基礎法学30国際私法・法の抵触

行政書士 基礎法学 問30:国際私法・法の抵触

国際私法(法の抵触・準拠法)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 国際私法とは、国家間の条約により世界的に統一された単一の実体法典であり、いずれの国の裁判所においても渉外的な法律関係に対して同一の内容のルールが直接適用される、各国国内法に優先する超国家的な法である。
  • 法の適用に関する通則法は、日本の国際私法のすべてを規律する法典であり、民事・商事・家族・相続のすべての国際的私法関係の準拠法決定規則を完全に網羅している。
  • 法の適用に関する通則法によれば、法律行為の方式(契約の形式要件)は常にその法律行為の成立の準拠法(当事者が選択した法)によってのみ決定される。
  • 準拠法として外国法が指定された場合、日本の裁判所はその外国法を適用する義務を負わず、外国法の内容が日本の公序良俗に反する場合に限らず常に日本法を代替的に適用することができる。
  • 法の適用に関する通則法7条は、法律行為の成立および効力の準拠法について、当事者が選択した地の法によると定めており、当事者自治の原則を採用している。正答
正答:法の適用に関する通則法7条は、法律行為の成立および効力の準拠法について、当事者が選択した地の法によると定めており、当事者自治の原則を採用している。

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正答はオです。法の適用に関する通則法7条は「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による」と定め、当事者が準拠法を選択できる当事者自治の原則を採用しています。ア(誤):国際私法は、渉外的私法関係においてどの国の法(準拠法)を適用するかを決定する抵触規則(各国の国内法)であり、それ自体が法律関係を直接規律する実体法ではありません。また世界的に統一された単一の法典でもなく、各国がそれぞれ自国の国際私法(日本では「法の適用に関する通則法」)を持ちます。アは国際私法を「条約により世界統一された単一の実体法典」「超国家的な法」とする点で誤りです。イ(誤):法の適用に関する通則法は国際私法の主要規定を定めていますが、「すべてを網羅」するものではなく、他の法律(人事訴訟法・民事訴訟法等)の規定と組み合わせて機能します。ウ(誤):法の適用に関する通則法10条は法律行為の方式(形式要件)について「成立の準拠法」または「行為地法」のいずれによっても方式を具備できる(択一的連結)と定めており、「成立の準拠法のみによって決定される」とするウは誤りです。エ(誤):準拠法として外国法が指定された場合、日本の裁判所はその外国法を適用する義務を負います。外国法の内容が「日本の公序良俗に著しく反する場合」(法の適用に関する通則法42条の公序条項)に限り、その外国法の適用を排除して日本法を適用することができます。「外国法を適用する義務を負わない」とするエは誤りです。

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オが正答です。法の適用に関する通則法7条は「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による」と規定し、渉外的な法律行為において当事者が準拠法を選択できる「当事者自治の原則」を採用しています。これにより、たとえば日本企業と外国企業が締結する国際売買契約において、当事者が合意すれば英国法・アメリカ合衆国法等を準拠法として選択することができます。オはこの内容を正確に述べており正答です。アは誤りです。国際私法は、どの国の法を準拠法として適用するかを定める抵触法(各国の国内法)であり、法律関係を直接規律する実体法ではありません。また各国がそれぞれ独自の国際私法を持つのであって、「条約により世界統一された単一の実体法典」「各国国内法に優先する超国家的な法」ではありません(日本の国際私法の中心は国内法である「法の適用に関する通則法」です)。アは国際私法の性質を根本的に誤って述べています。イは誤りです。法の適用に関する通則法(旧「法例」を全面改正した2006年施行の法律)は国際私法の主要規定を定めていますが、すべての国際的私法関係を網羅するものではありません。海商・航空・知的財産等の特殊分野には別途の国際条約・特別法が適用される場合があります。ウは誤りです。法の適用に関する通則法10条1項は「法律行為の方式は、当該法律行為の成立について適用すべき法(本問では成立の準拠法)による」と定めつつ、10条2項で「前項の規定にかかわらず、行為地法に適合する方式は、有効とする」と定めており、成立の準拠法または行為地法のいずれかによっても方式を具備できます(択一的連結)。「成立の準拠法のみ」とするウは誤りです。エは誤りです。外国法が準拠法として指定された場合、日本の裁判所は原則としてその外国法を適用する義務を負います。例外として法の適用に関する通則法42条の「公序条項」により「外国法の規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反する場合」にのみ、その規定の適用を排除できます(公序違反の場合は日本法の関連規定を適用)。「常に日本法を適用できる」とするエは誤りです。正答はオのみです。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【国際私法の構造:準拠法決定の意義】

