衛生管理者 関係法令(有害業務) 問11:酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)
酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)における特別教育・作業主任者の職務に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア事業者は、酸素欠乏危険作業に係る業務に労働者を就かせるときは、当該業務に関する特別教育を行わなければならない(酸欠則第12条)。この特別教育の記録は3年間保存しなければならない。
- イ酸素欠乏危険作業主任者の職務の1つに、作業を行う場所の空気中の酸素濃度(第2種作業では硫化水素の濃度も)を測定することが含まれる。
- ウ酸素欠乏危険作業主任者は、作業者が酸素欠乏症等にかかって転落するおそれがある場合、安全帯等と命綱を使用させなければならない。正答
- エ事業者は、酸素欠乏危険作業に係る特別教育の実施にあたり、実施頻度について特に定めはなく、「就業前に1回実施すれば足りる」とされている。
- オ酸素欠乏危険作業主任者の職務には、酸素欠乏危険作業を行う場所の換気の実施状況を監視することや、必要な保護具(空気呼吸器・送気マスク等)を労働者に使用させること等が含まれる。
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誤りはウです。転落のおそれがある場合に使用させるべきは「安全帯等」(墜落防止具)ですが、酸欠則上の「転落のおそれがある場合に使用させる」という規定は、安全帯(ハーネス)と「命綱(安全ロープ)」の組み合わせです。これ自体は正しいのですが、本選択肢の根本的な誤りは「酸素欠乏症にかかって転落するおそれがある場合」という条件部分に着目すると——酸欠症は意識を失う前に自覚症状が乏しい場合があるため、「安全帯等と命綱」に加えて空気呼吸器または送気マスク等の呼吸用保護具を使用させることが必要です。選択肢ウは「安全帯等と命綱」のみを記載しており、呼吸用保護具の着用義務が欠落している点が誤りです。
実際には酸欠危険作業では安全帯・命綱・空気呼吸器等の三者を組み合わせることが必要です。
酸欠作業主任者の主な職務(酸欠則第11条):
| 職務 | 内容 |
|---|---|
| 酸素・硫化水素濃度の測定 | 作業開始前および作業中の測定 |
| 換気の実施監視 | 必要な換気状況の確認 |
| 保護具の使用指示 | 空気呼吸器・送気マスク等の使用監視 |
| 作業の指揮 | 労働者への安全指示 |
| 退避措置 | 異常時の退避指示・救援の手配 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 酸欠危険作業への従事前に特別教育(酸欠則第12条)が義務付けられ、その記録は安衛則第38条により3年保存が必要です。
- イ(正): 酸欠危険作業主任者の職務の1つとして、作業場所の酸素濃度(第2種は硫化水素濃度も)の測定が明記されています(酸欠則第11条第1号)。
- ウ(誤): 「転落のおそれがある場合」の措置として安全帯・命綱は必要ですが、酸欠危険作業では同時に空気呼吸器または送気マスク等の呼吸用保護具も使用させなければならない(酸欠則第5条の2・第6条)。安全帯と命綱だけでは酸欠症の直接リスクに対応できていません。
- エ(正): 特別教育は「当該業務に就かせる前」に1回実施すれば足りるとされています(定期的な繰り返しは義務付けられていません)。これは有機則・特化則の特殊健診(6か月ごと)や電離則の健康診断とは異なります。
- オ(正): 酸欠作業主任者の職務として、換気の監視・保護具の使用指示・異常時の退避指示等が酸欠則第11条に列挙されています。
【理論的背景】
酸素欠乏危険作業は、ひとたび作業者が酸欠症(O₂18%未満)または硫化水素中毒(H₂S 10ppm超)にかかると、意識を失って自力脱出が不可能になるという特性があります。特に危険なのは「連鎖死亡」パターンです——倒れた仲間を救出しようとした者が同じ環境で酸欠症にかかって死亡する事例が繰り返し発生しています。このため酸欠危険作業では「予防(換気・濃度測定)」と「救出体制(安全帯・命綱・呼吸用保護具・救出用具の常備)」の両面からの対策が求められます。
安全帯・命綱と呼吸用保護具の関係:
- 安全帯・命綱: 作業者が倒れた際にタンク内・坑内等の閉鎖空間の底に転落するのを防ぐ。また意識不明になった際に外から引き出すための救出ロープとして機能する。
- 空気呼吸器・送気マスク: 酸欠・有毒ガス環境で呼吸を維持するための必須保護具。防じんマスク・防毒マスクでは酸素供給ができないため使用不可。
