労働衛生(有害業務)60第一種職業性疾病

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問60:職業性疾病

酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)における酸素欠乏危険場所の区分(第1種・第2種)および具体的な危険場所に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 第1種酸素欠乏危険作業は酸素欠乏のリスクのみを管理するものであり、第2種は酸素欠乏に加えて硫化水素(H₂S)のリスクも管理する。地下に埋設されている電話回線・電力ケーブルを収容したマンホール内での作業は、腐敗有機物による硫化水素発生リスクがあるため第2種危険作業に分類される。正答
  • 溶接・溶断等のガス消費作業が行われているビルの地下室は、消費されたガスによる酸素消費が著しいため第1種酸素欠乏危険作業の代表的な場所である。
  • 鋼製タンク(塗装が施されていない、または不活性ガス置換が行われていない)の内部での作業は、鋼の酸化(腐食)による酸素消費が起こる可能性があるが、この酸素消費速度は非常に遅いため酸欠危険場所には分類されない。
  • 冷凍機(アンモニア冷媒使用)の冷媒が漏えいした室内での点検作業は、アンモニアの毒性による中毒リスクがあるが、アンモニアは酸素を消費しないため「酸素欠乏危険作業」ではなく「特定化学物質(特化則第3類)業務」として管理される。
  • 下水道・汚水槽・浄化槽等の内部での作業は、有機物の嫌気性分解によって硫化水素が発生するため第2種危険作業に分類されるが、酸素欠乏のリスクはなく、硫化水素中毒のみに注意すればよい。
正答:第1種酸素欠乏危険作業は酸素欠乏のリスクのみを管理するものであり、第2種は酸素欠乏に加えて硫化水素(H₂S)のリスクも管理する。地下に埋設されている電話回線・電力ケーブルを収容したマンホール内での作業は、腐敗有機物による硫化水素発生リスクがあるため第2種危険作業に分類される。

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正しいのはアです。第1種酸素欠乏危険作業は酸素欠乏のリスクのみを対象とし、第2種は酸素欠乏に加えて硫化水素(H₂S)中毒のリスクも管理する区分です。地下のマンホール等(ケーブル収容)は腐敗有機物が堆積している場合、硫化水素の発生リスクがあり第2種危険作業に分類されます。

各誤りの要点:ウ→鋼製タンクの内部での鋼の酸化(腐食)による酸素消費は実際に酸欠危険場所として認識されており、「酸欠危険場所に分類されない」は誤り。エ→アンモニア冷媒漏えいの場合、アンモニアが酸素を排除することで酸欠になる可能性があり、酸欠則と特化則の両方が適用される場合がある(「酸欠危険作業ではない」は誤り)。オ→下水道・汚水槽での作業は酸欠(有機物分解による酸素消費)と硫化水素中毒の両方のリスクがある(「酸欠リスクなし」は誤り)。

標準試験対策の基準レベル

第1種・第2種酸素欠乏危険作業の比較:

| 区分 | 管理するリスク | 作業主任者の資格 | 測定対象 |

|---|---|---|---|

| 第1種危険作業 | 酸素欠乏のみ(O₂<18%) | 酸素欠乏危険作業主任者 | 酸素濃度(18%以上を確認) |

| 第2種危険作業 | 酸素欠乏+硫化水素(H₂S>10ppm) | 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者 | 酸素濃度+硫化水素濃度 |

酸欠危険場所の分類(酸欠則別表第6・代表例):

| 第1種(酸欠のみ)の主な例 | 第2種(酸欠+硫化水素)の主な例 |

|---|---|

| タンク・ボイラー内部 | 下水道・汚水槽・浄化槽 |

| 地下ピット・貯蔵庫 | 腐敗した有機物が堆積した坑内・マンホール |

| 閉鎖空間での不活性ガス充填後 | 醤油・酒類の醸造施設内 |

| 鋼製タンク(酸化腐食による酸素消費) | ヘドロを含む海水等が滞留するピット |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 第1種・第2種の区分の説明が正確。ケーブル収容マンホールが腐敗有機物(土壌中の有機物等)による硫化水素発生リスクがある場合に第2種に分類されることも正確。
  • イ(誤): ガス消費(溶接等)による酸素消費の場所は実際に酸欠危険場所になりうるが、「代表的な第1種危険作業の場所」として酸欠則別表第6に明示的にリストされているかどうか確認が必要。一般に「溶接作業による酸素消費」よりも「鋼の酸化・発酵・有機物分解」が主要な酸欠原因として挙げられます。
  • ウ(誤): 鋼製タンクの内部は酸化腐食(Fe + O₂ → Fe₂O₃等)により酸素が消費され酸欠が生じることが知られており、酸欠危険場所として酸欠則別表第6に列挙されています。「酸欠危険場所に分類されない」は誤りです。
  • エ(誤): アンモニアを冷媒とする冷凍設備が設置されている室内での作業は、アンモニアが大量に漏えいした場合、アンモニアガスが室内の酸素を排除して酸欠状態になる可能性があります。酸欠則別表第6には「アンモニア冷媒を使用する冷凍機の周辺等」が酸欠危険場所として含まれる場合があります。したがって酸欠危険作業に当たる可能性があります。
  • オ(誤): 下水道・汚水槽・浄化槽は第2種危険作業に分類されますが、これは「酸欠+硫化水素中毒の両方」のリスクがある場所です。「酸欠リスクなし・硫化水素のみ」という記述が誤りで、有機物の嫌気性分解では酸素が消費される(酸素欠乏)と同時に硫化水素が発生します。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

