衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問61:局所排気装置・保護具
局所排気装置のフードの型式と制御風速に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア有機溶剤中毒予防規則(有機則)の別表に規定された局所排気装置の制御風速は、フードの型式(囲い式・外付け式・外付け式上方吸引型)によって異なり、外付け式上方吸引型が最も高い制御風速(1.0m/s)を必要とする。
- イ局所排気装置の制御風速とは、フードの開口面または発生源となる位置において有害物質の飛散を防止するために必要とされる最低限の吸引風速であり、この値を下回る場合は局所排気装置が有効に機能していないと判断される。
- ウ囲い式フードの制御風速が外付け式フードより低く設定されているのは、囲い式が発生源を囲むことで外乱気流の影響を受けにくく、比較的少ない風量でも有害物質を捕捉できるためである。
- エ特定化学物質障害予防規則(特化則)に規定された局所排気装置の制御風速は、有機則より常に高い値が設定されており、有機則の制御風速で特化則の物質を管理することは法令上認められない。正答
- オ有機則別表第1に定める局所排気装置の制御風速は、囲い式フードの場合0.4m/s、外付け式フード(側方・下方吸引型)の場合0.5m/s、外付け式フード(上方吸引型)の場合1.0m/sである。
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誤りはエです。「特化則の制御風速が有機則より常に高い」という記述が誤りです。特化則の制御風速は物質ごとに規定されており、有機則より高い場合もありますが、物質によっては有機則と同等または同様の数値が設定されている場合もあります。「常に高い」という一律的な断定は正確ではありません。
ア(外付け式上方吸引型が最も高い1.0m/s)・イ(制御風速の定義)・ウ(囲い式が低い理由)・オ(有機則別表第1の具体的な数値)はすべて正しい内容です。
有機則別表第1の制御風速(フード型式別):
| フードの型式 | 有機則の制御風速(m/s) |
|---|---|
| 囲い式フード | 0.4m/s |
| 外付け式フード(側方・下方吸引型) | 0.5m/s |
| 外付け式フード(上方吸引型) | 1.0m/s |
(外付け式上方吸引型が最も高い制御風速を要求される)
制御風速の比較原則:
- 外付け式フードほど高い制御風速が必要(発生源からの距離が離れるほど吸引速度が低下するため)
- 特に上方吸引型は「重力に逆らって上から有害物質を引き上げる必要がある→最高の制御風速」
- 囲い式フードは発生源を囲む→外乱気流の影響が少ない→最低の制御風速で足りる
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 有機則別表第1の規定通りで正確。
- イ(正): 制御風速の定義として正確。フード開口面での測定値が制御風速の基準値以上を維持することが局所排気装置の性能維持の要件です。
- ウ(正): 囲い式が制御風速が低くて済む物理的・工学的理由として正確。外乱気流(横風・人の動き等)の影響を最小化できる点が囲い式フードの優位点です。
- エ(誤): 特化則の制御風速は「物質によって有機則と同等または異なる」ものであり、「常に有機則より高い」とは言えません。また特化則で管理される物質で有機則と同等の制御風速が設定されている場合、有機則の数値が適用できるかどうかは具体的な規則の確認が必要です。「常に高い」という断定が誤りの核心。
- オ(正): 有機則別表第1の数値として正確。0.4m/s(囲い式)・0.5m/s(外付け側方・下方)・1.0m/s(外付け上方)という具体的な数値は試験頻出。
【理論的背景】
局所排気装置の制御風速は「フードの開口面に十分な吸引力があることで、発生源から放散した有害物質を確実にフードに吸い込み、作業者の呼吸域に到達させないための最低限の風速」です。フードの型式ごとに制御風速が異なる理由は、「有害物質とフードの幾何学的関係」と「外乱気流への抵抗力」が型式によって大きく異なるためです。
外付け式フード(上方吸引型)の制御風速が最も高い理由:
1. 重力に逆らう吸引:上方吸引型は発生源の真上に設置されてヒューム・蒸気を引き上げる設計。しかし有害物質の多くは空気より重く(密度が高い)、重力方向(下方向)に落下しようとするため、これを上方向に引き込むには高い吸引速度が必要。
2. 外乱気流の影響:上方吸引型は作業者が発生源とフードの間に位置することになるため、作業者の動きや室内気流が有害物質の流れを乱しやすい(作業者が「壁」となってフードとの間で乱流が生じる)。この外乱に打ち勝つために高い制御風速が要求される。
