衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問7:温熱環境・作業環境測定
WBGT(湿球黒球温度)の算出方法に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア屋外で日射がある場合のWBGT算出式は「0.7×自然湿球温度 + 0.2×黒球温度 + 0.1×乾球温度」であり、屋内または日射がない屋外では「0.7×自然湿球温度 + 0.3×黒球温度」で算出する。正答
- イWBGTは気温(乾球温度)・湿度・気流の3要素から算出する指標であり、熱放射(輻射熱)は算出式に含まれない。
- ウ屋外で日射がある場合のWBGT算出式では、自然湿球温度の係数は0.3、黒球温度の係数は0.5、乾球温度の係数は0.2である。
- エ屋内または日射がない屋外でのWBGT算出式は「0.7×乾球温度 + 0.3×黒球温度」であり、自然湿球温度は使用しない。
- オWBGT値は、乾球温度(気温)だけで算出できるように設計されており、湿球温度計や黒球温度計は補助的な確認に用いる。
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正しいのはアです。WBGTは測定環境によって2種類の算出式があります。屋外で日射がある場合: 0.7×自然湿球温度 + 0.2×黒球温度 + 0.1×乾球温度。屋内または日射がない屋外: 0.7×自然湿球温度 + 0.3×黒球温度。
最も重要なポイントは自然湿球温度の係数が0.7と最大である点です。湿度(蒸発散熱)の影響が最も体感に影響するためです。イは「熱放射が含まれない」が誤り(黒球温度が輻射熱を反映)。ウは係数の数値が誤り。エは「乾球温度」を使う式が誤り(屋内式は湿球と黒球のみ)。オは乾球温度だけでは算出できません。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 屋外日射あり=0.7Tnw+0.2Tg+0.1Ta、屋内または日射なし=0.7Tnw+0.3Tgと正確に記述されています。各係数の合計がどちらも1.0となることも確認できます。
- イ(誤): WBGTの「G」はGlobe(黒球温度)の略であり、黒球温度は輻射熱を反映する要素として算出式に含まれています。「熱放射は含まれない」は誤りです。WBGTは気温・湿度・気流・熱放射の4要素すべてを反映した複合指標です。
- ウ(誤): 屋外日射あり式の正しい係数は自然湿球温度0.7・黒球温度0.2・乾球温度0.1です。選択肢の「0.3/0.5/0.2」はすべて誤りです。自然湿球温度が0.7で最大であることが重要なポイントです。
- エ(誤): 屋内・日射なし式は「0.7×自然湿球温度 + 0.3×黒球温度」です。「乾球温度」ではなく「自然湿球温度」を使います。乾球温度は屋外日射あり式にのみ登場します(係数0.1)。
- オ(誤): WBGTは自然湿球温度(Tnw)と黒球温度(Tg)が算出の主役です。乾球温度だけでは湿度や輻射熱の影響が考慮できず、WBGTを算出することはできません。
【理論的背景】
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature: 湿球黒球温度)は1950年代に米陸軍が軍事訓練中の熱中症を予防するために開発した複合指標です。その後、国際標準化機構(ISO)のISO 7243として国際規格化され、現在は日本でも厚生労働省・環境省の熱中症対策の基準として広く採用されています。
WBGTが3種類の温度計を組み合わせる理由は、人体の体感温度に影響する要因が単一の「気温」では代表できないためです。
- 自然湿球温度(Tnw): 湿らせた布を巻いた温度計の示す値。周囲の湿度が高いと蒸発が抑制されて値が上昇する。蒸発散熱(発汗による体温調節)への影響を反映する最重要要素(係数0.7)。
- 黒球温度(Tg): 黒く塗装した中空の銅球(直径15cm)内部の温度計の示す値。輻射熱(太陽放射・周囲の熱放射)を反映する。