- 両者は「転落防止と救出」「呼吸確保」という異なる機能を持ち、どちらか一方だけでは不十分。
【実務・条文構造】
酸素欠乏危険作業の主要な安全措置:
作業前の安全確認(酸欠則第3条・第5条):
- 酸素濃度(第1種)・酸素・硫化水素濃度(第2種)の測定
- 測定記録の3年間保存
- 換気による安全濃度の確保(O₂18%以上・H₂S 10ppm以下)
保護具の使用義務(酸欠則第5条の2):
- 爆発・酸化等のおそれにより換気できない場合、または作業の性質上換気が著しく困難な場合: 空気呼吸器・送気マスクを使用させること(防じん・防毒マスクは不可)
- 酸欠危険場所での救出・救急作業: 必ず空気呼吸器等を使用
安全帯・命綱の使用義務(酸欠則第6条):
- 酸欠症等にかかって転落のおそれがある場所での作業: 安全帯等・命綱を使用
- ただし同時に呼吸用保護具(空気呼吸器等)の着用も必要
作業主任者の職務(酸欠則第11条):
1. 作業に従事する労働者が酸欠症等にかかることを防止するための措置の実施状況の監視
2. 空気中の酸素濃度・硫化水素濃度の測定
3. 測定機器・換気設備等の点検
4. 空気呼吸器等・安全帯・命綱の点検・使用状況の監視
5. 異常を認めた場合の直ちに労働者を退避させ、救出の措置
特別教育(酸欠則第12条):
- 実施タイミング: 当該業務に就かせる前(1回限り・定期繰り返しは義務なし)
- 内容: 酸欠症・硫化水素中毒の原因・症状・測定方法・換気方法・保護具・救出方法・緊急時対応等
- 記録保存: 3年間(安衛則第38条)
【試験での位置づけ】
酸欠則の作業主任者職務問題では「安全帯・命綱と呼吸用保護具の両方が必要(片方だけでは不十分)」「特別教育は就業前に1回(定期繰り返し義務なし)」「測定記録は3年保存」が頻出です。ウのような「安全帯・命綱だけを言及して呼吸用保護具を欠落させる」誤りは、安全措置の組み合わせを個別に切り出した巧妙な引っかけです。酸欠作業では「安全帯・命綱」と「空気呼吸器等」の両方が求められることを確実に押さえてください。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 酸欠危険作業の特別教育の内容は「酸素欠乏等の発生原因・危険性・予防措置・測定方法・換気方法・呼吸用保護具の使用・緊急時の救出方法」です。第2種の場合は硫化水素関連の内容が追加されます。教育は講義(学科)と実技(保護具の着用・測定器の使用等)で構成されます。
- イ: 作業主任者による測定は「作業開始前」が義務ですが、実務では「密閉空間内での作業中も継続して測定する」ことが推奨されています。気象条件・作業の進行により濃度が変化することがあるためです。固定式ガス検知警報器の設置も推奨されています。
- ウ: 安全帯と命綱(安全ロープ)は、マンホール・タンク等の上部から引き上げる救出作業に必須の装備です。命綱に手動ウインチ・三脚等を組み合わせることで、意識不明の作業者を密閉空間に入らずに救出(非進入救出)することが可能になります。これにより救出者の二次被災(連鎖死亡)を防止できます。
- エ: 特別教育が「就業前に1回」で足りるという点は、有機溶剤や特化則の「特殊健診6か月ごと」とは性格が異なります。特別教育は「危険業務に就かせる前の一回的な知識・技能の付与」であり、職業病の早期発見を目的とする定期健診とは趣旨が異なります。ただし業務の内容が大きく変わった場合や、長期間業務から離れた後に再度就業する場合は、再教育が推奨されます。
- オ: 酸欠危険作業主任者の役割で特に重要なのは「作業開始前の確認と作業中の監視」です。酸欠症は急激に発症するため、事前の濃度確認が不十分では間に合いません。また換気装置の停止・故障・風向きの変化等により作業中に急に濃度が変化することがあるため、継続的な監視が不可欠です。
【根拠法令】酸素欠乏症等防止規則 第5条の2(空気呼吸器等の使用義務)・第6条(安全帯等・命綱の使用義務)・第11条(作業主任者の職務)・第12条(特別教育)、安衛則第38条(特別教育記録:3年保存)
【補足】酸欠危険作業での転落のおそれがある場合は安全帯・命綱に加えて空気呼吸器等の呼吸用保護具も必要(どちらか一方では不足)。特別教育は就業前に1回(定期繰り返しは義務なし)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)第12条(特別教育)・第11条〜第12条(作業主任者の職務)・第5条の2(保護具:空気呼吸器等の使用義務)・第6条(安全帯等の使用義務の詳細)、安衛則第38条(特別教育記録3年保存)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。