衛生管理者 関係法令(有害業務) 問18:電離放射線障害防止規則(電離則)・妊娠中女性の線量限度
電離放射線障害防止規則(電離則)における女性(妊娠可能期間中の女性・妊娠中の女性)の線量限度に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア放射線業務に従事する女性(妊娠可能期間中の女性)の実効線量限度は、男性と同じく5年間で100mSv・1年間で50mSvであり、女性に特有の追加制限はない。
- イ妊娠中の女性の放射線業務従事者については、妊娠と知った時から出産までの間、腹部表面の等価線量について「妊娠中全期間で5mSv」を超えてはならない。
- ウ妊娠中の女性の放射線業務従事者については、内部被ばくによる実効線量について「妊娠中全期間で5mSv」を超えてはならない。
- エ妊娠可能期間中の女性の実効線量制限は「3か月につき5mSv」であるが、この制限は女性の妊娠が確認された場合にのみ適用されるものであり、妊娠していない女性には適用されない。
- オ放射線業務に従事する女性(妊娠可能期間中の女性)の実効線量制限は「3か月につき5mSv」であり、これは男性の「5年間で100mSv・1年間で50mSv」という制限に加えて適用される女性特有の追加制限である。正答
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正しいのはオです。妊娠可能期間中の女性(妊娠の有無にかかわらず)には、男性と共通の制限(5年100mSv・年50mSv)に加えて、「3か月につき5mSv」を超えてはならないという追加制限があります(電離則第4条第2項)。これは女性特有の追加規制であり、妊娠していない女性にも適用されます。
各誤りの要点: ア→「女性に特有の追加制限はない」は誤りです(3か月5mSvの追加制限がある)。イ→妊娠中の女性の腹部表面の等価線量限度は「妊娠中全期間で2mSv」であり、「5mSv」とした点が誤りです(電離則第6条)。ウ→内部被ばくによる実効線量は「妊娠中全期間で1mSv」を超えてはなりません(5mSvは誤り)。エ→「3か月5mSv」の制限は妊娠が確認されていない女性にも適用されます(「妊娠可能期間中の女性」全員が対象)。
女性の放射線業務従事者に係る線量限度の整理(電離則):
| 区分 | 対象 | 制限値 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 実効線量(全員共通) | 男女問わず | 5年間100mSv・1年50mSv | 電離則第4条第1項 |
| 妊娠可能期間中の女性の追加制限 | 妊娠の有無に関係なく | 3か月につき5mSv | 電離則第4条第2項 |
| 妊娠中女性の腹部表面 | 妊娠と知った時〜出産 | 妊娠中全期間で2mSv | 電離則第6条第1項 |
| 妊娠中女性の内部被ばく | 妊娠と知った時〜出産 | 妊娠中全期間で実効線量1mSv | 電離則第6条第2項 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 妊娠可能期間中の女性には「3か月につき5mSv」の追加制限があります。男女共通の制限のみでは不十分です。
- イ(誤): 妊娠中の女性の腹部表面の等価線量限度は「妊娠中全期間で2mSv」です(電離則第6条第1項)。本選択肢は「5mSv」としており数値が誤りです。
- ウ(誤): 内部被ばくによる実効線量は「妊娠中全期間で1mSv(5mSvではない)」を超えてはなりません。
- エ(誤): 「3か月につき5mSv」の制限は妊娠が確認されていない女性にも適用されます(妊娠中の女性のみでなく「妊娠可能期間中の女性」全般が対象)。
- オ(正): 妊娠可能期間中の女性の「3か月5mSv」は、男女共通の制限に「加えて」適用される女性特有の追加制限であり、妊娠の有無に関係なく適用されます。
【理論的背景】
放射線の胎児への影響は「確定的影響(胎児奇形・発育遅延等の閾値以上で生じる影響)」と「確率的影響(胎内被ばくによる小児白血病等のがんリスク増加)」の両方が問題となります。胎児は細胞分裂が活発であり放射線感受性が成人より高いとされ、器官形成期(妊娠8〜15週)が最も感受性が高いとされています。
妊娠可能期間中の女性への追加制限(電離則第4条第2項)の背景:
妊娠の事実が確認される前の早期(特に器官形成期)に曝露することへのリスクを軽減するため、妊娠が判明していない女性でも「3か月あたり5mSv」という追加制限を設けることで、もし妊娠している場合の胎児へのリスクを管理しています。この考え方は国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づいています。
