衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問27:局所排気装置・保護具
給気式(非ろ過式)呼吸用保護具に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア送気マスクとは、マスク本体に内蔵したボンベから圧縮空気を使用者の顔面に供給する保護具であり、外部からの空気ホースに依存せず、自由に移動しながら使用できる。
- イ空気呼吸器(自給式空気呼吸器・SCBA)は、使用者が背負うボンベから圧縮空気が供給される保護具であり、外部からの空気ホースが不要なため移動範囲に制限がない。酸素欠乏危険場所でのレスキュー活動に適している。正答
- ウ酸素欠乏危険場所(酸素濃度18%未満のおそれがある場所)での作業には、送気マスクまたは空気呼吸器を使用しなければならないが、有機ガス用吸収缶付きの防毒マスクで高性能なものを使用すれば代替可能である。
- エホースマスク(ホースで外部の清浄な空気を引き込む送気マスク)は使用者自身の肺力によって空気を引き込む場合(肺力吸引型)と、送風機によって空気を送り込む場合(電動送風機型)がある。
- オ給気式呼吸用保護具(送気マスク・空気呼吸器)は、ろ過式保護具(防じんマスク・防毒マスク)が使用できるすべての状況でも使用可能であり、ろ過式が使用できない酸欠環境でも使用できるため、常に給気式の方が優れた保護具である。
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正しいのはイです。空気呼吸器(自給式空気呼吸器・SCBA)は使用者が背負うボンベから圧縮空気が供給されるため、外部からの空気ホースが不要で移動範囲に制限がなく、救助活動等に適しています。酸欠危険場所でのレスキューに空気呼吸器が推奨されるのはこのためです。
各誤りの要点: ア→ア は送気マスクではなく空気呼吸器(SCBA)の説明(送気マスクは外部ホースから空気供給)。ウ→酸欠環境で防毒マスクは絶対に使用不可(どれほど高性能でも酸素供給機能がないため不可)。エは正しい内容を含むが正答はイ。オ→給気式が適さない場面もある(重量・機動性・エア供給限界等の制限)。
給気式保護具の種類と特性:
| 種類 | 空気の供給源 | 移動範囲 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| ホースマスク(肺力吸引型) | 外部清浄空気(肺力で引き込む) | ホース長さで制限(20〜40m程度) | 比較的短距離の作業 |
| ホースマスク(電動送風機型) | 外部清浄空気(送風機で押し込む) | ホース長さで制限(より長い距離可) | 電力が利用できる作業場 |
| エアラインマスク(定圧型・デマンド型) | 圧縮空気ライン(コンプレッサー等) | ホース長さで制限(数十〜数百m) | 工場内の定常作業 |
| 空気呼吸器(SCBA) | 使用者が背負うボンベ | 制限なし(ボンベ残量まで) | 移動・救助・緊急避難 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 「マスク本体に内蔵したボンベから空気供給・外部ホース不要」は送気マスクではなく空気呼吸器(SCBA)の説明。送気マスクは外部から空気ホースで清浄空気を供給する保護具。アとイの内容が逆になっている。
- イ(正): SCBAの特徴として「外部ホース不要・移動制限なし・救助活動に適する」が正確に記述されている。酸欠危険場所でのレスキューでは移動の自由が重要であり、SCBAが推奨される理由を正確に示している。
- ウ(誤): 酸欠環境ではいかなる防毒マスク(吸収缶の性能・種類を問わず)も使用禁止。防毒マスクは周囲空気をろ過するだけで酸素を補給できないため、酸素濃度が低い環境では吸い込む空気中の酸素が不足する問題が解決されない。
- エ(正): ホースマスクの2種類(肺力吸引型・電動送風機型)の記述は正しい。ただし正答はイ。
- オ(誤): 給気式が「常に優れた」と断定するのは誤り。給気式の制限: ①重量が重い(SCBAで15〜20kg)・②エア供給時間の制限(ボンベ残量)・③移動制限(ホースマスクはホース長さ)・④コスト・取り扱いの複雑さ。ろ過式が使用できる環境ではろ過式が実用的な場合が多い。
【理論的背景】
給気式呼吸用保護具(送気マスク・空気呼吸器)は「外部から清浄な空気または純酸素を供給する」保護具であり、酸素欠乏・高濃度有害ガス・フィルター式が機能しない環境での最後の保護手段として機能します。ろ過式(防じん・防毒マスク)との本質的な違いは「周囲空気をろ過するか」vs「外部から清浄空気を供給するか」にあります。
空気呼吸器(SCBA)の詳細(消防・産業安全の観点):
- 形式: 開放回路型(呼気を外気に排出)・閉回路型(呼気の一部を再利用・酸素ボンベのみで長時間使用)
