衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問14:採光照明
情報機器作業(VDT作業)における照明と眼の疲労に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア情報機器作業において、ディスプレイ画面と書類を交互に見る作業では、両者の照度(明るさ)が異なっていても視点移動の際に眼が素早く調節するため、眼精疲労には影響しない。
- イ情報機器作業ガイドライン(厚生労働省・令和元年)では、一連続作業時間が2時間を超えないようにし、次の一連続作業までの間に30〜40分の作業休止時間を設けることが推奨されている。
- ウディスプレイ画面の文字は、背景(白)よりも文字(黒)の輝度が低いネガティブ表示(白地に黒文字)の方が、ポジティブ表示(黒地に白文字)より眼への負担が常に大きい。
- エ眼とディスプレイ画面との距離は、50cm以上確保することが情報機器作業ガイドラインで推奨されており、距離を近くするほど眼精疲労が軽減される。
- オドライアイ(目の乾燥)は、情報機器作業中に瞬きの回数が減少することで涙液の蒸発が増加することが一因であり、適度な休憩・瞬き・加湿器の使用・目薬の使用が対策として有効である。正答
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正しいのはオです。情報機器作業(PC作業)中は画面に集中するために瞬きの回数が減少します(通常1分間に15〜20回の瞬きが、PC作業中は3〜5回程度に減少することがある)。瞬きが減ると涙液が蒸発して目が乾き、ドライアイ症状(乾燥感・異物感・ごろごろ感)が生じます。対策として意識的な瞬きの励行・適度な休憩・室内の加湿・人工涙液(目薬)の使用が有効です。
ア→照度差は眼精疲労に影響する(影響ない、は誤り)。イ→ガイドラインの正しい数値は「一連続作業時間=1時間以内」・「作業休止=10〜15分」であり、「2時間・30〜40分」とするイは数値が誤り。ウ→ネガティブ表示が常に負担大とは言えない。エ→距離は50cm以上推奨だが「近いほど軽減」は逆(近すぎると毛様体筋への負荷が増す)。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 画面と書類の照度差・輝度差が大きい場合、視点を移動するたびに瞳孔と毛様体筋が収縮・弛緩を繰り返す。この反復が眼精疲労の直接原因となります。「影響しない」は誤りです。ディスプレイ輝度と書類の照度を同程度に合わせることが眼精疲労防止に重要です。
- イ(誤): 情報機器作業ガイドライン(令和元年)の正しい数値は「一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の一連続作業までの間に10〜15分の作業休止時間を設けること」です。選択肢イの「2時間・30〜40分」はいずれも誤った数値であり、実際の推奨より作業時間が長く・休止が過大に記述されています。一連続作業1時間・休止10〜15分という数値はガイドラインの核心であり、正確に記憶することが重要です。
- ウ(誤): ネガティブ表示(白地に黒文字)とポジティブ表示(黒地に白文字)の眼への負担は一概に決まりません。多くの場合、現代の液晶モニターではネガティブ表示(白地に黒文字)が視認性・眼精疲労の点で有利とされますが「常に負担が大きい」という断定は誤りです。
- エ(誤): 眼とディスプレイの距離は「50cm以上」を確保することが推奨されており(令和元年ガイドライン)、近すぎると毛様体筋(ピント調節筋)への負荷が増大して眼精疲労を増悪させます。「近いほど軽減」は完全に逆の誤りです。
- オ(正): 瞬きの減少→涙液蒸発増加→ドライアイというメカニズムは確立した眼科学的事実であり、情報機器作業での重要な健康問題です。意識的な瞬き・休憩・加湿・目薬(人工涙液)がいずれも有効な対策として推奨されています。
【理論的背景】
情報機器作業(VDT作業: Visual Display Terminals)に伴う眼の健康問題は「VDT症候群」として認識されており、主な症状は以下の通りです。
1. 眼精疲労(アスシノピア): 毛様体筋(ピント調節)の疲労・充血・痛み・ぼやけ
2. ドライアイ: 瞬き減少による涙液蒸発・角膜の乾燥
3. 筋骨格系の疲労: 頸部・肩・腰の凝り・痛み(VDT作業姿勢の問題)
4. 精神的疲労: 集中の持続・ストレス
ドライアイの発症機序:
- 通常の瞬き回数: 1分間に15〜20回
- VDT作業中の瞬き回数: 1分間に3〜7回程度(50〜70%の低下)