妊娠と知った時からの追加制限(電離則第6条)の背景:
妊娠が確認された後は、胎児への直接的な放射線の影響(腹部表面からの直接照射・体内の放射性物質からの内部被ばく)をより厳格に管理するため、腹部表面の等価線量と内部被ばく実効線量にそれぞれ上限が設けられています。
【実務・条文構造】
妊娠中女性の線量限度の詳細(電離則第6条):
- 適用期間: 妊娠と知った時から出産まで(「妊娠中全期間」という1回限りの区切り)
- 腹部表面の等価線量: 妊娠中全期間で2mSv以内
→ 腹部に向けられた外部放射線(特にβ線・低エネルギーγ線等)による胎児への直接照射を制限
- 内部被ばくによる実効線量: 妊娠中全期間で1mSv以内
→ 体内に取り込まれた放射性物質(食事・吸入等)が胎児を内側から照射することを制限
「妊娠可能期間中の女性」の定義(実務上の解釈):
- 一般的に「月経が始まってから閉経前の女性」とされる
- 実際には個人の状況(避妊・閉経前後等)によって判断が難しい場合もある
- 実務では「妊娠可能期間中の女性」として申告・管理する仕組みが必要
男性と女性の制限の比較(まとめ):
- 男性: 5年間100mSv・年間50mSv(実効線量)・眼の水晶体5年100mSv・年50mSv・皮膚年500mSv
- 女性(妊娠可能期間中): 上記に加え「3か月につき5mSv」を超えないこと
- 女性(妊娠中): 上記全部に加え「腹部表面2mSv・内部被ばく実効線量1mSv(いずれも妊娠中全期間)」
【試験での位置づけ】
電離則の女性線量限度問題の頻出は「妊娠可能期間中の女性の3か月5mSv(男女共通の制限に加えた追加制限・妊娠の有無に関係なく適用)」「妊娠中女性の腹部表面2mSv・内部被ばく実効線量1mSv(どちらも妊娠中全期間・それぞれ数値を間違えない)」の数値の正確な記憶です。エのような「妊娠が確認された場合のみ3か月5mSvが適用」という誤りは、妊娠前(妊娠可能期間中)の保護と妊娠後(妊娠中)の保護の違いを曖昧にした典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「男性と同じ制限で追加制限なし」とする誤りが生じる背景は、「差別」への過剰な配慮から生じる誤解です。しかし女性固有の生理(妊娠の可能性・胎児への影響)は科学的に正当化された追加制限の根拠であり、差別ではなく合理的配慮として理解する必要があります。
- イ: 腹部表面の2mSvという値は「胎児の実効線量が1mSvを大きく超えないようにする」という目的から設定されています(腹部表面から胎児への線量換算係数を考慮して余裕を持った値)。実際の胎児線量は腹部の厚み・放射線のエネルギー等によって変わります。
- ウ: 内部被ばくによる実効線量の1mSvという値は、ICRP勧告の「公衆(一般人)の被ばく限度(年1mSv)」と同水準です。妊娠中は胎児が放射性物質の影響を直接受けるため、内部被ばくに対して特に厳格な上限が設けられています。
- エ: 「妊娠可能期間中の女性」全員に3か月5mSvが適用される実務上の意義は、「妊娠が判明する前の早期(特に器官形成期)の被ばくリスクを事前に管理する」点にあります。妊娠が判明してから追加制限をかけても、それ以前の被ばくは取り消せないため、潜在的な妊娠も考慮した事前制限が必要です。
- オ: 「男性の制限に加えて適用される」という理解の実務的意義は、事業者が放射線業務に従事する女性の被ばく管理において「3か月ごとの線量累計を5mSv以下に抑える追加の管理」が必要であることを意味します。これは女性の被ばく記録管理の頻度・精度の向上につながります。
【根拠法令】電離放射線障害防止規則 第4条第1項(実効線量限度:5年100mSv・年50mSv)・第4条第2項(妊娠可能期間中の女性の追加制限:3か月につき5mSv)・第6条第1項(妊娠中女性の腹部表面等価線量:妊娠中全期間2mSv)・第6条第2項(妊娠中女性の内部被ばく実効線量:妊娠中全期間1mSv)
【補足】妊娠可能期間中の女性の「3か月5mSv」は男女共通の制限に加えた追加制限(妊娠の有無に関係なく全員に適用)。妊娠中女性の腹部表面=2mSv・内部被ばく実効線量=1mSv(ともに妊娠中全期間)。内部被ばくは5mSvではなく1mSv。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 電離放射線障害防止規則(電離則)第4条第2項(妊娠可能期間中の女性:3か月5mSv)・第6条(妊娠中女性:腹部表面2mSv・内部被ばく実効線量1mSv)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。