- ボンベ容量: 一般的な産業用SCBAは200〜300バール・6〜9L容量→使用可能時間約30〜45分(激しい呼吸では短い)
- 使用上の注意: ①ボンベ残量の定期確認(圧力計の確認)・②空気残量警告(低圧警報)の機能確認・③装着後のフィットチェック
- 重量: 一般的に15〜20kg(バックパック型)→長時間・高温環境での身体的負担が大きい
送気マスク(エアラインマスク)の特性:
- 供給源: コンプレッサー・高圧空気ライン・外部エアボンベ等からホースで供給
- 利点: ①長時間使用が可能(供給源が続く限り)・②SCBAより軽量(ホースと接続部のみ)・③コストが比較的安い
- 制限: ①ホースの長さに移動範囲が制限される・②ホースが引っかかる・捩れるリスク・③供給ホースが損傷した場合の空気遮断リスク・④移動が多い作業やレスキューには不向き
【実務・条文構造】
酸欠危険場所での呼吸用保護具規定(酸欠則第5条・安衛則第593条):
義務的使用場面(酸欠則):
- 酸素欠乏危険作業(第1種・第2種): 送気マスクまたは空気呼吸器の使用が義務(防じん・防毒マスクの使用は禁止)
- 救助活動: 救助者も必ず給気式保護具を着用(連鎖事故防止)
給気式保護具の選択基準(実務):
- 短距離・定常作業 → ホースマスク(肺力吸引型または電動送風機型)
- 工場内常設配管有り → エアラインマスク
- 移動が多い・緊急避難・レスキュー → 空気呼吸器(SCBA)
- 長時間の狭隘空間作業 → SCBAとエアラインの組み合わせ(エスケープ用SCBAを携行)
高濃度有害ガス環境での選択:
防毒マスクの吸収缶が対応していない物質(CO・酸素欠乏空気等)や、防毒マスクの破過時間が極めて短くなる高濃度環境(吸収缶の設計容量を超える濃度)では、給気式保護具が必要です。
使用者の訓練・装着確認:
- 定期的な装着練習(特にSCBAは複雑な装着手順)
- 毎回のフィットチェック(陽圧チェック・陰圧チェック)
- 緊急時の対応訓練(エア切れ・ボンベ誤作動等)
【試験での位置づけ】
給気式保護具問題の最頻出は「送気マスクは外部ホースから空気供給(SCBAとの混同に注意)」「SCBA(空気呼吸器)は移動制限なし・救助活動に適する」「酸欠環境では防毒マスク絶対禁止(給気式のみ可)」「ホースマスクの2種類(肺力吸引型・電動送風機型)」の4点です。アのような「送気マスクとSCBAの定義の入れ替え」は典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 送気マスクと空気呼吸器の混同は英語名の確認で整理できます。送気マスク(Air Line Mask / Supplied Air Respirator)は「Line」つまり外部からの空気ラインが特徴。SCBA(Self-Contained Breathing Apparatus)は「Self-Contained(自己完結型)」つまり空気を自分で持つタイプ。名称の意味から機能が導けます。
- イ: SCBAが酸欠危険場所の救助に推奨される理由は「移動自由度の高さ」だけでなく、「エア供給ラインが切断されるリスクがない(自己完結型)」点も重要です。救助場面ではホースが引っかかる等のトラブルが命取りになるため、SCBAが選択されます。
- ウ: 「高性能の防毒マスクなら酸欠でも使える」という誤解は最も危険な誤りです。防毒マスクの吸収缶がどれほど高性能でも「酸素を生成・補充する機能」は一切ありません。酸欠環境(O₂<18%)では、フィルターを通過した空気中のO₂分圧が生命維持に不十分となります。
- エ: ホースマスクの実際の使用例: 狭隘空間(タンク内・地下ピット等)での定常作業では、電動送風機型ホースマスクが選択されることが多い。送風機は外部(危険区域外)に設置し、そこからホースで清浄な空気を供給します。ホースの長さは最大40〜50mまで(それ以上では圧力低下により十分な供給量が確保できない)。
- オ: 保護具の選択では「適切な状況での適切な保護具」が原則であり、過剰に重い保護具の使用は作業者の疲労増大・安全性の低下につながる場合があります。「給気式が常に最良」ではなく、リスク評価に基づいた最適な保護具の選択が重要です。
【根拠】酸欠則第5条(酸欠危険場所での給気式保護具の使用義務)・安衛則第593条(保護具の使用基準)。SCBAと送気マスクの特性の違いは確立した労働衛生工学の知識。
【補足】イ(正): SCBA(空気呼吸器)は外部ホース不要・移動制限なし・救助活動に最適。ア(誤): 「ボンベ内蔵・外部ホース不要」はSCBAの説明(送気マスクではない)。酸欠環境では防毒マスク絶対禁止→給気式必須。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した労働衛生工学)・酸素欠乏症等防止規則。空気呼吸器(SCBA)の特徴・送気マスクとの違いは安衛則第593条等に準拠。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。