労働生理3消化・代謝

衛生管理者 労働生理 問3:消化・代謝

消化・吸収および代謝に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 脂質(脂肪)は小腸で消化されてモノグリセリドと脂肪酸に分解された後、小腸上皮細胞内で再合成されてカイロミクロン(乳び微粒子)となり、リンパ管(乳び管)を経て胸管から血液循環に入る。正答
  • グルコース(ブドウ糖)とアミノ酸は、小腸の上皮細胞に吸収されると、リンパ管を通じて全身に運ばれる。
  • 胆汁は膵臓で産生されて胆嚢に貯蔵され、食事の刺激によって十二指腸に分泌されて脂質の消化を助ける。
  • 基礎代謝量(BMR)は、覚醒・安静・空腹の状態で測定した最小のエネルギー消費量であり、食後すぐに測定すると食事誘発性熱産生(SDA)の影響で基礎代謝量の値が最大となる。
  • 肝臓は血液タンパク質であるアルブミンや血液凝固因子を合成するが、グリコーゲンの合成・貯蔵を行うのは肝臓ではなく膵臓であり、肝臓にはグリコーゲンを貯蔵する機能はない。
正答:脂質(脂肪)は小腸で消化されてモノグリセリドと脂肪酸に分解された後、小腸上皮細胞内で再合成されてカイロミクロン(乳び微粒子)となり、リンパ管(乳び管)を経て胸管から血液循環に入る。

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正しいのはアです。脂質(脂肪)の吸収経路は特別で、グルコース・アミノ酸が直接血液(門脈)に入るのに対し、脂質はリンパ管(乳び管)を通って最終的に鎖骨下静脈付近で血液に合流します。

各誤りの要点: イ→グルコースとアミノ酸は門脈(血液)を通じて肝臓へ(リンパ管ではない)。ウ→胆汁を産生するのは肝臓(膵臓ではない)、貯蔵するのが胆嚢。エ→食後に最大になるのは基礎代謝量ではなく食事誘発性熱産生(SDA)の効果であり、基礎代謝量は空腹安静時に測定するもの。オ→グリコーゲンの合成・貯蔵を行う中心臓器は肝臓であり「膵臓が行う・肝臓に貯蔵機能はない」は誤り(肝臓はグリコーゲンを合成・貯蔵し血糖を調節する)。

標準試験対策の基準レベル

三大栄養素の吸収経路の整理(最重要):

| 栄養素 | 吸収形態 | 吸収経路 |

|---|---|---|

| 糖質 | グルコース・ガラクトース・フルクトース | 小腸毛細血管→門脈→肝臓 |

| タンパク質 | アミノ酸・ジ/トリペプチド | 小腸毛細血管→門脈→肝臓 |

| 脂質 | モノグリセリド+脂肪酸→カイロミクロン | 乳び管(リンパ管)→胸管→鎖骨下静脈→体循環 |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 脂質吸収の正確な説明。胆汁酸による乳化→リパーゼによる加水分解→上皮細胞でトリグリセリド再合成→カイロミクロン形成→リンパ管(乳び管)→胸管→血液循環という正しい経路。
  • イ(誤): グルコースとアミノ酸は小腸毛細血管→門脈→肝臓へと運ばれます。リンパ管ではありません(脂質の吸収経路と混同させる引っかけ)。
  • ウ(誤): 胆汁を「産生」するのは肝臓です。胆嚢は「貯蔵」するだけです。「膵臓で産生」は誤りです。膵臓は膵液(消化酵素+炭酸水素イオン)を産生します。
  • エ(誤): 基礎代謝量は「覚醒・安静・空腹の最小エネルギー消費量」であり、食後には食事誘発性熱産生(SDA)が加わって安静時代謝量が増加します。基礎代謝量は食後に「最大になる」ものではなく、「測定できない(条件を満たさない)」状態になります。食後すぐが「最大値」という記述が誤りです。
  • オ(誤): グリコーゲンの合成・貯蔵を行う中心臓器は肝臓です(筋肉も貯蔵するが血糖調節に放出できるのは肝臓のみ)。膵臓はインスリン・グルカゴン等のホルモンや膵液を分泌する臓器であり、グリコーゲンの主要な貯蔵臓器ではありません。「グリコーゲンの合成・貯蔵は膵臓が行い、肝臓には貯蔵機能がない」は誤りです。なおアルブミン・凝固因子を合成するのが肝臓である点は正しい記述です。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

消化・吸収は単純な「食べ物を小さく分解して吸収する」プロセスではなく、栄養素ごとに異なる経路と精巧な調節機構があります。脂質の吸収経路がリンパ管を通る理由は、「大型のカイロミクロン粒子が毛細血管の内皮細胞間隙を通過できないため、より大きい間隙を持つ毛細リンパ管(乳び管)を利用する」という構造的な理由です。

消化管ホルモンの調節機能(知識の深掘り):

  • セクレチン(十二指腸壁産生): 膵液の重炭酸塩分泌促進・胃液分泌抑制
  • コレシストキニン(CCK): 胆嚢収縮→胆汁分泌促進・膵酵素分泌促進→脂肪・タンパク質の消化に関与
  • ガストリン(胃前庭部産生): 胃酸分泌促進

