行政書士 行政法 問113:行政代執行・要件・手続・代執行法
行政代執行に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア行政代執行法に基づく代執行の対象となるのは、代替的作為義務(他人が代わりに履行できる義務)に限られず、義務者本人でなければ履行できない非代替的作為義務(一身専属的義務)にも及ぶ。
- イ代執行を行うためには、義務者が義務を履行しない場合において、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、かつ、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められることが必要である。
- ウ行政代執行法に基づく代執行を行う前には、文書による戒告を行わなければならないが、非常の場合または危険切迫の場合は、代執行令書による通知と執行を同時に行うことができる。
- エ代執行に要した費用は、執行庁が義務者に請求することはできず、国または地方公共団体が負担する。
- オ代執行に要した費用を義務者が納付しない場合、当該費用は国税または地方税の滞納処分の例により強制徴収することができる。正答
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
オが正しいです。行政代執行法6条は、代執行に要した費用を義務者が納付しない場合に、国税滞納処分の例により強制徴収できると規定しています。アは「非代替的作為義務にも代執行が及ぶ」としており誤りです。代執行の対象は代替的作為義務(他人が代わって履行できる義務)に限られます。イは代執行の要件についての説明であり概ね正しいですが、実際の法文(行代法2条)と比較すると、「他の手段によってその履行を確保することが困難」という要件の表現が不十分です。ウは戒告について正確ではなく(非常の場合の特則は代執行令書と執行の同時は認められるが戒告省略は原則不可)、エは費用の国・地方負担としており完全に誤りです。
代執行の要件(行代法2条): 代執行は法律(条例を含む)により課せられた代替的作為義務が不履行の場合に認められます。要件は、①義務者が義務を履行しない、②他の手段による履行確保が困難、③不履行の放置が著しく公益に反する、の3つです(アの誤り——非代替的作為義務は対象外)。
代執行の手続(行代法3条): 代執行の手続は次のとおりです。①戒告(文書)→②代執行令書による通知(相当の履行期限を定め期限内に履行しない場合)→③代執行の実施。非常の場合または危険切迫の場合は、①の戒告と②の代執行令書の通知を省略して直ちに代執行できます(ウの部分について:「戒告省略が可能」な点と「代執行令書と執行を同時に行える」という点を正確に区別すること)。
費用の請求と強制徴収(エが誤り・オが正しい根拠): 代執行に要した費用は義務者に負担させることができ(行代法5条・費用の請求)、納付しない場合は国税滞納処分の例により強制徴収できます(行代法6条・オが正しい)。費用を国や地方公共団体が負担するとするエは完全に誤りです。
費用の請求プロセス: 執行庁は代執行費用を実際に要した費用の額および納付期日を定めた納付命令書を義務者に交付し、義務者が納付しない場合に強制徴収します。
【理論的背景】
行政代執行は、行政上の義務を義務者が履行しない場合に、行政庁が自ら又は第三者に代わって義務を執行し、その費用を義務者から徴収する制度です(行政上の強制執行の一類型)。民事執行(裁判所による強制執行)と異なり、行政庁が自力で(裁判所の関与なく)強制的に義務を実現できる点が特徴です。日本では、一般的な義務履行確保制度として行政代執行法(昭和23年制定)が規定されており、法律または条例に基づく代替的作為義務の不履行に適用されます。
なお、日本では代執行以外の行政上の強制執行手段(執行罰・直接強制)の一般的な規定はなく、行政代執行のみが一般法として存在します。執行罰・直接強制は個別の法律(砂防法、出入国管理及び難民認定法等)で特別に認められている場合に限り使用できます。
【実務・条文構造】
行政代執行法の条文構造:
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 1条 | 法律の根拠がある場合に代執行 |
| 2条 | 代執行の要件(代替的作為義務の不履行・困難性・公益違反) |
| 3条 | 代執行手続(戒告→代執行令書→執行。非常時は省略可) |
| 4条 | 代執行の実施(身分証明書の携帯・提示義務) |
| 5条 | 代執行費用の納付命令 |
| 6条 | 費用の強制徴収(国税滞納処分の例) |
代執行の対象(代替的作為義務)の例:
- 違法建築物の除却命令の不履行→建物を取り壊す(代替的作為義務)
- 道路上の障害物の除去命令の不履行
- 廃棄物撤去命令の不履行
代執行の対象にならないもの(非代替的作為義務・不作為義務):
- 営業禁止命令の違反(不作為義務)
- 医師の診断行為の義務(一身専属的義務)
- 行政指導に従う義務(法的義務ではない)
【試験での位置づけ】
行政書士試験では代執行の「対象(代替的作為義務のみ)」「手続(戒告→令書→執行)」「費用(義務者負担・不払いは国税滞納処分の例で強制徴収)」の3点が頻出です。特に「非代替的義務も対象」(ア)、「費用は国が負担」(エ)という誤肢パターンは毎年のように出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。代執行の対象は代替的作為義務(他人が代わって履行できる義務)に限られる。非代替的作為義務(一身専属的なもの)・不作為義務には代執行は及ばない。
- イ: 概ね正しい内容だが、行代法2条の正確な文言(「著しく公益に反すると認められるとき」)との対比で選択肢オの方が条文に直接基づき明確に正しい。
- ウ: 不正確。非常の場合・危険切迫の場合は戒告と代執行令書の通知のいずれも省略して代執行できる(行代法3条3項)。「代執行令書による通知と執行を同時に行える」という表現は正確でない。
- エ: 誤り。代執行費用は義務者の負担。国・地方公共団体の負担とするのは完全に誤り。
- オ: 正しい(正答)。行代法6条により、費用未納付の場合は国税(または地方税)の滞納処分の例により強制徴収できる。
【根拠条文】
行政代執行法 第2条(代執行の要件:代替的作為義務の不履行・困難性・著しい公益違反)
行政代執行法 第3条(代執行手続:戒告→代執行令書→代執行。非常時等の省略)
行政代執行法 第5条(費用の納付命令)
行政代執行法 第6条(費用の強制徴収:国税滞納処分の例)
【補足】
代執行の3大ポイント:①対象=代替的作為義務のみ ②手続=戒告→令書→執行(非常時省略可) ③費用=義務者負担・不払いは国税滞納処分の例で強制徴収。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政代執行法 第2条(代執行の要件)、第3条(戒告・代執行令書)、第4条(代執行の実施)、第5条(費用の納付)、第6条(費用の徴収) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。