衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問24:局所排気装置・保護具
局所排気装置の各構成要素とその機能に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アフードとは、有害物質の発生源の近くに設置し、発生した有害物質を含む空気を吸い込む部分であり、フードの形状・大きさ・設置位置が装置全体の捕捉効率に大きく影響する。
- イダクトとは、フードから吸い込んだ有害物質を含む空気を空気清浄装置まで搬送するための管路であり、断面形状は円形と矩形があり、搬送効率を高めるためにできる限り長く複雑な経路を取ることが推奨される。正答
- ウ空気清浄装置とは、有害物質を含む空気から粒子・ガス・蒸気を除去(捕集・吸収・燃焼等)するための装置であり、排風機よりも上流(フード側)に設置されるのが原則である。
- エ排風機(ファン)は、装置全体の空気流動を生み出す動力源であり、電動モーターにより駆動される。排風機は空気清浄装置の下流(浄化後の空気側)に配置されるのが原則的な設計である。
- オ排気口とは、空気清浄装置で浄化した後の空気を屋外に排出する部分であり、排出した空気が再び作業場内に取り込まれないよう、適切な位置(屋外の高い位置・風向きの考慮等)に設置することが重要である。
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誤りはイです。ダクト設計の原則は「できる限り短く・曲がりが少なく・コーナーを緩やかに」です。「できる限り長く複雑な経路を取ることが推奨される」という記述は完全に逆の誤りです。ダクトが長いほど・曲がりが多いほど空気の流れの抵抗(圧力損失)が増大し、排風機の消費電力が増加・送風量が低下して装置の性能が落ちます。短く・シンプルな経路のダクト設計が基本原則です。
ア(フードの役割)・ウ(空気清浄装置の位置=上流)・エ(排風機の位置=下流)・オ(排気口の位置の重要性)はすべて正しい内容です。
局所排気装置の正しい構成順序と各要素の機能:
正しい配置順序: フード → ダクト → 空気清浄装置 → 排風機(ファン) → 排気口
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): フードは局所排気装置の「入口」として、有害物質を発生源から捕捉する最初の接点。フードの形状・大きさ・発生源との距離(特に外付け式フードで重要)・制御風速の設計が装置全体の有効性を決める重要な要素。
- イ(誤): 「長く複雑な経路が推奨される」は逆の誤り。ダクト設計の3原則は「短く・曲がりが少ない・コーナーが緩やか」です。各要素が圧力損失(搬送抵抗)に与える影響: 直管長さ(長いほど摩擦損失増大)・曲がり(エルボ)の数(多いほど局部損失増大)・コーナーの鋭さ(急角度ほど乱流・損失大)。
- ウ(正): 空気清浄装置はファンの上流(フード側)に設置することで、腐食性・爆発性・粒子状の有害物質がファン(電動機・羽根)に触れることを防ぎます。これはファンの保護と安全確保のための配置原則。
- エ(正): 排風機がダウンストリーム(下流)配置(空気清浄装置後)であることを正確に記述。浄化後の清浄な空気を排風機が送り出す設計。これにより排風機が有害物質に直接さらされるリスクが低減。
- オ(正): 排気口からの排気が再循環すると浄化した意味がなくなります。適切な排気位置(屋外・高所・風の方向考慮)の設計が全体的な清浄化効果に不可欠です。
ダクト設計の圧力損失の構成:
- 直管部摩擦損失: ダクト長さ×摩擦係数×動圧(長いほど損失大)
- 局部損失: 曲がり・分岐・拡大縮小・入口・出口等での損失(部品数が多いほど損失大)
- 総圧力損失 = 直管部損失 + 局部損失の合計
【理論的背景】
局所排気装置は「有害物質を発生源で捕捉し、作業者の呼吸域に到達する前に除去する」という一次予防の工学的対策として最も重要な設備です。装置の各要素(フード・ダクト・空気清浄装置・排風機・排気口)は相互に連関しており、一つの要素の設計不良が装置全体の性能を著しく低下させます。
ダクト設計における圧力損失の詳細:
摩擦損失(直管部):
- Darcy-Weisbach式: ΔP = f × (L/D) × (ρV²/2)
- f: 摩擦係数(管の粗さ・レイノルズ数による)
- L: ダクト長さ(長いほど損失が大きい)
- D: 管径
- ρ: 空気密度
- V: 流速
局部損失(曲がり・分岐等):
- ΔP = ξ × (ρV²/2)
- ξ: 局部損失係数(形状に依存)
- 90°エルボ: ξ≈1.0(急角度=損失大)
- 45°エルボ: ξ≈0.3(緩い曲がりで損失小)