- 乾球温度(Ta): 通常の気温計。日射の直接加熱効果を反映するため、屋外日射あり条件のみ算出式に含む(係数0.1)。
【実務・条文構造】
WBGT算出式の正確な整理:
| 条件 | 算出式 | 係数合計 |
|---|---|---|
| 屋内または日射なし屋外 | 0.7×Tnw + 0.3×Tg | 1.0 |
| 屋外で日射あり | 0.7×Tnw + 0.2×Tg + 0.1×Ta | 1.0 |
WBGT基準値(作業強度別・厚生労働省「職場における熱中症の予防について(通達)」):
| 代謝率水準 | 熱に順化していない者 | 熱に順化している者 |
|---|---|---|
| 安静(代謝率水準0) | WBGT 33℃以下 | WBGT 33℃以下 |
| 低代謝率(水準1) | WBGT 27℃以下 | WBGT 30℃以下 |
| 中程度代謝率(水準2) | WBGT 25℃以下 | WBGT 28℃以下 |
| 高代謝率(水準3) | WBGT 22℃以下 | WBGT 26℃以下 |
| 高代謝率(水準4) | WBGT 18℃以下 | WBGT 25℃以下 |
熱に「順化」(暑熱馴化)とは、繰り返し暑熱にさらされることで汗腺機能が向上し、体温調節能力が高まった状態を指します。
【試験での位置づけ】
WBGT算出式の問題は「屋内式と屋外式の違い(乾球温度が入るかどうか)」「各係数の数値(0.7/0.3または0.7/0.2/0.1)」「自然湿球温度の係数が最大(0.7)である理由(湿度の影響が最大)」の3点が最頻出です。ウのように係数の数値を誤って記述する選択肢、エのように「乾球温度」と「自然湿球温度」を入れ替える選択肢は典型的な引っかけパターンです。係数の合計が常に1.0になることを確認することで、数値の誤りを見抜く手がかりになります(ウは0.3+0.5+0.2=1.0で合計は合うため数値だけで正誤を判断する必要がある)。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 屋外式に乾球温度が追加される理由は、日射がある屋外では太陽放射による「直接加熱」の効果が乾球温度の上昇として現れるためです。一方、屋内や日射がない状況では乾球温度を加算する意義が薄いため算出式から除かれます。
- イ: 黒球温度計の「黒球」は熱放射をほぼ完全に吸収するよう黒色塗装されており、太陽光や周囲の熱源からの輻射熱を敏感に検知します。夏の直射日光下では黒球温度が乾球温度より大幅に高くなることがあります。
- ウ: 係数の誤り選択肢(0.3/0.5/0.2)は、自然湿球温度の係数を小さく見せ、黒球温度の影響を過大に見せる典型的な誤りパターンです。湿度の影響(係数0.7)が最大である生理学的根拠を理解することで自然に正しい係数が記憶できます。
- エ: 屋内式で「乾球温度」を使うという誤りは、乾球温度(通常の温度計)と自然湿球温度(湿らせた布を巻いた温度計)を混同することから生じます。両者は外見上区別しにくいため、測定機器の種類と用途の理解が重要です。
- オ: 乾球温度(気温)のみで熱中症リスクを評価する「気温だけ見ていればよい」という考え方は危険です。気温30℃でも湿度90%の蒸し暑い状態と湿度20%の乾燥した状態ではWBGTが大きく異なり、前者の方が熱中症リスクが格段に高くなります。
【根拠】厚生労働省「熱中症予防のためのWBGT活用指針」・ISO 7243(Hot environments - Estimation of the heat stress on working man, based on the WBGT index)。
【補足】屋外日射あり式: 0.7Tnw+0.2Tg+0.1Ta / 屋内・日射なし式: 0.7Tnw+0.3Tg。自然湿球温度の係数0.7が最大。係数の合計は常に1.0。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「熱中症予防のためのWBGT活用指針」・環境省「熱中症環境保健マニュアル」。WBGT算出式はISO 7243に準拠。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。