行政法105国賠・損失補償・地方自治法・総合確認

行政書士 行政法 問105:国賠・損失補償・地方自治法・総合確認

国家賠償法・損失補償・地方自治法に関する次のア〜オの記述について、**正しいものの組合せ**として最も適切なものはどれか。 **ア.** 国家賠償法2条は営造物の設置・管理の瑕疵による損害賠償を無過失責任として定めており、管理者が相当の注意を尽くしたことを証明しても免責されない。 **イ.** 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求において、加害行為を行った公務員個人にも故意・重過失がある場合は、被害者は国または公共団体とともに公務員個人に対しても損害賠償を直接請求することができる。 **ウ.** 憲法29条3項の「正当な補償」について、農地改革における買収補償に関する最高裁判例は相当補償説(相当な補償で足りる)をとったが、現在の土地収用実務では完全補償(時価相当額)が原則とされている。 **エ.** 地方自治法上の住民訴訟(第4号訴訟)の現行法における構造は、住民が地方公共団体に代位して加害者に直接損害賠償を求める「代位訴訟」である。 **オ.** 地方公共団体の条例で設けることができる罰則の上限は、懲役または禁錮2年以下・罰金100万円以下・過料5万円以下等とされており(地方自治法14条3項)、個別法の授権なしに条例でこの範囲内の罰則を設けることができる。

  • 1ア・ウ・オ正答
  • 2ア・イ・エ
  • 3イ・ウ・エ
  • 4ウ・エ・オ
  • 5ア・ウ・エ
正答:1ア・ウ・オ

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正答は1(ア・ウ・オ)です。ア(正しい): 国賠法2条は無過失責任であり、管理者が注意を尽くしたことの証明でも免責されません。ウ(正しい): 農地改革補償事件(最大判昭28.12.23)は相当補償説、現在の土地収用実務は完全補償が原則という二重の事実は正確です。オ(正しい): 条例罰則の上限(懲役・禁錮2年以下・罰金100万円以下・過料5万円以下)と個別授権不要という内容は正確です(地自法14条3項)。イ(誤り): 国賠法上、被害者は加害公務員個人に直接損害賠償を請求することはできません(最判昭30.4.19)。「故意・重過失があっても」被害者への直接責任は国・公共団体が負います。エ(誤り): 現行法(平成14年改正後)の4号訴訟は「代位訴訟」ではなく、「長に対して職員等への損害賠償請求を行うよう求める訴訟(長への義務付け型)」です。

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各記述の正誤を正確に判定します。ア(正しい): 国賠法2条の無過失責任の正確な説明。管理者の注意・過失の有無にかかわらず「瑕疵(通常有すべき安全性の欠如)」があれば責任が成立します(高知落石事件・最判昭45.8.20)。これが1条(過失責任)との根本的な違いです。イ(誤り): 被害者は加害公務員個人への直接請求はできません(最判昭30.4.19)。1条2項の「故意または重過失」要件は求償(国・公共団体→公務員)の要件であり、被害者への直接請求の要件ではありません。被害者は常に国・公共団体に対してのみ請求できます。ウ(正しい): 農地改革補償事件(最大判昭28.12.23)の相当補償説は農地改革という特殊な文脈での判断。通常の土地収用では完全補償(時価相当額)が実務上の原則(最判昭48.10.18)。この二重の正確な理解を正しく表現しています。エ(誤り): 現行法(平成14年改正後)の4号訴訟は代位訴訟ではありません。代位訴訟(住民が地方公共団体に代位して直接加害者に請求)は旧法の内容です。現行法では「住民が長に対して、当該職員等への損害賠償請求等を行うよう求める」訴訟(長への義務付け型)です(地自法242条の2第1項4号)。オ(正しい): 地自法14条3項の条例罰則の上限(懲役・禁錮2年以下・罰金100万円以下・過料5万円以下等)と個別授権不要(同条3項が一般的授権規定)の正確な説明です。

