関係法令(有害業務)33第一種電離放射線障害防止規則(電離則)

衛生管理者 関係法令(有害業務) 問33:電離放射線障害防止規則(電離則)

電離放射線障害防止規則(電離則)における放射線業務従事者の線量限度に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 放射線業務従事者の実効線量限度は、5年間につき100ミリシーベルト、かつ1年間につき50ミリシーベルトを超えてはならないが、この「5年間」の起算日は事業者が任意に設定できる。
  • 放射線業務従事者の眼の水晶体に受ける等価線量の限度は、令和3年(2021年)の改正前と改正後を通じて、1年間につき150ミリシーベルトとされている。
  • 放射線業務従事者の皮膚に受ける等価線量の限度は、1年間につき500ミリシーベルトである。正答
  • 妊娠と診断された女性の放射線業務従事者の腹部表面に受ける等価線量の限度は、妊娠が診断された日から出産までの間につき10ミリシーベルトとされている。
  • 放射線業務従事者の実効線量限度として定められた「1年間につき50ミリシーベルト」は、緊急作業(事故等の緊急時)においても適用され、緊急作業中でも上限を超えてはならない。
正答:放射線業務従事者の皮膚に受ける等価線量の限度は、1年間につき500ミリシーベルトである。

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正しいのはウです。放射線業務従事者の皮膚に受ける等価線量の限度は、1年間につき500ミリシーベルトです(電離則第6条)。これは皮膚の線量限度として現行規則に明確に定められています。

各誤りの要点: ア→5年間の起算日は任意ではなく、規則で定められた起算点があります(事業者が恣意的に設定できるものではありません)。イ→水晶体の限度は令和3年(2021年)改正により150mSv/年から5年100mSv・年50mSvへ厳格化されました(改正後は150mSvではありません)。エ→妊娠中の女性の腹部表面の等価線量限度は10mSvではなく2ミリシーベルト(妊娠と知った時から出産までの間・電離則第6条第1項)です。オ→緊急作業時には特例線量限度(通常の上限を超える)が認められており、通常の50mSv/年は緊急作業には適用されません。

標準試験対策の基準レベル

電離則の主な線量限度(現行規則・令和3年改正後):

| 対象 | 線量の種類 | 限度 | 根拠条文 |

|---|---|---|---|

| 放射線業務従事者(一般) | 実効線量 | 5年100mSv・1年50mSv | 電離則第4条 |

| 放射線業務従事者(一般) | 眼の水晶体(等価線量) | 5年100mSv・1年50mSv | 電離則第5条(令和3年改正) |

| 放射線業務従事者(一般) | 皮膚(等価線量) | 1年500mSv | 電離則第5条 |

| 妊娠中の女性 | 腹部表面(等価線量) | 妊娠期間中2mSv | 電離則第6条第1項 |

| 妊娠中の女性 | 内部被ばく(実効線量) | 妊娠期間中1mSv | 電離則第6条第2項 |

| 妊娠可能期間中の女性 | 実効線量 | 3か月5mSv | 電離則第4条第2項 |

| 緊急作業従事者 | 実効線量(特例) | 100mSv(または250mSv) | 電離則第7条 |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 5年間の起算点は「平成13年4月1日以降において最初に放射線業務従事者となった日」を基準として厚生労働省が定めた方法で計算します。事業者が任意の日を起算日に設定することはできません。
  • イ(誤): 眼の水晶体の等価線量限度は令和3年(2021年)4月1日施行の改正で「1年150mSv」から「5年100mSv・1年50mSv」へ厳格化されました。改正前の150mSvを現行として記述することは誤りです。
  • ウ(正): 皮膚の等価線量限度は1年間につき500mSvです(電離則第5条)。実効線量(1年50mSv)と異なる数値であることを確認してください。
  • エ(誤): 妊娠中の女性の腹部表面の等価線量限度は「妊娠と知った時から出産までの間につき2ミリシーベルト」です(電離則第6条第1項・10mSvでも5mSvでもない)。なお内部被ばくによる実効線量は同期間につき1mSvです(同条第2項)。
  • オ(誤): 緊急作業においては電離則第7条の特例が適用され、通常の実効線量限度(1年50mSv)を超えた作業が認められる場合があります(緊急作業の実効線量特例上限は100mSv・一部状況では250mSv)。
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【理論的背景】

