衛生管理者 関係法令(有害業務) 問31:有機溶剤中毒予防規則(有機則)
有機溶剤中毒予防規則(有機則)における有機溶剤作業主任者の職務に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア有機溶剤作業主任者は、有機溶剤等健康診断の実施(医師や保健師の手配・費用負担等)を自ら行うことが主要な職務であり、作業の指揮は産業医が担う。
- イ有機溶剤作業主任者は、局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置を、1か月を超えない期間ごとに点検する職務を有する。正答
- ウ有機溶剤作業主任者の選任は、有機則の適用を受ける有機溶剤業務を行う事業場において、事業場ごとに1名以上行えばよい。
- エ有機溶剤作業主任者は、作業環境測定を自ら実施し、その結果を評価して管理区分を判定する義務がある。
- オ有機溶剤作業主任者は、作業場内で使用する有機溶剤等の種類・量・保護具の選定等について、管轄の労働基準監督署長に定期的に報告する義務がある。
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正しいのはイです。有機溶剤作業主任者の職務の一つに「局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置を1月(1か月)を超えない期間ごとに点検すること」があります(有機則第19条の2第1項第2号)。これは作業主任者が現場で換気設備の機能維持を日常的に管理する重要な職務です(事業者が行う1年以内ごとの定期自主検査とは別のもの)。
各誤りの要点: ア→健康診断の実施は事業者の義務であり、作業主任者の主要職務ではありません(産業医が担うというのも誤り)。ウ→選任単位は「作業場所(作業)ごと」であり「事業場ごとに1名」では不十分な場合があります。エ→作業環境測定の実施・評価は作業環境測定士・事業者が行うものであり、作業主任者の職務ではありません。オ→労働基準監督署長への定期報告義務は作業主任者の職務に規定されていません。
有機溶剤作業主任者の主な職務(有機則第19条の2):
| 職務番号 | 職務内容 |
|---|---|
| 第1号 | 作業に従事する労働者が有機溶剤等により汚染され、またはこれを吸入しないよう作業の方法を決定し、労働者を指揮すること |
| 第2号 | 局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置を1月を超えない期間ごとに点検すること |
| 第3号 | 保護具の使用状況を監視すること |
| 第4号 | タンクの内部において有機溶剤業務に労働者が従事するときは、第26条各号(一部を除く)に定める措置が講じられていることを確認すること |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 健康診断の実施は事業者の義務(有機則第29条)。作業主任者の主要職務は「作業の指揮・換気設備の点検・保護具の使用状況の監視・タンク内作業の措置確認」であり、健康診断の手配・費用負担は職務に含まれません。産業医が「作業の指揮を担う」という記述も誤りです。
- イ(正): 有機則第19条の2第1項第2号の通り、局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置を1月を超えない期間ごとに点検することは作業主任者の法定職務です。この点検は事業者が行う1年以内ごとの定期自主検査(有機則第20条)とは別個のものです。
- ウ(誤): 作業主任者の選任は「業務を行う作業ごと」に行うことが基本であり、複数の作業場所で有機溶剤業務を行う場合は各作業場所への選任が必要です(事業場全体に1名だけで足りるわけではない)。
- エ(誤): 作業環境測定の実施は作業環境測定士(第1種)または測定機関が行い、その結果の評価・管理区分の判定も事業者が行う事項です。これらは有機溶剤作業主任者の職務(有機則第19条の2)には含まれていません。
- オ(誤): 有機則上、作業主任者が労働基準監督署長に「定期的に」報告する義務は規定されていません(一定の届出・報告義務は事業者が担います)。
【理論的背景】
有機溶剤作業主任者制度の目的は「有機溶剤業務の現場において、有機溶剤中毒等の健康障害を防止するための具体的な作業管理を、専門的知識を持つ者が直接担う」ことです。事業者が健康診断・作業環境測定等の「システム的な管理」を行う一方で、作業主任者は現場での「作業の直接指揮・設備の状態確認・保護具の管理」という実務的な管理を担います。
換気設備の点検が作業主任者の職務である理由:
局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置は、有機溶剤蒸気の発散を制御する中核的な設備です。これらは経年劣化・フィルター目詰まり・ダクト腐食等で性能が低下するため、現場管理者である作業主任者が「1月を超えない期間ごとに点検」して機能維持を確認する義務があります(有機則第19条の2第1項第2号)。これは事業者が行う「1年以内ごとの定期自主検査(有機則第20条)」とは別個の、より頻度の高い日常的点検です。両者を混同しないことが重要です。
作業主任者の選任単位の考え方:
有機則の作業主任者は「有機則が適用される作業場において」選任されます(安衛令第6条・有機則第19条)。同一の事業場内に複数の独立した有機溶剤作業場がある場合、各作業場に対して作業主任者を選任する必要があります。1人の作業主任者が複数の作業場を兼任できる場合もありますが、それは「物理的に同時に指揮できる範囲内」に限られます。「事業場に1名」という解釈は、広大な工場での全有機溶剤作業を1名で管理することを認めるものではありません。
