労働衛生(有害業務以外)29メンタルヘルス・健康保持増進

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問29:メンタルヘルス・健康保持増進

長時間労働者への面接指導に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 労働安全衛生法第66条の8の規定により、時間外・休日労働が1か月に80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を行わなければならない。
  • 面接指導の申し出は労働者本人が行う必要があり、事業者が一方的に高リスク労働者を特定して強制的に面接指導を実施することはできない(労働者の申し出が要件)。
  • 面接指導の結果に基づいて医師が就業上の措置(時間外労働の制限・作業の転換・深夜業の制限等)を勧告した場合、事業者はその勧告に基づき、労働者の健康を考慮しつつ就業上の措置を講じなければならない。
  • 面接指導の対象となる時間外・休日労働時間数の把握は、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間等の客観的な方法によって行うことが原則とされており、労働者の自己申告のみによる把握は認められていない。正答
  • 高度プロフェッショナル制度の対象労働者については、時間外・休日労働時間数ではなく、健康管理時間(事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間の合計)が1か月に100時間を超えた場合に面接指導の実施が義務付けられている。
正答:面接指導の対象となる時間外・休日労働時間数の把握は、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間等の客観的な方法によって行うことが原則とされており、労働者の自己申告のみによる把握は認められていない。

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誤りはエです。「労働者の自己申告のみによる把握は認められていない」という断定が誤りです。労働時間の把握は「タイムカード・ICカード・PCの使用時間等の客観的な方法によること」が原則ですが、事業場外労働(直行直帰・顧客訪問等)など客観的な把握が困難な場合は、例外として自己申告が認められています。「一切認められない」は誤りです。

ただし自己申告を採用する場合も、①正確な申告を妨げない②申告内容と乖離がないか確認する③不利益取り扱いをしないことが必要です。ア(面接指導の要件)・イ(申し出の主体)・ウ(医師勧告と就業上の措置)・オ(高度プロフェッショナル制度の条件)はすべて正しい内容です。

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各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 安衛法第66条の8の面接指導実施要件は①時間外・休日労働が1か月80時間超②疲労の蓄積が認められる③労働者からの申し出の3要件がすべて揃った場合に義務が生じます。「80時間超+疲労+申し出」の3点セットです。
  • イ(正): 面接指導の申し出は労働者本人が行うことが必要です(安衛法第66条の8第2項)。事業者が強制的に面接指導を実施することは、法的義務の枠組みを超えていますが、事業者が任意に面接を設定することは可能です(強制ではなく任意として)。
  • ウ(正): 医師の意見(勧告・意見)に基づく就業上の措置の実施は安衛法第66条の8第5項による義務です。措置としては、時間外労働の制限・配置転換・深夜業の制限・休暇の付与等があります。措置の実施に際して「労働者の承諾」は必ずしも必要ではありませんが、労働者の意見を聞くことが推奨されます。
  • エ(誤): 「客観的な方法による把握が原則」は正しいですが、「自己申告のみは一切認められない」は誤りです。厚生労働省のガイドラインでは、直行直帰・外回り・テレワーク等の事業場外労働について、客観的な把握が困難な場合は自己申告を認める例外を設けています。ただし自己申告採用時にも乖離確認等の管理義務があります。
  • オ(正): 高度プロフェッショナル制度(労働基準法第41条の2)対象者は労働時間規制が適用除外のため、通常の「時間外・休日労働時間」ではなく「健康管理時間(在社時間+事業場外労働時間)が1か月100時間超」を面接指導のトリガーとしています。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

過重労働と健康障害の関係は医学的に確立されており、長時間労働は脳・心臓疾患(過労死・過労自殺)・精神障害の主要なリスク因子です。厚生労働省の「脳血管疾患・虚血性心疾患の認定基準」では、発症前1か月に100時間または2〜6か月の平均80時間超の時間外労働を過重負荷の目安として用いています。

面接指導制度の設計思想:

  • 一定以上の長時間労働者(高リスク者)に対して、医師が直接面接することで健康リスクを評価
  • 労働者の申し出を要件とすることで「受検強制によるプライバシー侵害」を回避
  • 医師の意見に基づく就業上の措置を事業者に義務付けることで、実効的な健康保護を実現

