衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問4:メンタルヘルス・健康保持増進
職場のメンタルヘルス対策に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア厚生労働省の指針では、職場のメンタルヘルス対策として「4つのケア」が示されており、セルフケア・ラインによるケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケアの4つである。
- イラインによるケアとは、管理監督者(上司)が部下の状態に気づき、相談に対応し、職場環境の改善を行うことを指し、部下自身が自ら行うセルフケアとは区別される。
- ウストレスチェック制度において、ストレスチェックの実施者となれるのは、医師または保健師のみであり、看護師や精神保健福祉士は実施者になれない。正答
- エ事業場外資源によるケアには、地域の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)の活用や、外部のEAP(従業員支援プログラム)機関の利用が含まれる。
- オメンタルヘルス対策における一次予防は、ストレスそのものやそれによる健康障害の発生を防ぐことを目的とし、職場環境の改善・教育研修・セルフケアの推進等が含まれる。
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誤りはウです。ストレスチェックの実施者は医師・保健師だけでなく、必要な研修を受けた看護師・精神保健福祉士も実施者になることができます(安衛則第52条の10)。「医師または保健師のみ」という記述が誤りです。
4つのケア(ア)の名称と内容は試験の基本知識です。セルフケア(自分自身のケア)・ラインケア(上司・管理職)・事業場内産業保健スタッフ(産業医・保健師・衛生管理者等)・事業場外資源(外部機関)の4つを確実に覚えましょう。
メンタルヘルス対策の三段階(一次・二次・三次予防)もよく問われます。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年、2015年改正)が定める4つのケアの正確な定義です。
- イ(正): ラインによるケアの「ライン」は「管理監督者(ラインマネジャー・上司)」を指します。部下の早期の状態変化への気づき・相談対応・職場環境改善・医療機関等への紹介、休職者の職場復帰支援が主な内容です。
- ウ(誤): 安衛則第52条の10第1項により、ストレスチェックの実施者になれるのは「医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者」であり、具体的には「一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士」も含まれます。「医師または保健師のみ」は誤りです。
- エ(正): 事業場外資源によるケアの具体例として、産業保健総合支援センター(地域で産業医・産業保健スタッフへの相談・情報提供を行う機関)・EAP(Employee Assistance Program)機関・医療機関・地域の相談機関等が挙げられます。
- オ(正): メンタルヘルス対策の三次予防の体系:
- 一次予防: ストレス要因の除去・軽減、教育研修、セルフケア推進(発症前)
- 二次予防: 早期発見・早期対応(ストレスチェック等)
- 三次予防: 職場復帰支援・再発防止(休職後のケア)
【理論的背景】
職場のメンタルヘルス対策は、精神障害による労災認定件数の増加・長期休職者の増加・生産性への影響等の深刻な問題を背景に、2000年代から政策的に強化されてきました。2006年に厚生労働省が「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を策定し、4つのケアと三次予防の枠組みを示したことが大きな転換点です。その後、2015年のストレスチェック制度義務化(安衛法第66条の10)により、50人以上事業場での実施が法定化されました。
職場のメンタルヘルス対策を「個人レベル(セルフケア)」「管理者レベル(ラインケア)」「事業場内専門職レベル(産業保健スタッフ)」「事業場外専門機関レベル(外部資源)」の4層構造として捉えることが、4つのケアの理解の核心です。
【実務・条文構造】
ストレスチェック実施者の要件(安衛則第52条の10):
- 医師
- 保健師
- 厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師
- 厚生労働大臣が定める研修を修了した精神保健福祉士
※歯科医師・衛生管理者・心理士・社会福祉士等は要件を満たさない
ストレスチェックの「共同実施者」制度: 実施者を補助する共同実施者としては実施者の指示のもとでの関与が認められています。産業カウンセラー等は共同実施者になれる場合があります。
4つのケアの詳細と実施主体:
| ケアの種類 | 実施主体 | 主な内容 |
|---|---|---|
| セルフケア | 労働者本人 | ストレスへの気づき・ストレス解消・相談・セルフチェック |
| ラインによるケア | 管理監督者 | 部下の変化への気づき・相談対応・職場環境改善・職場復帰支援 |
| 事業場内産業保健スタッフ等によるケア | 産業医・保健師・衛生管理者・人事部門等 | 専門的な相談・健康診断・ストレスチェック・職場環境調査 |
| 事業場外資源によるケア | 外部専門機関 | EAP機関・産業保健総合支援センター・医療機関・労働基準監督署等 |
三次予防の詳細体系:
- 一次予防(発症予防): ストレス要因の低減・職場環境改善・メンタルヘルス教育・セルフケア研修・管理監督者研修
- 二次予防(早期発見・早期対応): ストレスチェック・面接指導・早期の産業医相談・復帰支援のトリアージ
- 三次予防(職場復帰・再発防止): 職場復帰支援プログラムの運用(復職判定・試し出勤・段階的業務復帰)・再発防止のフォローアップ
【試験での位置づけ】
メンタルヘルス問題は近年の出題頻度が高く、「4つのケアの名称と内容」「ストレスチェック実施者の資格(保健師・研修修了の看護師・精神保健福祉士が含まれる)」「三次予防の体系(一次/二次/三次)」「ラインケアの主体(上司・管理監督者)」が最頻出です。ウのような「医師・保健師のみ」という誤りは、「実施者は医師と保健師だけ」という思い込みを利用した典型的な引っかけです。EAP・産業保健総合支援センターの役割(事業場外資源)も出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 4つのケアは相互補完的に機能します。「セルフケアだけでは限界」「ラインケアだけでも不十分」という前提で、4層の連携が有効なメンタルヘルス対策を作り出します。実務では「ストレスチェック→高ストレス者の把握→産業医面接→ラインへの情報提供(本人同意のもと)→職場環境改善」というPDCAサイクルが重要です。
- イ: ラインによるケアで管理監督者が期待される行動は「傾聴(話をしっかり聞く)・支持(気持ちを受け止める)・情報提供(相談窓口の紹介)・職場環境改善」であり、「診断や治療的介入」は管理監督者の役割ではありません(医師・産業保健スタッフへつなぐことが適切)。
- ウ: 研修修了の看護師・精神保健福祉士が実施者に加わった背景は、医師・保健師だけでは産業保健スタッフの数が不足する事業場が多いためです。実務ではEAPや外部の精神保健福祉士がストレスチェックを担当するケースが増えています。
- エ: 産業保健総合支援センター(さんぽセンター)は各都道府県に設置されており、産業医・産業看護職・衛生管理者等への研修・相談・情報提供を無料で行っています。中小企業では内部に産業保健スタッフがいない場合が多く、こうした外部資源の活用が特に重要です。
- オ: 一次予防としての「職場環境改善」は、個人のストレス対処能力向上(個人アプローチ)だけでなく、ストレス要因そのものを職場レベルで減らすこと(組織アプローチ)が核心です。ストレスチェックの集団分析結果(職場単位のストレス状況分析)を活用して職場環境改善につなげることが制度の目的の一つです。
【根拠法令】労働安全衛生規則 第52条の10(ストレスチェックの実施者要件)、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年・改正平成27年)
【補足】ストレスチェック実施者は「医師・保健師のみ」ではなく「研修修了の看護師・精神保健福祉士」も含む。ラインケアの主体は「上司(管理監督者)」。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第66条の10第1項・安衛則第52条の10(ストレスチェックの実施者要件)、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。