衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問10:有害化学物質の分類と性状
有機溶剤中毒予防規則(有機則)における有機溶剤の区分と管理に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア有機溶剤は有機則により第1種・第2種・第3種に区分されており、毒性の強さは第3種が最も高く、第1種が最も低い。このため第3種溶剤を取り扱う作業には最も厳しい規制が適用される。
- イ有機則では、有機溶剤等の区分を容器に色で表示することが定められており、第1種有機溶剤等は赤色、第2種有機溶剤等は黄色、第3種有機溶剤等は青色で表示する。
- ウ有機溶剤作業主任者の選任が義務付けられているのは、第1種または第2種有機溶剤を屋内作業場等で取り扱う業務であり、第3種有機溶剤を取り扱う業務では原則として作業主任者の選任は不要である。正答
- エ屋内作業場における有機溶剤業務の作業環境測定は、有機則により3か月以内ごとに1回実施することが義務付けられており、測定結果は特定化学物質の記録と同様に10年間保存する必要がある。
- オ第2種有機溶剤であるトルエンやキシレンは、主として肝臓に対する障害(肝毒性)が主な健康影響であり、中枢神経系に対する影響は軽微である。
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正しいのはウです。有機溶剤作業主任者の選任義務は第1種または第2種有機溶剤を屋内作業場等で取り扱う業務に課されており、第3種有機溶剤のみを取り扱う業務では原則として選任は不要です。
各誤りの要点: ア→毒性の強さは第1種が最も強く・第3種が最も弱い(番号が小さいほど厳しい規制)。イ→色の対応は第1種=黄色・第2種=赤色・第3種=青色(アとイの色が入れ替わっており誤り)。エ→作業環境測定の頻度は6か月以内ごとに1回(3か月は誤り)、記録保存期間は3年間(10年は誤り)。オ→トルエン・キシレンは有機溶剤共通の中枢神経抑制作用が主な健康影響(肝毒性が主ではない)。
有機溶剤の3区分の比較:
| 区分 | 毒性 | 色別表示 | 代表物質 | 作業主任者 |
|---|---|---|---|---|
| 第1種 | 最も強い | 黄色 | 二硫化炭素・クロロホルム | 必要(屋内作業) |
| 第2種 | 中間 | 赤色 | トルエン・キシレン・酢酸エチル・アセトン | 必要(屋内作業) |
| 第3種 | 比較的弱い | 青色 | ガソリン・石油エーテル・石油ベンジン | 原則不要 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 毒性の強さは第1種>第2種>第3種(数字が小さいほど毒性が強く規制が厳しい)。「第3種が最も毒性が高い」は逆の誤りです。
- イ(誤): 色別表示の正しい対応は「第1種=黄色・第2種=赤色・第3種=青色」(有機則第25条)。選択肢の「第1種=赤・第2種=黄」は入れ替わっており誤りです。
- ウ(正): 有機溶剤作業主任者の選任義務(安衛法第14条・安衛令第6条)は第1種・第2種有機溶剤を屋内作業場等で取り扱う業務に限定。第3種のみの業務は不要。
- エ(誤): 屋内作業場の有機溶剤業務の作業環境測定は「6か月以内ごとに1回」(有機則第28条)。3か月は誤りです。測定記録の保存期間は3年間(10年は特定化学物質の一部物質の保存期間)。
- オ(誤): トルエン・キシレン等の有機溶剤は中枢神経抑制作用(頭痛・めまい・意識障害)が主な健康影響です。「肝毒性が主で中枢神経系は軽微」は誤りで、肝毒性が特に強い有機溶剤はクロロホルム・四塩化炭素等です。
【理論的背景】
有機溶剤中毒予防規則(有機則)は、有機溶剤の毒性・蒸気圧・使用状況等を踏まえ、労働者の健康保護のために詳細な技術基準・管理措置を定めた規則です。有機溶剤は沸点が低く揮発しやすい(蒸気圧が高い)物質が多く、屋内作業場での使用では蒸気が滞留して急性・慢性の中枢神経障害・肝臓障害等の原因となります。
区分の設計原則:
- 第1種(二硫化炭素・四塩化炭素・クロロホルム等): 毒性が強く、神経毒性・肝毒性・腎毒性等の多臓器毒性または中毒の重篤性が高い物質。
- 第2種(最も多くの有機溶剤を含む・トルエン・酢酸エチル・アセトン・メタノール等): 毒性は中程度。中枢神経抑制が主な健康影響。使用量が多く産業上の重要度が高い。
- 第3種(ガソリン・石油エーテル等の混合物が多い): 毒性は比較的弱く(ただし引火性があるなど物理的危険性はある)。
色別表示の記憶法(試験に必出):
