衛生管理者 関係法令(有害業務) 問6:健康管理手帳・就業制限
有害業務に係る特別教育および就業制限に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア特別教育(安衛法第59条第3項)の修了により、クレーン(つり上げ荷重5t以上)の操作業務に就くことができる。
- イ就業制限業務(安衛法第61条)に就くためには、原則として技能講習の修了証または免許が必要であり、特別教育のみでは就業できない。正答
- ウ健康管理手帳は、離職後に有害業務に従事した者が自ら申請するものではなく、在職中に事業者が都道府県労働局長に申請して交付を受けるものである。
- エ健康管理手帳の交付対象となる業務に従事した者は、在職中であれば交付を申請できるが、離職後は交付の申請をすることができない。
- オ特別教育の記録は、教育を行った事業者が1年間保存しなければならない。
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正しいのはイです。就業制限業務(クレーン・玉掛け・車両系建設機械等)に就くためには、技能講習の修了または免許が必要であり、特別教育のみでは就業できません(安衛法第61条)。
各誤りの要点: ア→5t以上のクレーン操作は「技能講習修了」または「クレーン運転士免許」が必要であり、特別教育では不可。イ→正しい。ウ→健康管理手帳は在職者ではなく離職の際または離職後に労働者本人が申請するもの。エ→健康管理手帳は離職の際または離職後に申請するものであり「離職後は申請できない」は逆で誤り。オ→特別教育記録の保存期間は3年間(1年ではない)。
特別教育・技能講習・免許の3段階の整理:
| 制度 | 根拠 | 資格取得の方法 | 対象業務の例 |
|---|---|---|---|
| 特別教育 | 安衛法第59条第3項 | 事業者が実施する教育 | 研削といし(5cm未満)・高所作業(フルハーネス)・低圧電気・小型クレーン(5t未満) |
| 技能講習 | 安衛法第61条 | 登録機関での講習修了 | フォークリフト・玉掛け・クレーン(5t未満)・高所作業車(10m未満) |
| 免許 | 安衛法第61条 | 試験合格 | クレーン運転士(5t以上)・ガス溶接技士・X線作業主任者 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 5t以上のクレーンの操作は「クレーン・デリック運転士免許」(安衛法第61条・安衛令第20条)または「移動式クレーン運転士免許」が必要な就業制限業務です。特別教育では対応できません(5t未満の小型移動式クレーンは技能講習が必要)。
- イ(正): 安衛法第61条が定める就業制限業務は、技能講習修了または免許がなければ就業させてはならない業務です。特別教育(事業者が実施する教育)の修了のみでは就業制限業務に就くことはできません。
- ウ(誤): 健康管理手帳(安衛法第67条)は、所定の業務に一定期間従事した者が離職の際または離職後に自ら都道府県労働局長に申請して交付を受けるものです。在職中に事業者が申請するものではありません。
- エ(誤): 健康管理手帳は、対象業務に従事し要件を満たす者が離職の際または離職後に都道府県労働局長へ申請して交付を受けるものです(安衛法第67条)。「離職後は申請できない」は事実と逆であり誤りです。健康管理手帳制度は、潜伏期間の長い遅発性職業病(じん肺・中皮腫等)に対応するため、離職後の長期的な健康管理を国費で行う趣旨の制度です。
- オ(誤): 特別教育の記録の保存期間は3年間(安衛則第38条)です。1年は誤りです。
【理論的背景】
労働安全衛生法の「資格制度」は、危険・有害な業務での労働者の安全を保護するために、業務の危険性・複雑性に応じて「特別教育→技能講習→免許」の3段階の参入規制を設けています。この3段階は危険性の高さに比例した要求水準となっており、最も危険な業務(大型クレーン・危険物製造等)は厳格な国家試験(免許制度)で参入を管理しています。
特別教育と就業制限業務の誤解が生じる理由: 実務では「特別教育を受けた=有資格者」という誤解が生じやすく、技能講習・免許が必要な業務に特別教育修了者を就かせてしまうという法令違反が発生します。「特別教育は最も低い参入基準」であり、対応できる業務の範囲が限定されることを明確に認識する必要があります。
【実務・条文構造】
就業制限業務の主要例(安衛令第20条・安衛法第61条):
クレーン類:
- 移動式クレーン(5t以上): 移動式クレーン運転士免許