3. 適切な用途:上方吸引型は熱上昇気流がある場合(鋳造・溶解作業等)に効果的で、熱気流に乗った有害物質を受け取るキャノピー型として使用される。熱気流がない場合は非推奨。
特化則と有機則の制御風速の関係(詳細):
特化則の制御風速規定は有機則とは別に、特定化学物質(第1類・第2類物質)ごとに設定されています。物質によっては:
- 有機則と同等の制御風速(例:トリクロロエチレンは有機則第2種有機溶剤でもあり特化則第2類でもある)
- 有機則より高い制御風速(毒性が高い・健康影響が重大な物質)
- 有機則より低い制御風速(特殊な作業形態に対応した規定)
「常に高い」という断定は事実に反する場合があります。
【実務・条文構造】
制御風速の測定(局所排気装置の定期自主検査の一部):
制御風速の測定方法:
- 熱線式風速計(熱線アネモメーター):低風速(0.05〜5m/s程度)に適した精密な風速計
- 翼車式風速計(ベーン式):中〜高風速向き
- 測定位置:フード開口面の代表的な点(通常は中心部・複数点の平均)
- 測定タイミング:装置が定常稼働状態(排風機・電動機が定常運転中)
測定結果の評価:
- 測定値 ≥ 規定制御風速:適正(局所排気装置が有効に機能している)
- 測定値 < 規定制御風速:不適正(ダクト漏れ・排風機性能低下・フィルター目詰まり等の可能性→修理・点検が必要)
一般的な制御風速の低下原因:
1. ダクトの腐食・穿孔による漏れ(圧力損失増大)
2. 排風機の羽根の磨耗・汚損・ベルト緩み→回転数低下→排風量低下
3. 空気清浄装置の目詰まり(フィルター・吸着材の交換時期超過)→圧力損失増大→排風量低下
4. フードの変形・損傷→吸引方向の乱れ→捕捉効率低下
5. 吸気口(メークアップエア供給口)の閉塞→排風量低下
【試験での位置づけ】
制御風速問題の最頻出は「囲い式0.4m/s・外付け側方0.5m/s・外付け上方1.0m/s(有機則)」「外付け上方吸引型が最も高い制御風速」「囲い式が最も低い(外乱気流の影響が少ない)」の3点です。エのような「特化則の制御風速は常に有機則より高い」という断定は「特化則=より厳しい」という一般的なイメージを利用した典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 外付け式上方吸引型(キャノピーフード)の適切な使用場面:①高温物体からの熱上昇気流(溶融金属・高温加工品等)②熱気流に乗った有害物質を上方のフードに導く用途。上方吸引型を熱上昇気流のない一般的な有機溶剤取扱い業務に使用すると、有機溶剤蒸気(空気より重い)が下方に溜まってフードに到達しにくく、作業者が発生源とフードの間に立つことになるため有害物質を吸入するリスクが高まります。
- ウ: 囲い式フードの最大の利点は「外乱気流への強靭性」です。製造現場では横風(搬送設備の風・エアコン等)が常に発生しますが、囲い式は発生源を物理的に囲んでいるため、外乱気流の影響を受けにくく少ない排風量で高い捕捉効率が得られます。スプレーブース(自動車塗装等)・グローブボックス(高毒性物質)が囲い式フードの代表例です。
- エ: 特化則の制御風速の具体例:クロム酸・重クロム酸(特化則第2類)の取扱い作業での局所排気装置に対しては、有機則の囲い式0.4m/sと同様の規定の場合もあり、「すべての特化則物質で有機則より高い」とは言えません。実際の業務では使用する物質の特化則・有機則の双方の規定を確認することが重要です。
【根拠】有機溶剤中毒予防規則(有機則)別表第1(制御風速の規定:囲い式0.4m/s・外付け側方0.5m/s・外付け上方1.0m/s)・特定化学物質障害予防規則(特化則)の制御風速規定。工業衛生工学(制御風速の物理的根拠)。
【補足】エ(誤): 特化則の制御風速が有機則より「常に高い」は誤り(物質によって同等または異なる場合がある)。オ(正): 有機則の制御風速=囲い式0.4m/s・外付け側方0.5m/s・外付け上方1.0m/s。外付け上方吸引型が最も高い制御風速(1.0m/s)を要求。囲い式は最低(0.4m/s)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 有機溶剤中毒予防規則(有機則)別表第1・特定化学物質障害予防規則(特化則)の制御風速規定。特化則の制御風速が有機則より「常に高い」という記述は過剰な一般化であり、物質によって有機則と同等の場合もある(特化則が「常に高い」は誤り)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。