- 瞬き減少の理由: 画面への集中・まぶしさへの対応・乾燥した室内空調
- 涙液層の構成: 外層(油層)・中層(水層)・内層(ムチン層)の3層構造が破綻
涙液蒸発と湿度の関係:
- 室内湿度が低い(冷暖房で40%以下)ほどドライアイが悪化
- 推奨室内湿度: 40〜70%(事務所則の努力目標値と一致)
【実務・条文構造】
情報機器作業ガイドライン(厚生労働省・令和元年)の作業管理に関する主要推奨事項:
| 項目 | 推奨内容 |
|---|---|
| 一連続作業時間 | 1時間を超えない |
| 作業休止時間 | 10〜15分 |
| 作業中の休憩 | 1〜2時間ごとに小休止(数分) |
| 眼とディスプレイの距離 | 50cm以上 |
| ディスプレイの高さ | 眼と同じ高さかやや下 |
| ディスプレイ画面照度(上限) | 500lx以下 |
| 書類・キーボード面照度(下限) | 300lx以上 |
| 輝度コントラスト | ディスプレイと書類の輝度差を小さくする |
眼の健康管理(ガイドライン準拠):
- 定期健康診断に眼の健康状態の確認を含める
- ドライアイ症状が強い場合は眼科受診を推奨
- コンタクトレンズ装用者はドライアイリスクが高まるため、作業中の眼の状態を特に注意
ディスプレイ表示形式の特性比較:
- ネガティブ表示(白地に黒文字): 現代の液晶・有機ELで一般的。画面が明るく周囲との輝度差が小さくなりやすい
- ポジティブ表示(黒地に白文字): 画面が暗くなる。夜間使用・暗室作業では眼への刺激が少ない場合あり
- どちらが良いかは「作業環境(周囲の照度)・個人の感覚」によって異なる
【試験での位置づけ】
情報機器作業ガイドラインからの出題では「一連続作業時間(1時間超えない)」「作業休止時間(10〜15分)」「眼とディスプレイの距離(50cm以上)」「ドライアイの発症機序と対策」「画面照度の上限(500lx以下)」が最頻出です。エのような「近いほど眼精疲労が軽減される」という逆の記述、ウのような「常に・必ず」という絶対的断定を含む選択肢は誤りである可能性が高いと意識することが重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 画面と書類の輝度差の問題は、「暗い画面(ダークモード)を使用しながら明るい書類を参照する」または「明るい画面で暗い部屋で作業する」状況で特に顕著です。いずれの場合も視点移動のたびに瞳孔径が大きく変化し、毛様体筋も収縮・弛緩を繰り返すため眼精疲労が増大します。
- イ: ガイドラインの正しい数値は「一連続作業1時間以内・休止10〜15分」であり、選択肢イの「2時間・30〜40分」は誤りです。1時間作業・10〜15分休止というリズムは「眼を休める」だけでなく、頸部・肩の筋肉の疲労回復にも重要です。休憩中は窓の外など遠くを見る(遠距離視力で毛様体筋を弛緩させる)・軽いストレッチを行うことが推奨されます。
- ウ: 表示形式の好みには個人差があり、また使用するディスプレイの技術(CRT vs 液晶 vs 有機EL)によっても最適な表示形式が異なります。現代のガイドラインでは特定の表示形式を一律に義務付けるのではなく、「利用者が見やすいよう輝度・コントラスト・文字サイズを調整できること」を重視しています。
- エ: ディスプレイとの距離は「近いほど文字が大きく見えるから良い」と思いがちですが、近距離視では毛様体筋のピント調節負荷が増大します。50cm以上の距離を確保し、文字サイズは距離に合わせて拡大設定(ディスプレイの表示スケール設定)するのが適切な対応です。
- オ: ドライアイ対策の人工涙液(目薬)は防腐剤含有のものと無防腐剤のものがあります。1日に多数回点眼する場合は防腐剤の角膜毒性が問題になるため、無防腐剤の人工涙液を使用することが眼科学的に推奨されています。また軟膏型・ゲル型は保湿時間が長く、就寝前の使用に向いています。
【根拠】厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発0712第3号)・医学的事実(確立した眼科学)。
【補足】VDT作業中は瞬き回数が激減→涙液蒸発→ドライアイ。ディスプレイとの距離は「50cm以上」推奨(近いほど悪い)。一連続作業1時間超えない・休止10〜15分。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月)・確立した眼科学的事実。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。