- クレーン・デリック(5t以上): クレーン・デリック運転士免許
- 小型移動式クレーン(1t以上5t未満): 小型移動式クレーン運転技能講習修了
- 床上操作式クレーン(5t以上): 床上操作式クレーン運転技能講習修了
玉掛け:
- 玉掛け(クレーン等のつり上げ荷重1t以上): 玉掛け技能講習修了
フォークリフト:
- フォークリフト(最大荷重1t以上): フォークリフト運転技能講習修了
高所作業:
- 高所作業車(作業床高さ10m以上): 高所作業車運転技能講習修了
ガス溶接等:
- ガス溶接作業(溶解アセチレン・酸素使用): ガス溶接技能講習修了 または ガス溶接作業主任者免許
健康管理手帳(安衛法第67条)の対象業務(安衛則別表第4・主要なもの):
- 粉じん(遊離けい酸含有率高い): 珪肺リスク業務に3年以上従事
- 石綿: 石綿含有製品の製造・取扱い等に一定期間従事
- ベンゼン: 一定期間の従事
- クロム酸・重クロム酸等: 一定期間従事
- 塩化ビニル: 一定期間従事
健康管理手帳の効果:
- 離職後の定期健康診断(胸部エックス線・特定検査項目)を国費で実施
- 職業性疾患(がん・じん肺等)の長い潜伏期間に対応(石綿→中皮腫は20〜50年)
特別教育の記録管理(安衛則第38条):
- 内容: 教育を実施した年月日・教育内容・受講者氏名・担当者氏名等
- 保存期間: 3年間(免許証・技能講習修了証は更新・無期限)
【試験での位置づけ】
就業制限業務問題の頻出は「特別教育では就業制限業務に就けない(技能講習・免許が必要)」「健康管理手帳は離職後に本人が申請(事業者が申請するものではない)」「特別教育の記録保存は3年(1年ではない)」の3点です。アのような「特別教育でクレーン(5t以上)操作可能」という誤りは典型的な引っかけです。3段階(特別教育<技能講習<免許)の位置づけと、代表的な業務が各段階のどれに当たるかを表形式で覚えることが効率的です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: クレーン関連の資格は荷重によって要求される資格が変わります。5t未満の移動式クレーンは技能講習、5t以上は免許(国家試験)という段階設定です。建設現場での大型タワークレーンの操作は免許が必須であり、特別教育で対応しようとすることは重大な法令違反です。
- イ: 就業制限業務に無資格者を就かせた場合、事業者は安衛法第61条違反(罰則あり)となります。労働災害が発生した場合の事業者の責任も大きくなります。実務では技能講習・免許の有効性確認(資格証の確認・有効期間等)が安全管理の重要な一部です。
- ウ: 健康管理手帳制度は「離職後の長期的な健康観察」を目的としており、在職中は事業者が実施する特殊健康診断でカバーし、離職後は国(都道府県労働局)が引き継いで健康管理を行う仕組みです。有害業務の「長い潜伏期間(遅発性職業病)」への対応として重要です。
- エ: 健康管理手帳の交付申請は「離職の際または離職後」に行うものです(在職中に本人が申請する制度ではなく、まして離職後に申請できなくなるものでもありません)。例えば石綿健康管理手帳は「石綿等の粉じんにさらされる業務に一定期間従事した」等の要件を満たす者が対象で(安衛則別表第4)、申請先は都道府県労働局長、交付後は年2回の定期健診(胸部エックス線等)を無料で受けられます。中皮腫等の潜伏期間が20〜50年と長いため、離職後の追跡が制度の核心です。
- オ: 特別教育記録の3年保存(安衛則第38条)は、事業者が記録を保管する義務であり、受講者個人への修了証の交付も重要です。なお技能講習の修了証は登録機関が発行する公的な資格証明書であり、無期限に有効(再交付可能)です。
【根拠法令】労働安全衛生法 第61条(就業制限:技能講習・免許が必要)・第59条第3項(特別教育)・第67条(健康管理手帳)、労働安全衛生規則 第38条(特別教育記録の保存:3年間)、安衛令 第20条(就業制限業務の列挙)
【補足】就業制限業務(クレーン5t以上等)は技能講習・免許が必要(特別教育では不可)。健康管理手帳は離職後に本人が申請。特別教育記録は3年保存(1年は誤り)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第59条第3項(特別教育)・第61条(就業制限)・第67条(健康管理手帳)、安衛則第38条(特別教育の記録保存3年)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。