国際私法(private international law・国際私法)は、渉外的私法関係(外国的要素を含む私法上の法律関係)において「どの国の法律(準拠法)を適用すべきか」を定めるメタ規則(法の抵触規則)の体系です。準拠法の決定は①連結点(country with the closest connection・最も密接な関連)の特定、②当事者自治の原則(party autonomy)の許容範囲、③公序条項による例外という三段階の判断から成ります。日本の国際私法は法の適用に関する通則法(2007年施行)を基本法典とし、当事者自治・本国法主義・行為地法主義・目的論的接近などの連結原則を採用しています。

【当事者自治の原則の内容と限界】

法の適用に関する通則法7条が採用する当事者自治の原則(party autonomy)は、渉外的法律行為(国際契約等)において当事者が合意によって準拠法を選択できるという原則です。この原則の実践的意義は、国際取引における法的安定性・予測可能性の確保にあります。企業間の国際売買・ライセンス契約では通常、「本契約はニューヨーク州法を準拠法とする」「本契約に基づく紛争はICCルールによる国際仲裁に付する」等の条項が置かれます。当事者自治の限界として、①消費者保護(法の適用に関する通則法11条)・労働契約(同12条)については弱者保護の観点から当事者自治が制限されます。②準拠法として選択した外国法が日本の公序(42条)に著しく反する場合はその外国法の適用が排除されます。③当事者が準拠法を選択しなかった場合は「行為地法」「最密接関係地法」等の客観的連結原則により準拠法が決定されます(法通則法8条)。

【公序条項(法通則法42条)の機能:エの誤りの精緻な根拠】

外国法の適用に関して公序条項(public policy exception / ordre public)は重要な機能を果たします。法の適用に関する通則法42条は「外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない」と定めます。公序条項の適用は例外的であり、単に日本法と異なる結果をもたらすだけでは公序違反にはなりません。外国法の適用結果が日本の法秩序の根本的価値(基本的人権・公正・正義)に著しく反する場合に限って適用されます(厳格解釈)。重要判例として、最判平成9年2月25日(国際養子縁組と公序)等があります。「常に日本法を適用できる」(エ)ではなく、「公序に著しく反する場合に限り外国法の適用を排除できる」という例外的・限定的な制度です。

【国際私法と行政書士実務:実践的接続】

行政書士は国際業務(外国人の在留資格申請・帰化申請・国際結婚・国際相続等)において国際私法の知識を活用します。とくに外国人の相続においては、相続の準拠法(法通則法36条:被相続人の本国法)の特定と適用、日本法と本国法の抵触処理が実務上重要です。また国際婚姻・国際離婚においては、婚姻の成立(同24条)・効力(同25条)・離婚(同27条)の準拠法がそれぞれ定められており、当事者の国籍・住所・婚姻地によって準拠法が異なります。国際私法の基礎知識は行政書士国際業務の必須基盤です。

【根拠条文】

法の適用に関する通則法 第7条(法律行為の成立・効力:当事者自治)

法の適用に関する通則法 第10条(法律行為の方式:択一的連結)

法の適用に関する通則法 第42条(公序条項)

【補足】

当事者自治の原則(法通則7条)=当事者が準拠法を選択できる(オ正答)。方式は成立の準拠法または行為地法のいずれかで足りる択一的連結(ウ誤り)。公序条項は例外的適用(エ誤り:常に日本法を適用できるわけでない)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 法の適用に関する通則法第7条(法律行為の成立及び効力)・第10条(法律行為の方式)・第42条(公序)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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