱い業務に係る一定の要件を満たす者が都道府県労働局長に申請すると手帳が交付され、無料での定期健康診断が受けられる離職後の継続的な健康管理制度です。石綿の交付要件は「①両肺野に石綿による不整形陰影又は石綿による胸膜肥厚があること」または「②石綿等の製造・取扱い業務に1年以上従事し、かつ初めて石綿粉じんにばく露した日から10年以上経過していること」です(「従事期間が10年以上」ではなく「1年以上従事+初回ばく露から10年経過」である点に注意)。
  • エ(正): 石綿含有設備(配管断熱材・ガスケット等)の点検・整備でも石綿繊維が飛散する可能性があり、石綿則の規定(飛散防止・保護具着用)が適用されます。「解体・改修工事だけが対象」ではなく、石綿を扱う可能性のある維持管理業務全般が対象となります。
  • オ(誤): 石綿則第43条による記録保存期間は40年間(または廃業まで)。「3年間で十分」は完全な誤りです。これは悪性中皮腫の潜伏期(30〜50年)を考慮した特別設定で、他の特殊健診記録(有機溶剤3年・特化則一般3年・電離放射線30年)の中でも最長水準。
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【理論的背景】

石綿(アスベスト)関連疾患の最大の特徴は「超長い潜伏期」です。初回の石綿曝露から悪性中皮腫の発症まで30〜50年、場合によってはそれ以上の期間を要することが確認されています。これは「1960〜1980年代に石綿を大量に扱った作業者が、2000年代以降(現在)になってようやく中皮腫を発症するケースが続いている」という現実につながっています。40年間という健診記録保存期間は、このような「数十年後の因果関係証明」を可能にするための最低限の保存期間として設定されています。

石綿則の成立背景(日本の石綿禍の歴史):

石綿は耐熱性・絶縁性・絶音性・耐薬品性に優れた繊維であり、建設材料(吹付け石綿・セメント製品)・造船(断熱材・シール材)・電力・化学工業(ガスケット・パッキン)・自動車(ブレーキライニング)等に大量使用されました。日本では1970年代をピークに年間350,000トン以上の石綿を輸入・使用していました。使用規制は1970年代から段階的に強化され、2006年に原則全面禁止となりましたが、既設建築物や機械設備には大量の石綿が残存しており、現在進行中の解体・改修工事での曝露が問題となっています。

現在の石綿被害の規模(2025年頃まで増加傾向):

  • 悪性中皮腫による年間死亡者:日本では1,500〜1,800人(増加傾向)
  • 石綿肺・石綿肺合併肺がんの患者:継続的な発生
  • 解体工事業者の新規曝露:既存石綿含有建材の解体(建物の寿命到来時期と重なる)

40年保存の実務的困難性と制度的対応:

40年という長期保存は、企業の合併・解散・廃業等の事業の継続性に関わる問題を引き起こします:

  • 廃業時:都道府県労働局長への記録の引き渡し・保存義務
  • 電子記録:紙媒体から電子データへの移行の可能性(改ざん防止要件の整備)
  • 個人情報保護:40年保存される健診記録は機微な個人情報(要配慮個人情報)であり、適切な管理が求められる

【実務・条文構造】

石綿則の解体工事規制の概要(近年の強化措置):

2020年以降の大気汚染防止法改正での規制強化:

  • すべての石綿含有建材(レベル1〜3)が規制対象(従来はレベル1・一部のレベル2のみ)
  • 事前調査の義務化:解体・改修工事前の石綿含有建材の調査が義務(有資格者による)
  • 調査結果の行政への届出義務:一定規模以上の工事では都道府県等への届出が必要
  • 工事完了後の結果報告義務

石綿含有建材の3レベル分類:

  • レベル1(最も危険):吹付け石綿・石綿含有断熱材(フリアブル=繊維が飛散しやすい)
  • レベル2:石綿含有の保温材・耐火被覆材(中程度の飛散性)
  • レベル3:石綿含有スレート・石綿含有成形板等(ノンフリアブル=適切な解体でも飛散リスク)

石綿除去作業での保護具(石綿則第14条):

  • レベル1の除去作業:RS3(99.9%以上の防じんマスク)または電動ファン付き保護具(PAPR・RS3相当以上)が義務

【試験での位置づけ】

石綿則問題の最頻出は「健診記録の保存期間が40年(3年・5年・30年は誤り)」「悪性中皮腫の潜伏期(30〜50年・長い)」「健康管理手帳制度(離職後の継続的健診)」「吹付け石綿除去時の負圧隔離工法」「保護具はRS3(99.9%以上)が義務」の5点です。オのような「3年間で十分」という誤りは、有機溶剤健診(3年)の記録保存期間と混同した典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 石綿に関する特別教育(石綿則第27条)の内容:①石綿の有害性②石綿の使用・発散の防止③石綿作業を行う場合に使用する局所排気装置の稼働要領④石綿等の取扱いの方法⑤石綿等の暴露防止のため行うべき措置等。就業前の実施が義務であり、実施後には教育記録の保存も必要です。
  • イ: 負圧隔離工法では「作業区画をプラスチックシートで密閉」→「集じん・排気装置でシート内を外部より低圧(陰圧)に維持」→「石綿繊維が作業区画外に漏れ出るのを防ぐ」という原理です。出入り口には「エアシャワー(粒子を吹き飛ばす装置)」と「更衣・洗浄の手順」が設けられ、作業者・資機材の汚染管理が徹底されます。
  • ウ: 健康管理手帳の対象業種(石綿関連):石綿等の製造・取扱い業務(石綿紡績・石綿製品製造・石綿吹付け作業等)。交付要件は「両肺野に石綿による不整形陰影又は胸膜肥厚がある」か、または「当該業務に1年以上従事し、かつ初めて石綿粉じんにばく露した日から10年以上を経過している」ことです(従事期間そのものは1年以上で足り、10年以上の従事は不要)。手帳交付後は年2回の健診が無料で受けられます。悪性中皮腫・石綿肺・石綿による肺がん等の早期発見が目的です。
  • エ: 石綿含有ガスケット(配管フランジ部のシール材)・石綿含有ブレーキライニングの交換作業等では、適切な養生・保護具(RS3以上の防じんマスク)の使用が必要です。「古い設備の維持管理作業でも石綿が出てくることがある」という認識が現場での事故防止に重要です。

【根拠】石綿障害予防規則(石綿則)第6条(吹付け石綿等の除去の隔離義務)・第14条(保護具のRS3以上)・第27条(特別教育)・第40条(特殊健診6か月ごと)・第43条(記録保存40年間)・安衛法第67条(健康管理手帳)・安衛令第6条(石綿作業主任者の選任義務)。

【補足】オ(誤): 石綿業務の健診記録保存=40年間(「3年間」は完全に誤り)。悪性中皮腫の潜伏期(30〜50年超)を考慮した最長級の保存期間。ア(正): 石綿除去作業=特別教育+作業主任者の両方が義務。イ(正): 吹付け石綿除去=負圧隔離工法が義務(一定条件下)。ウ(正): 健康管理手帳=離職後も無料健診。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 石綿障害予防規則(石綿則)第43条。石綿業務に係る特殊健康診断の記録保存期間は40年間(または廃業まで)であり、3年間では全く不十分。悪性中皮腫の潜伏期(最長50年以上)を考慮した設定。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

関連論点

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科目別に解いて、衛生管理者に合格

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