【実務・条文構造】
有機溶剤作業主任者の職務詳細(有機則第19条の2):
第1号:作業の方法の決定・労働者の指揮:
- 「作業の方法を決定し労働者を指揮する」→ 作業手順書の作成・朝礼での安全指示・危険作業時の直接指揮等
- 「有機溶剤等により汚染されまたは吸入しないよう」→ 吸入防止のための換気確認・保護具着用指導
第2号:換気設備の点検(1月を超えない期間ごと):
- 局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置を1月を超えない期間ごとに点検する
- 事業者が行う1年以内ごとの定期自主検査(有機則第20条)とは別個の、より頻度の高い日常的な点検義務
第3号:保護具の使用状況の監視:
- 労働者が保護具(防毒マスク・送気マスク・保護手袋等)を正しく使用しているかを現場で監視
第4号:タンク内部での業務における措置の確認:
- タンクの内部において有機溶剤業務に労働者が従事するときは、第26条各号(一部を除く)に定める措置(換気・退避用具・監視人の配置等)が講じられていることを確認する
【試験での位置づけ】
有機溶剤作業主任者の職務問題では「①作業の方法の決定・指揮②換気設備を1月を超えない期間ごとに点検③保護具の使用状況の監視④タンク内部作業での措置の確認」の4つの職務が頻出です。アのような「健康診断の実施が主要職務」という誤りや、エのような「作業環境測定の実施・評価が職務」という誤りは、作業主任者の「現場管理者」としての役割と、事業者・産業医・作業環境測定士が担う「システム的管理」の役割を混同させる典型的な引っかけです。特に「換気設備の点検は1月を超えない期間ごと(作業主任者の職務)」と「定期自主検査は1年以内ごと(事業者の義務)」の頻度の違いは頻出です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 有機溶剤等健康診断の実施は「事業者の義務(有機則第29条)」であり、産業医が医学的な判断を行い、費用負担・手配は事業者が行います。作業主任者が健康診断の手配・費用負担をすることは法令上の職務ではありません。作業主任者と産業医・衛生管理者・事業者の役割分担を正確に理解することが重要です。
- イ: 換気設備の点検頻度には2種類あり混同しやすいので注意が必要です。①作業主任者による点検=「1月を超えない期間ごと」(有機則第19条の2第1項第2号)、②事業者による定期自主検査=「1年以内ごとに1回」(有機則第20条)。本選択肢のイは①の作業主任者の職務(1か月を超えない期間ごとの点検)を正しく述べており、正答です。
- ウ: 大工場では一つの建屋内に複数の有機溶剤使用作業場がある場合があります。この場合に「工場全体に1名の作業主任者で足りる」と解釈すると、遠距離・同時並行の作業場への指揮が物理的に困難になります。作業主任者は「現場の状況を直接把握して指揮する」ことが職務の核心であり、物理的に指揮できる範囲が選任の実質的な基準となります。
- エ: 作業環境測定は、有機溶剤(第1種・第2種)を取り扱う屋内作業場について事業者が6か月以内ごとに1回実施する義務がありますが(有機則第28条)、その実施は第1種作業環境測定士または作業環境測定機関が行い、結果の評価・管理区分の判定も事業者の責任で行います。これらは有機溶剤作業主任者の職務(有機則第19条の2に列挙された4項目)には含まれません。作業主任者は「現場での作業指揮・設備点検・保護具監視・タンク内措置確認」を担う現場管理者であり、測定・評価という専門的・システム的業務とは役割が異なります。
- オ: 有機溶剤業務の届出・報告義務は事業者が担い、主な届出先は所轄の労働基準監督署長です。例えば設備の設置届(有機則の一部の設備)・作業環境測定結果の報告等は事業者が行います。作業主任者は内部管理者としての役割であり、行政への定期報告は担いません。
【根拠法令】有機溶剤中毒予防規則 第19条の2(有機溶剤作業主任者の職務:①作業の方法の決定・労働者の指揮②局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置を1月を超えない期間ごとに点検③保護具の使用状況の監視④タンク内部での業務における第26条の措置の確認)・第19条(作業主任者の選任)・第20条(事業者による定期自主検査:1年以内ごと)
【補足】有機溶剤作業主任者の主な職務は「作業の指揮・換気設備を1月を超えない期間ごとに点検・保護具の使用状況の監視・タンク内作業の措置確認」。換気設備点検(作業主任者・1月を超えない期間ごと)と定期自主検査(事業者・1年以内ごと)は別物。健康診断の実施・作業環境測定の実施評価は事業者等の役割(作業主任者の職務ではない)。選任は作業場ごとに必要(事業場に1名では不十分な場合がある)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 有機溶剤中毒予防規則(有機則)第19条の2(有機溶剤作業主任者の職務:①作業の方法の決定・労働者の指揮②局所排気装置・プッシュプル型換気装置・全体換気装置を1月を超えない期間ごとに点検③保護具の使用状況の監視④タンク内部での業務における第26条の措置の確認)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。