「80時間」という数値の根拠:

  • 「過労死ライン」として知られる1か月80時間の時間外労働は、脳・心臓疾患発症リスクが著明に上昇するとされる閾値
  • 発症前2〜6か月平均でも80時間超が継続した場合も高リスクとされる

【実務・条文構造】

面接指導対象者の類型(安衛法・改正労働基準法による):

| 類型 | 対象者 | 基準時間 | 申し出 |

|---|---|---|---|

| 一般労働者 | 通常の労働者 | 月80時間超の時間外・休日労働 + 疲労の蓄積 | 労働者の申し出が必要 |

| 管理監督者 | 管理監督者等(41条適用者) | 月100時間超の休日・時間外労働に相当 | 安衛法上の義務化あり |

| 裁量労働者 | 専門型・企画業務型裁量労働制対象者 | 月100時間超(健康・福祉確保の観点)| 対象者に通知義務あり |

| 高プロ | 高度プロフェッショナル制度対象者 | 健康管理時間が1か月100時間超 | 義務的実施 |

労働時間の把握方法(ガイドライン:平成29年1月):

  • 原則: タイムカード・ICカード・PCのログ(客観的方法)
  • 例外: 事業場外労働(直行直帰・外回り・テレワーク)→みなし労働時間制または自己申告(適切な管理のもと)
  • 自己申告採用時の条件: ①正確な申告を妨げない②乖離の確認③不利益取り扱いの禁止

面接指導結果の記録保存(安衛則第52条の6):

  • 面接指導の記録: 5年間保存

【試験での位置づけ】

長時間労働・面接指導の問題では「月80時間超の時間外+疲労+申し出の3要件」「客観的把握が原則だが事業場外労働では自己申告も例外的に認められる(エ)」「医師勧告に基づく就業上の措置は事業者の義務」「高プロ制度の面接指導基準(健康管理時間100時間)」が出題ポイントです。エのような「自己申告は一切認められない」という絶対的否定は過誤であり、例外の存在を理解することが重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「疲労の蓄積が認められる」という要件は、労働者の主観的訴え(疲れている・眠れない等)だけでなく、職場での観察(遅刻・ミスの増加・顔色の変化等)も参考にします。事業者・管理監督者は月80時間超の時間外労働者を把握し、面接指導の申し出を促す環境整備が求められます。
  • イ: 申し出を要件とする設計に対して「申し出しにくい職場環境では機能しない」という批判があります。事業者は面接指導の制度・申し出方法を周知し、申し出を理由とした不利益取り扱いを禁止することで、申し出しやすい環境を整備する必要があります。
  • ウ: 医師の勧告に基づく就業上の措置を事業者が実施しない場合、労働安全衛生法第66条の8第5項違反として行政指導・勧告・公表の対象となります。また健康障害が実際に発生した場合は、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任が生じる可能性があります。
  • エ: テレワーク(在宅勤務)での労働時間管理は、客観的な方法(PC使用ログ等)による把握が推奨されますが、プライバシーへの配慮(常時監視の回避)との兼ね合いから、PC利用状況の記録と自己申告の組み合わせが実務では多く採用されています。
  • オ: 高度プロフェッショナル制度(高プロ)は2019年4月施行であり、年収1,075万円以上・金融商品開発等の特定業務に従事する労働者が対象です。時間外労働規制の適用除外となる代わりに、健康確保措置(面接指導・勤務間インターバル・年間104日以上の休日等)が義務付けられています。

【根拠法令】労働安全衛生法(安衛法)第66条の8・安衛則第52条の2〜第52条の7・厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月)。

【補足】労働時間把握は客観的方法が「原則」だが、事業場外労働では「例外的に自己申告も認められる」(「一切認められない」は誤り)。面接指導の要件: 月80時間超の時間外+疲労+労働者の申し出。記録保存は5年。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月)。自己申告は例外的に認められる場合がある(客観的方法が原則だが「自己申告のみは一切認められない」は誤り)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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