「1種(第一種)は黄色(一番危ない・警戒色に見える黄色)」と覚えると、「2種は赤(次に危ない)・3種は青(比較的安全)」という順序が定着します。ただし実際の警戒色の感覚とは逆になる部分があるため、正確な暗記が必要です。
【実務・条文構造】
有機則の主要義務(屋内作業場での有機溶剤業務):
1. 局所排気装置等の設置義務:
- 第1種・第2種有機溶剤業務: 局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置のいずれかが必要(物質・作業形態により選択可能)
- 第3種: 全体換気装置で足りる場合が多い
2. 作業環境測定(有機則第28条):
- 頻度: 6か月以内ごとに1回(「3か月」は誤りの典型。有害業務全般で6か月が多い)
- 対象: 屋内作業場
- 記録保存: 3年間(特化則の一部発がん物質は30年保存のものもあるが有機則は3年)
3. 特殊健康診断(有機則第29条):
- 頻度: 6か月以内ごとに1回
- 実施機関: 産業医等
- 記録保存: 5年間
4. 作業主任者(有機溶剤作業主任者):
- 選任が必要: 第1種・第2種有機溶剤を屋内作業場で製造・取り扱う業務(一定規模以上)
- 資格: 有機溶剤作業主任者技能講習の修了者
- 職務: 作業の指揮・局所排気装置等の点検・保護具着用の確認
有機溶剤の主な毒性と臓器障害(物質別):
| 物質 | 主な毒性 |
|---|---|
| トルエン・キシレン・スチレン | 中枢神経抑制(全有機溶剤共通の作用) |
| 四塩化炭素・クロロホルム | 中枢神経抑制+強い肝毒性・腎毒性 |
| 二硫化炭素(CS₂) | 中枢神経・末梢神経・血管障害(多臓器) |
| n-ヘキサン | 末梢神経障害(代謝産物2,5-ヘキサンジオン) |
| メタノール | 代謝産物(ホルムアルデヒド→ギ酸)による視神経障害・失明 |
| ベンゼン | 骨髄毒性→白血病(発がん性)。有機則ではなく特化則が適用 |
【試験での位置づけ】
有機則の区分・色別問題の最頻出は「区分の毒性順(第1種が最も強い)」「色別表示の正確な対応(第1種=黄・第2種=赤・第3種=青)」「作業主任者の選任義務(第1種・第2種のみ・第3種は不要)」「作業環境測定の頻度(6か月ごと・3か月は誤り)」の4点です。イのような色の入れ替えとアのような毒性順の逆転は定番の引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 有機則の区分番号と規制の強さが「数字が小さい=毒性が強い・規制が厳しい」という点は特定化学物質の場合(第1類が最も厳しい)と同じパターンです。どちらも「1が最も危ない」と統一して覚えられます。
- イ: 色別表示(黄色・赤色・青色)の実際の意義は、物質の区分が一目でわかるようにして、作業現場での取り扱い注意の周知を図ることにあります。表示は容器・配管等に行われ、保護具の選択や局所排気装置の必要性の判断に活用されます。
- ウ: 第3種有機溶剤が「作業主任者不要」という点は試験で重要な確認ポイントです。ただし第3種でも安全管理の義務(危険有害物の表示・SDS交付・換気等)は別途課されており、無管理でよいわけではありません。
- エ: 有機則の作業環境測定(6か月ごと)と特化則の一部物質(同じく6か月ごと)は頻度が同じです。これが「3か月ごと」という誤りとの混同を生む場合があります。保存期間は有機則3年・特化則3年(ただし一部の発がん性物質は30年保存)という差があり、この差も問われます。
- オ: メタノールは有機溶剤の中で特異的な毒性を持ちます。体内でホルムアルデヒド→ギ酸に代謝され、ギ酸が視神経を障害して失明につながることがあります。エタノール(飲酒用アルコール)と混同させる引っかけが出題される場合もあります。
【根拠】有機溶剤中毒予防規則(有機則)第1条(区分の定義)・第25条(色別表示)・第28条(作業環境測定・6か月ごと)。安衛法第14条・安衛令第6条(作業主任者)。
【補足】第1種=黄色・第2種=赤色・第3種=青色(イは入れ替え誤り)。作業主任者は第1種・第2種のみ(第3種は不要)。作業環境測定は6か月ごと(3か月は誤り)・記録保存3年。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 有機溶剤中毒予防規則(有機則)第1条・第25条・第28条・安衛法第14条・安衛令第6条。有機溶剤の区分・色別表示・作業主任者の選任義務は有機則に準拠。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。