電離放射線の健康影響には「確定的影響」と「確率的影響」の2種類があります。確定的影響(白内障・皮膚紅斑・不妊等)はしきい線量を超えた場合に確実に発生し、線量が高いほど重症化します。確率的影響(がん・遺伝的影響)はしきい線量がなく、線量に比例してリスクが増加します。線量限度は主に確率的影響のリスクを社会的に許容可能な水準に抑制し、さらに確定的影響のしきい線量を下回ることを目的として設定されています。

令和3年(2021年)の眼の水晶体線量限度改正は、国際放射線防護委員会(ICRP)の2011年声明(Publication 118)の勧告を反映したものです。医療・産業分野の放射線業務従事者において、白内障発症の閾値線量が「500mSv」という従来の推定よりも低い「500mSv未満」であることが複数の疫学研究から示唆され、ICRPが等価線量限度の引き下げ(5年100mSv・1年50mSvへ)を勧告しました。日本もこれを受けて電離則第5条を改正しました。この改正は、特に透視検査(インターベンショナルラジオロジー)を実施する医師・診療放射線技師への影響が大きく、防護眼鏡の着用義務も強化されました。

【実務・条文構造】

電離則の線量限度体系の詳細:

実効線量限度(電離則第4条):

  • 「実効線量」とは全身の組織・臓器の等価線量を組織加重係数で重み付けして合算した指標で、がんリスクを統一的に評価する指標です
  • 5年間100mSv(かつ1年間50mSv)という二重の制限が設けられており、5年の最後の1年に集中して高線量被ばくすることを防ぐ設計です

眼の水晶体(電離則第5条・令和3年改正後):

  • 改正前(〜2021年3月): 1年150mSv
  • 改正後(2021年4月〜): 5年100mSv・1年50mSv
  • 白内障は確定的影響であり、しきい線量を下回ることが重要。改正により職業被ばく管理が厳格化されています
  • 被ばく測定: 眼に相当する部位(頭部・頸部等)に線量計を装着して測定

皮膚(電離則第6条):

  • 1年500mSvは実効線量(50mSv)の10倍の限度です。皮膚の局所確定的影響(紅斑・潰瘍)のしきい線量が比較的高いため、高い限度値が設定されています
  • 皮膚測定は手・足等の体表面(放射線が最も強く当たる部位)に線量計を装着

妊娠中の女性の特別保護(電離則第6条):

  • 腹部表面の等価線量: 妊娠と知った時〜出産の期間中に2mSv以下(胎児への被ばくを最小化)
  • 内部被ばく: 妊娠中の女性は実効線量として1mSv以下に管理(実質的に放射性物質の摂取を極めて厳しく制限)
  • 妊娠中の女性を故意に放射線業務に従事させることは原則として避けるべきであり、配置転換・業務変更が実務上の対応となります

緊急作業時の特例(電離則第7条):

  • 原子炉事故等の緊急時には、通常の線量限度を超えた被ばくがやむを得ない場合があります
  • 緊急作業従事者の特例上限: 実効線量100mSv(さらに特殊な緊急時は250mSvまで特例が認められる場合がある)
  • 緊急作業実施後は特別の健康診断・被ばく記録の作成が義務付けられています

