衛生管理者 関係法令(有害業務) 問42:労働安全衛生法令(安衛則第36条・特別教育規則)
安衛則第36条に規定する特別教育を必要とする業務に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アエックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務は、特別教育が必要な業務に該当し、当該業務に就かせる前に特別教育を行わなければならない。
- イチェーンソーを用いて行う造材の業務は、振動障害や切創のリスクがあることから特別教育が必要な業務に該当する。
- ウ研削といしの取替えまたは取替え時の試運転の業務に就かせる事業者は、当該業務についての特別教育を実施する義務があるが、この特別教育は都道府県労働局長の登録を受けた機関が実施しなければならない。正答
- エ廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務は、ダイオキシン類等の有害物質への曝露リスクがあり、特別教育が必要な業務に該当する。
- オ石綿障害予防規則第4条に規定する石綿等の除去等の作業に係る業務は、特別教育が必要な業務に該当する。
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誤りはウです。特別教育は事業者自らが実施できるものであり、「都道府県労働局長の登録を受けた機関が実施しなければならない」という義務はありません(登録機関への委託は任意です)。
技能講習(例: 作業主任者技能講習)は登録教育機関での受講が必要ですが、特別教育は事業者が自社で実施することができます。学科と実技の両方を実施し、記録を3年間保存する義務があります。
各選択肢のア・イ・エ・オはいずれも安衛則第36条の特別教育必要業務として列挙されており、正しい記述です。特別教育と技能講習の「実施主体の違い」は試験で頻出の区別ポイントです。
特別教育と技能講習の実施主体の違い(最重要):
| 区分 | 実施主体 | 根拠 |
|---|---|---|
| 特別教育 | 事業者(自社実施可・登録機関委託も可) | 安衛法第59条第3項 |
| 技能講習 | 登録教育機関(都道府県労働局長の登録が必要) | 安衛法第61条・第83条 |
安衛則第36条に規定する特別教育が必要な主要業務(有害業務関連):
| 業務 | 根拠条号 |
|---|---|
| エックス線装置・ガンマ線照射装置を用いた透過写真撮影 | 第36条第28号(両装置とも同一号) |
| 高圧室内作業 | 第36条第24号 |
| 酸素欠乏危険場所での作業(第1種・第2種とも) | 第36条第26号 |
| チェーンソーを用いた立木の伐木・造材等の作業 | 第36条第8号 |
| 石綿等の除去等作業 | 第36条第37号(石綿則第4条第1項各号の作業) |
| 廃棄物焼却施設でのばいじん・焼却灰取扱業務 | 第36条第34号 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): エックス線装置を用いた透過写真撮影は電離放射線への曝露リスクがあり、特別教育の対象です(安衛則第36条第28号。ガンマ線照射装置と同一号)。
- イ(正): チェーンソーを用いた業務は振動工具による白ろう病・切創リスクがあり、特別教育の対象です(安衛則第36条第8号)。
- ウ(誤): 特別教育は事業者が自社で実施できます。「登録機関でなければならない」は誤り。
- エ(正): 廃棄物焼却施設でのばいじん・焼却灰取扱業務はダイオキシン類曝露リスクがあり、安衛則第36条第34号による特別教育対象です。
- オ(正): 石綿障害予防規則第4条第1項各号に基づく石綿除去等作業は安衛則第36条第37号により特別教育対象です。
【理論的背景】
特別教育制度(安衛法第59条第3項)は、危険または有害業務に就く労働者に対し、事業者が就業前に安全・衛生に関する知識・技能を付与することを義務付けた制度です。技能講習(登録教育機関で修了証が発行される・より高度な知識・技能が要求される)とは異なり、事業者が社内で実施可能であるため、コストと時間のかかる技能講習よりも広範な業務に適用されています。
特別教育制度の設計思想:
- 就業前教育による事故・疾病の一次予防
- 事業者主体の実施(中小事業者でも実施可能な設計)
- 記録(修了者名・科目・時間・実施年月日)の3年間保存義務