【実務・条文構造】

肝臓の機能の体系整理(試験で問われる範囲):

代謝機能:

  • 糖代謝: グリコーゲン合成・貯蔵・グルコース新生(血糖調節の中心)
  • 脂質代謝: 胆汁酸合成・リポタンパク合成(VLDL等)・脂肪酸のβ酸化
  • タンパク質代謝: アミノ酸の脱アミノ(アンモニア産生→尿素合成)・血漿タンパク質合成(アルブミン・凝固因子Ⅰ/Ⅱ/V/VII/IX/X等)

解毒・排泄機能:

  • 薬物・アルコール・アンモニアの解毒(チトクローム P450系酵素群)
  • ビリルビンのグルクロン酸抱合→胆汁へ排泄(ビリルビン代謝異常→黄疸)
  • アンモニア→尿素合成(オルニチン回路)

分泌機能:

  • 胆汁の産生(脂質の消化補助・ビリルビン排泄)→胆嚢に貯蔵→食事で十二指腸へ分泌

貯蔵機能:

  • グリコーゲン・ビタミン(A・B₁₂・D・K・鉄など)を貯蔵

基礎代謝量(BMR)の正確な定義と条件:

  • 条件: 覚醒(睡眠中ではない)・安静(運動していない)・空腹(食後12時間以上経過・SDA影響なし)・適温(体温調節のための余分な代謝なし)
  • 測定単位: kcal/日 または kJ/日
  • 基礎代謝に影響する因子: 体表面積(体重よりも重要)・年齢(加齢で低下)・性別(女性が低い)・甲状腺ホルモン(上昇で高まる)・体温(1℃上昇で約13%増加)

食事誘発性熱産生(SDA: Specific Dynamic Action):

  • 食事摂取後のエネルギー消費増加(消化・吸収・代謝に伴う熱産生)
  • タンパク質で最大(摂取エネルギーの約30%)・脂質で最小(約4%)・糖質は中間(約6%)
  • 食後の安静時代謝量 = BMR + SDA(食後しばらくは代謝が高い)

【試験での位置づけ】

消化・代謝問題で最頻出なのは「脂質の吸収経路(リンパ管→胸管)vsグルコース・アミノ酸(門脈)」「胆汁産生=肝臓・貯蔵=胆嚢」「基礎代謝量の測定条件(空腹・安静・覚醒)」の3点です。イのようにグルコース・アミノ酸の吸収経路をリンパ管とする誤り、ウのように胆汁の産生部位を膵臓と誤る問題は最頻出の引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: カイロミクロンがリンパ管→胸管→左鎖骨下静脈→体循環に入った後、リポプロテインリパーゼによって末梢組織でトリグリセリドが分解されます。肝臓では再合成されてVLDL(超低密度リポタンパク)として再び血液中に放出され、LDL(悪玉コレステロール)の前駆体となります。脂質代謝の全体像は生活習慣病(脂質異常症)の理解に直結します。
  • イ: 門脈は消化管(胃・小腸・大腸)・膵臓・脾臓からの血液を集めて肝臓に運ぶ静脈です。食後は血糖値が上昇した血液が門脈を通じて肝臓に届き、肝臓がグリコーゲンとして貯蔵する(血糖値を正常化する)という調節が行われます。
  • ウ: 膵臓は外分泌(消化酵素: アミラーゼ・リパーゼ・トリプシン等を十二指腸に分泌)と内分泌(インスリン・グルカゴンを血液に分泌)の両機能を持つ特殊な臓器です。「膵臓が胆汁を産生する」という誤りは、膵臓が多くの消化液を産生するという印象から来ます。
  • エ: 基礎代謝量と安静時代謝量(RMR)の違い: 安静時代謝量は基礎代謝量に食後のSDAを加えた値であり、日常生活でのエネルギー消費量の下限に相当します。食事誘発性熱産生の存在により、食後の代謝率は安静時よりも高くなります。これが「食後すぐに激しい運動をすると消化が悪くなる」原因の一つでもあります。
  • オ: 肝臓はグリコーゲンを合成・貯蔵し、血糖が低下するとグリコーゲンを分解してグルコースを血中に放出して血糖を維持する、血糖調節の中心臓器です(筋肉もグリコーゲンを貯蔵しますが、グルコース-6-ホスファターゼを欠くため血中へは放出できません)。膵臓はグリコーゲンの貯蔵臓器ではなく、インスリン・グルカゴン等のホルモンと膵液を分泌する臓器です。肝機能検査(AST・ALT・γ-GTP・アルブミン・ビリルビン・プロトロンビン時間等)は肝臓の各機能を反映し、ALT(GPT)・AST(GOT)は肝細胞障害の指標、γ-GTPはアルコール性・薬物性肝障害の感度が高い指標です。

【根拠】医学的事実(確立した生理学)。脂質吸収のリンパ管経路・糖質・タンパク質の門脈経路・胆汁産生(肝臓)と貯蔵(胆嚢)の区別は生化学・消化生理学の基本原則。

【補足】グルコース・アミノ酸→門脈(血液)、脂質(カイロミクロン)→乳び管(リンパ管)→胸管。胆汁は「肝臓が産生・胆嚢が貯蔵」(膵臓は産生しない)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学)。脂質の吸収経路(リンパ管→胸管)は生理学の確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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