以上より、正しいのはア・ウ・オ(選択肢1)です。

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【理論的背景】

本問は国賠法(1条・2条)・損失補償(憲法29条3項)・地方自治法(条例罰則・住民訴訟4号)という行政法各論の主要論点を横断的に確認する総合問題です。各論点の正誤判断において「典型的な誤り(引っかけ)」を見抜く能力が問われています。イは「故意・重過失があれば公務員個人への直接請求が可能」という最頻出の引っかけ、エは「4号訴訟の代位訴訟という旧法的理解」という改正論点の引っかけ、の2つが誤り選択肢として組み込まれています。

【実務・条文構造】

各論点の確認。ア(国賠法2条の無過失責任): 「過失」要件を課さない無過失責任として、1条(過失責任)との対比で理解する。管理者が注意を尽くした(過失なし)ことの立証は2条の免責要件にならない。ウ(損失補償の「正当な補償」): 農地改革(相当補償説・最大判昭28.12.23)と通常収用(完全補償・最判昭48.10.18)という文脈による使い分け。両者を混同した誤選択肢が頻出。エ(4号訴訟の改正): 旧法(代位訴訟)→現行法(長への義務付け型)という2002年改正を正確に把握する。改正前後の対比問題として毎年出題される定番論点。オ(条例罰則の上限): 数字(2年・100万円・5万円)と一般的授権(個別授権不要)の組み合わせ。数字を覚えることが基本。

【試験での位置づけ】

本問のような「組合せ型」の問題は行政書士試験の択一問題の典型的出題形式です。5つの記述の正誤を全て正確に判断する必要があり、「確実に正しいもの(ア・ウ・オ)」と「確実に誤りのもの(イ・エ)」を仕分けることが解法の基本です。一つでも誤認すると正答の組合せが変わるため、各論点の正確な理解が求められます。行政書士試験では30問前後の択一問題で行政法が問われるため、このような横断的問題の練習が効果的です。

【各選択肢(ア〜オ)の発展補足】

  • ア(正): 2条の無過失責任の核心。「管理者が注意を尽くした証明で免責」(←誤り)という理解は1条の過失責任と混同したもの。2条は客観的な「瑕疵(安全性の欠如)」があれば過失なく責任成立。
  • イ(誤): 被害者から公務員個人への直接請求は国賠法上認められない(最判昭30.4.19)。「故意・重過失」は求償(1条2項)の要件であり、被害者への直接責任の話ではない。この誤りは民法(不法行為は加害者本人に請求)と国賠法の違いから来る典型的な混同です。
  • ウ(正): 農地改革(相当補償説)と通常収用(完全補償)という判例の文脈依存性を正確に理解した記述。「農地改革の判例は相当補償説→常に相当補償で足りる」という過度な一般化が典型的な誤り(本記述はその誤りを避けている)。
  • エ(誤): 「代位訴訟(旧法)→長への義務付け型(現行法・平成14年改正)」という改正論点の典型的引っかけ。旧法の内容を現行法として出題する誤り選択肢の典型。
  • オ(正): 条例罰則の上限(2年・100万円・5万円)と一般的授権(個別法の授権不要)を正確に示した記述。数字の暗記と「一般的授権規定(個別授権不要)」の両方が正しく組み合わさっています。

【根拠条文】

国家賠償法 第1条第1項(過失責任)、国家賠償法 第1条第2項(求償・故意または重過失)、国家賠償法 第2条第1項(無過失責任)、日本国憲法 第29条第3項(正当な補償)、地方自治法 第14条第3項(条例罰則の上限)、地方自治法 第242条の2第1項第4号(住民訴訟4号・長への義務付け型)

【参照判例】

最判 昭和30年4月19日(公務員個人への直接請求不可)、高知落石事件(最判 昭和45年8月20日・2条無過失責任)、農地改革補償事件(最大判 昭和28年12月23日・相当補償説)

【補足】

「ア(2条=無過失責任・注意の証明で免責されない)+ウ(農地改革=相当補償説・通常収用=完全補償)+オ(条例罰則の上限=2年・100万円・5万円・個別授権不要)」の3点が正しい組合せ。イ(公務員個人への直接請求不可)とエ(4号訴訟=長への義務付け型・代位訴訟でない)が典型的誤りとして組み込まれた総合問題。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第1条・第2条、日本国憲法 第29条第3項、地方自治法 第14条第3項、第242条の2 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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