- 内容の国による最低基準規定(科目・時間数の下限)
安衛法における教育義務の体系:
1. 一般安全衛生教育(第59条第1項): 雇入れ時・配置転換時(全労働者対象)
2. 危険・有害業務特別教育(第59条第3項): 特定業務就業前
3. 職長等安全衛生教育(第60条): 製造業等の職長
4. 技能講習(第61条): 就業制限業務の資格取得
【実務・条文構造】
安衛則第36条が規定する特別教育必要業務の主要カテゴリ(有害業務に関するもの):
電離放射線関連(第28号):
- エックス線装置・ガンマ線照射装置を用いた透過写真撮影(工業用非破壊検査等。両装置とも安衛則第36条第28号の同一号)
- 備考: 作業主任者選任が必要なガンマ線透過写真撮影とは別に特別教育も必要
酸素欠乏危険場所関連(第26号):
- 酸素欠乏危険場所(第1種: 酸素欠乏のみ)での作業
- 酸素欠乏・硫化水素危険場所(第2種: 酸欠+硫化水素)での作業
- 備考: 第1種・第2種とも安衛則第36条第26号。第2種の方が特別教育の内容が追加される(硫化水素の危険性・測定方法等)
化学物質・有害物関連:
- 廃棄物焼却施設での焼却灰・ばいじん等の取扱業務(第34号): ダイオキシン類の曝露防止
- 石綿等の除去・封じ込め・囲い込み作業(石綿則第4条第1項各号・第36条第37号): 石綿曝露防止
振動工具関連(第8号):
- チェーンソー使用業務: 白ろう病(局所振動障害)の予防
- 他の削岩機・コンクリートブレーカー等振動工具は第8号の対象
【試験での位置づけ】
特別教育の問題では「実施主体が事業者か登録機関か」が最頻出の引っかけです。特別教育は事業者自ら実施できる(登録機関は任意)のに対して、技能講習は登録教育機関が実施する(都道府県労働局長の登録が必要)という区別は確実に覚える必要があります。また「特別教育の記録は3年間保存(技能講習の修了証は有効期限なし・生涯有効)」という保存年数の違いも出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: エックス線装置を用いた透過写真撮影の特別教育内容(安全衛生特別教育規程・透過写真撮影業務特別教育規程)は「電離放射線の生体への作用・放射線障害の原因と防止方法・関係法令・実技」で構成されます。医療用のエックス線(レントゲン等)は電離則と別の規制(医療法)に服するため、この特別教育の対象は工業用非破壊検査等です。
- イ: チェーンソーによる白ろう病(振動による末梢循環障害・神経障害)は職業病認定が多い疾病です。特別教育の内容は振動障害・予防・保護具の使用等であり、振動工具の正しい使用方法の習得が中心です。
- ウ: 技能講習の場合は都道府県労働局長の登録を受けた機関(登録教育機関)が修了証を発行するため、実施主体の適格性が厳格に管理されます。一方、特別教育は事業者が任意に登録機関に委託することも可能ですが、自社実施が原則的な姿です。
- エ: 廃棄物焼却施設での焼却灰取扱業務の特別教育は、2000年以降のダイオキシン問題を契機に追加されました。ダイオキシン類は超高毒性の塩素系有機化合物であり、焼却灰・ばいじんに吸着して存在します。
- オ: 石綿除去等作業の特別教育(石綿則第4条)は、石綿の種類・性状・人体への影響・保護具の使用・作業手順等が内容です。建築物解体工事の増加とともに重要性が高まっています(2026年時点でも石綿スレートの解体工事は多数継続中)。
【根拠法令】労働安全衛生法第59条第3項(特別教育の実施義務)、労働安全衛生規則第36条(特別教育必要業務の列挙:エックス線・ガンマ線透過写真撮影=第28号/高圧室内=第24号/酸欠=第26号/チェーンソー=第8号/焼却灰・ばいじん=第34号/石綿除去等=第37号)、安全衛生特別教育規程(告示・特別教育の科目)、石綿障害予防規則第4条(石綿除去等作業の特別教育)
【補足】特別教育は「事業者が自ら実施」(登録機関委託は任意)。技能講習は「登録教育機関のみ」実施可。記録は3年間保存。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生規則第36条(特別教育が必要な業務)、安衛法第59条第3項(特別教育の実施義務は事業者)、特別教育は事業者が自ら実施できる(登録教育機関への委託は任意)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。