- 大きな曲率半径(R/D≥2.0)のエルボ: ξ≈0.2(さらに損失小)
「短く・曲がりが少ない」設計の定量的効果:
- ダクト長さを半分にする→摩擦損失が半分に減少→排風機の必要圧力が低下→電力コスト削減
- 90°エルボを1個から0個に削減→局部損失を約1.0×動圧分削減→同様の効果
【実務・条文構造】
局所排気装置の各要素の設計規定(特化則・有機則等):
フードに関する規定(制御風速・安衛則の記述):
- 有機溶剤業務の局所排気装置フードの制御風速(有機則別表第1):
- 囲い式フード: 0.4m/s
- 外付け式フード(側方・下方吸引型): 0.5m/s
- 外付け式フード(上方吸引型): 1.0m/s
空気清浄装置の種類と適用:
- 集じん装置(サイクロン・バグフィルター・電気集じん機等): 粒子状物質(ダスト・ヒューム・ミスト)の捕集
- 吸収装置(スクラバー等): 水溶性・可燃性ガスの除去
- 吸着装置(活性炭吸着塔等): 有機溶剤蒸気等の吸着
- 燃焼装置(触媒燃焼・直接燃焼): 可燃性有機物の酸化分解
排風機の設置位置(法令規定):
- 特化則・有機則・その他特別規則の共通規定: 腐食性・爆発性のある有害物質の場合、排風機は空気清浄装置の下流(清浄後)に設置することが義務付けられている。
- この規定がエ(正)とウ(正)の根拠。
局所排気装置の定期自主検査(特化則第30条等):
- 頻度: 1年以内ごとに1回
- 検査項目: フード損傷・ダクト腐食・接続部の漏れ・排風機の回転数・制御風速の測定等
- 記録: 3年間保存
【試験での位置づけ】
局所排気装置問題の最頻出は「正しい配置順序(フード→ダクト→空気清浄装置→排風機→排気口)」「ダクト設計の原則(短く・曲がりが少なく・コーナーが緩やか)」「排風機の位置(空気清浄装置の下流=後段)」「囲い式と外付け式フードの制御風速比較(外付けが高い)」の4点です。イのような「長く複雑なダクトが推奨される」という原則の逆転は最頻出の引っかけパターンの一つです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: フードの性能は「捕捉効率」で評価されます。捕捉効率に影響する主な要因: ①制御風速(フード開口部での吸込み速度)・②発生源とフードの距離(外付け式は距離が増すと急激に捕捉能が低下)・③外乱気流(横から吹く風・人の動き等が捕捉気流を乱す)・④フードの大きさ・形状。囲い式フードは外乱気流の影響を最小化でき、少ない排風量で高い捕捉効率が得られます。
- イ: ダクトが「複雑な経路」になる実際の理由(意図しない複雑化): 工場内の構造上の制約(柱・梁・他の設備)によりダクトを曲げざるを得ない場合。このような場合でも可能な限り曲がりの数・角度を減らす設計上の工夫が重要です。
- ウ: 空気清浄装置の選択は「除去対象物質の種類・粒径・濃度・爆発性・腐食性」等を考慮して行います。例: 溶接ヒューム(固体超微細粒子)→バグフィルター・電気集じん機。塩酸ガス(水溶性)→スクラバー(水洗浄)。有機溶剤蒸気(燃焼性・低沸点)→活性炭吸着または触媒燃焼装置。
- エ: 排風機が上流配置(空気清浄装置前)の場合のリスク: ①爆発性ガス(有機溶剤蒸気等)→電気スパーク・摩擦熱で引火・爆発のリスク。②腐食性ガス(塩酸・フッ化水素等)→羽根・ケーシングの腐食・損傷・性能劣化の加速。③粒子状物質(ダスト・ヒューム)→羽根への付着・アンバランス→振動・騒音・早期摩耗。これらを防ぐために清浄後の空気を排風機が通る設計が標準となっています。
- オ: 排気の再循環(ショートサーキット)防止は特に重要です。排気口が建物の吸気口(空調給気口等)の近くにある場合、排気した有害物質が再び建物内に取り込まれます。排気口の位置選定では「風向きの季節変動」「建物の形状による渦流・ダウンウォッシュ」等の気象・建物気流条件を考慮します。
【根拠】工業衛生工学(確立した局所排気装置設計知識)。ダクト設計原則(短く・曲がりが少ない・コーナーが緩やか)・空気清浄装置の上流設置・排風機の下流設置は工業衛生工学の確立した原則。特化則・有機則の設備基準に準拠。
【補足】イ(誤): ダクトは「短く・曲がり少なく・コーナー緩やか」(長く複雑は逆)。正しい配置順序: フード→ダクト→空気清浄装置→排風機→排気口。排風機は空気清浄装置の「後段(下流)」に設置。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 工業衛生工学(確立した局所排気装置設計の知識)。ダクト設計の原則(短く・曲がりが少なく)は工業衛生工学の確立した知識。特化則・有機則の設備基準にも準拠。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。