【試験での位置づけ】

電離則の線量限度問題は「実効線量=5年100mSv・1年50mSv」「皮膚=1年500mSv」「水晶体=令和3年改正で5年100mSv・1年50mSvに厳格化(旧150mSvは過去の値)」「妊娠中の女性の腹部表面=2mSv・内部被ばく実効線量=1mSv(10mSvでも5mSvでもない)」の4点が頻出です。イのような「改正後も150mSv」という誤りは改正年度を正確に把握していないと判断できない問題です。また皮膚(500mSv)と実効線量(50mSv)の10倍の差、妊娠中の腹部表面(2mSv)の厳しい制限は確実に数値を暗記する必要があります。妊娠可能期間中の女性の3か月5mSv(実効線量)と、妊娠中の女性の腹部表面2mSv(等価線量)を混同しないことが重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「5年間の計算方法」は実務・試験の両面で重要です。平成13年4月1日以降、厚生労働省通達に基づき5年を1単位として管理区間を設定します。中途採用・離職・複数事業場勤務等の場合の累積計算方法は複雑であり、事業者は被ばく線量管理台帳(電子化可)で厳密に管理する義務があります。
  • イ: 眼の水晶体改正(令和3年施行)は国内の医療放射線業務に大きな影響を与えました。具体的には心臓カテーテル検査・IVR(インターベンショナルラジオロジー)を実施する循環器内科・放射線科の医師・技師は、防護眼鏡の常時着用と線量モニタリングが事実上必須になりました。改正前は150mSvという比較的高い限度であったため管理が緩くなりがちでしたが、改正後は50mSv/年という引き締まった管理が求められています。
  • ウ: 皮膚の500mSvという限度は高く見えますが、これは「局所的な皮膚への被ばく」の確定的影響(皮膚紅斑・脱毛)のしきい線量が数Sv程度であることから設定された値です。全身への実効線量(50mSv)とは概念が異なり、皮膚の局所線量が500mSvを超えなければ確定的影響の発生リスクは低いとされています。
  • エ: 妊娠中の女性の腹部表面2mSvという限度は「胎児が被ばくする線量を管理するための代理指標」です。胎児の放射線感受性は成人より高く(特に器官形成期の被ばくは奇形・流産リスクがある)、また妊娠中の免疫機能変化も考慮されます。腹部表面2mSvは「胎児の実効線量が1mSv以下に相当する」という推計に基づく設定であり、内部被ばくについても実効線量1mSv以下に管理することが併せて求められます。
  • オ: 緊急作業の特例は東日本大震災・福島第一原子力発電所事故(2011年)の対応でも適用されました(当時の緊急作業特例は250mSvまで引き上げ)。緊急作業従事者の健康管理(長期フォローアップ・がん登録等)はその後も継続されており、緊急時の被ばく管理の在り方は現在進行形で研究・議論されています。

【根拠法令】電離放射線障害防止規則 第4条第1項(実効線量限度:5年100mSv・1年50mSv)・第4条第2項(妊娠可能期間中の女性:3か月5mSv)・第5条(眼の水晶体:令和3年改正後5年100mSv・1年50mSv/皮膚:1年500mSv)・第6条第1項(妊娠中の女性の腹部表面:妊娠期間中2mSv)・第6条第2項(妊娠中の女性の内部被ばく実効線量:妊娠期間中1mSv)・第7条(緊急作業:特例線量限度が適用・通常の50mSvを超える作業が認められる)

【補足】水晶体=令和3年改正で150mSv/年→5年100mSv・1年50mSvへ厳格化(旧値を現行として記述するのは誤り)。皮膚=1年500mSv。妊娠中の腹部表面=妊娠期間中2mSv(10mSvでも5mSvでもない)・内部被ばく実効線量=1mSv。妊娠可能期間中の女性=3か月5mSv(実効線量)。緊急作業時は特例線量限度が適用。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 電離放射線障害防止規則(電離則)第4条(実効線量限度:5年100mSv・年50mSv)・第5条(眼の水晶体:5年100mSv・年50mSv ※令和3年改正後)・第5条(皮膚:年500mSv)・第6条(妊娠中の女性:腹部表面の等価線量2mSv・内部被ばく実効線量1mSv)・第7条(緊急作業:特例線量限度が適用される)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

関連論点

電離則・実効線量限度の数値体系と水晶体線量限度頻出度A

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科目別に解いて、衛生管理者に合格

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