酸素欠乏は「密閉・半密閉空間で酸素が消費されて空気中の酸素濃度が低下する」という単純な物理化学的現象ですが、その発生原因は多様です。「鉄の酸化(腐食)」「有機物の微生物による分解(好気的・嫌気的)」「不活性ガスの充填・漏えい」「特定の化学反応による酸素消費」等が主要原因です。第2種危険作業が設けられた理由は「硫化水素中毒が酸欠症と同じような密閉空間で発生し、かつ両方が同時に起こることが多い」という実態を反映しています。

硫化水素が発生する具体的な機序:

嫌気性条件下(酸素が少ない環境)での硫酸還元細菌(Desulfovibrio等)による反応:

  • SO₄²⁻(硫酸塩)+ 有機物 → H₂S + CO₂ + H₂O

下水道・汚水槽・浄化槽では、汚水中の含硫有機物(アミノ酸・タンパク質等)が嫌気分解されて硫化水素が発生します。また同時に有機物の分解により酸素が消費されるため、「酸欠+硫化水素」の複合的な危険が生じます。

酸欠と硫化水素中毒の症状の類似性(現場での混同リスク):

| 症状 | 酸素欠乏症 | 硫化水素中毒 |

|---|---|---|

| 初期 | 頭痛・倦怠感・息苦しさ | 目・鼻・気道の刺激・悪臭 |

| 中等度 | 判断力低下・ふらつき・失神 | 頭痛・めまい・嘔吐 |

| 重症 | 意識消失・呼吸停止 | 意識消失(Lightning knock-down)・呼吸停止 |

両者の症状が重複するため、現場では「酸欠なのか硫化水素中毒なのか」を区別することが困難な場合があります。第2種危険作業ではガス検知器で両方を測定することが義務付けられている理由がここにあります。

【実務・条文構造】

酸欠則別表第6の主な危険場所(概略):

第1種危険作業に対応する場所(例):

1. タンク・ボイラー・圧力容器の内部(密閉で酸素消費あり)

2. 地下室・地下ピット・暗きょ・マンホール等(土壌呼吸による酸素消費)

3. 鋼製タンクの内部(Fe酸化腐食による酸素消費)

4. 木材・穀物・果実等の腐敗・発酵する有機物を多量に貯蔵している倉庫・冷蔵庫の内部

5. ドライアイス(固体CO₂)を使用した冷蔵室・冷凍室の内部

第2種危険作業に対応する場所(例):

1. 下水道・汚水槽・浄化槽・腐泥槽等の内部

2. 腐泥を含む場所(海底・湖底・池・沼等のヘドロが堆積している場所)

3. 醤油・酒・みりん・酢等の醸造施設(発酵による硫化水素発生)

4. 腐敗した有機物が堆積しているマンホール・くみ取り槽等

測定義務(酸欠則第3条):

  • 作業前の酸素濃度測定(第1種・第2種共通)
  • 第2種作業では硫化水素濃度測定も義務
  • 測定記録の保存(3年間)

【試験での位置づけ】

酸欠危険場所分類問題の最頻出は「第1種(酸欠のみ)vs第2種(酸欠+硫化水素)の区分」「下水道・汚水槽は第2種(酸欠+硫化水素の両方)」「鋼製タンク内部は酸欠危険場所(鉄の酸化腐食による酸素消費)」「第2種では酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者(第1種の酸素欠乏危険作業主任者とは別の資格)」の4点です。オのような「下水道・汚水槽には酸欠リスクなし(硫化水素のみ)」という誤りは第2種の定義(酸欠+硫化水素の両方)を誤解した典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: ケーブル収容のマンホールが第2種危険作業となる具体的なシナリオ:地下のケーブルマンホール内に長年の間に土砂・有機物が堆積→嫌気的条件で腐敗→硫化水素が発生という状況です。清潔に管理されたマンホールでは第1種で足りる場合もありますが、状況によって第2種の可能性もあるため、作業前の測定(酸素+硫化水素)と適切な保護具の使用が安全管理の基本です。
  • ウ: 鋼製タンクの酸欠は実際に多くの事故で記録されています。塗装前の新しい鋼製タンクや錆の発生した古いタンクの内部作業では、タンクの鋼が空気中の酸素と反応して酸素が消費されます。特に「換気不足」+「水分(高湿度)による腐食促進」という条件下では酸欠が急速に進行する場合があります。
  • エ: アンモニア冷凍設備での酸欠リスクは「アンモニアが大量に漏えいすると酸素を置換・希釈する」という機序です。アンモニアは酸素より軽い(分子量17)ため、高所に蓄積します(これは酸素より重い硫化水素が低所に溜まるのと逆の挙動)。アンモニア漏えい時には毒性中毒+酸欠の両方のリスクがあるため、給気式保護具(防毒マスクのアンモニア用吸収缶だけでは酸欠に対応できない)が必要です。

【根拠】酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)第2条(定義)・別表第6(酸欠危険場所の列挙)。第1種(酸欠のみ)・第2種(酸欠+硫化水素)の区分・主要危険場所の分類は酸欠則に規定。下水道・汚水槽は第2種(酸欠+硫化水素の両方がリスク)・鋼製タンク内部は第1種(酸化腐食による酸欠)は確立した知識。

【補足】ア(正): 第1種=酸欠のみ・第2種=酸欠+硫化水素。ケーブルマンホールも腐敗有機物による硫化水素リスクがある場合は第2種。オ(誤): 下水道・汚水槽は第2種=酸欠+硫化水素の両方のリスク(「酸欠リスクなし」は誤り)。ウ(誤): 鋼製タンク内部は酸欠危険場所(鉄の酸化腐食で酸素消費)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)第2条・別表第6。第1種(酸欠のみ)vs第2種(酸欠+硫化水素)の区分と代表的な危険場所の分類は酸欠則に規定。ケーブル収容マンホールは腐敗有機物含有の場合に第2種に分類される場合がある。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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