行政書士 行政法 問134:行政法横断・国家賠償法2条・営造物の設置管理の瑕疵
国家賠償法2条(公の営造物の設置・管理の瑕疵)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア国家賠償法2条に基づく賠償責任は「無過失責任」であり、道路・河川等の公の営造物の設置または管理に瑕疵があって損害が生じた場合、当該営造物を設置・管理する国または地方公共団体は、過失がなくても損害賠償責任を負う。
- イ「公の営造物」には、道路・河川・海岸等の公物のほか、国や地方公共団体が行政目的のために供している動産(警察の拳銃・パトカー等)も含まれる。
- ウ「設置または管理の瑕疵」とは、当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、その判断は営造物の設置・管理を怠ったという主観的(過失)要件ではなく、営造物の客観的な状態を基準とする。
- エ国家賠償法2条の「管理の瑕疵」は、営造物が物理的に損傷・欠陥を有していることを意味するものであり、物理的な欠陥がない場合には、いかなる事情があっても管理の瑕疵には当たらない。正答
- オ国または地方公共団体が国家賠償法2条に基づき損害賠償を行った場合において、当該損害が第三者の行為によって生じたときは、国等は当該第三者に対して求償権を行使することができる。
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エが誤っています。「管理の瑕疵」は物理的な損傷・欠陥がある場合に限られません。管理の瑕疵には、営造物の物理的状態の欠陥に加えて、「利用者が通常予測できない危険な使用方法をされた場合で管理者がそれを防止する措置を怠った場合」等、物理的欠陥がなくても管理の方法に問題がある場合が含まれます(機能的瑕疵)。例えば、道路自体に物理的損傷はないが、特殊な危険性のある場所で適切な安全施設・警告標識を設置しなかった場合等が問題となります。アの無過失責任、イの公の営造物の範囲(動産含む)、ウの客観的基準による瑕疵判断、オの求償権はいずれも正しい記述です。
「設置または管理の瑕疵」の意義(エが誤りの根拠): 国賠法2条の「瑕疵」は「その営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」(最判昭45.8.20・高知落石事件)をいいます。この「瑕疵」には次の2類型があります。①設置上の瑕疵: 当初の設計・施工段階での安全性の欠如(欠陥構造等)。②管理上の瑕疵: 設置後の維持・管理における安全性の欠如(破損を放置・安全施設の設置不備等)。重要なのは、物理的な損傷・破損がない場合でも、当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていると評価できれば「管理上の瑕疵」として2条責任が生じる場合があることです(機能的瑕疵・使用上の瑕疵の概念)。エの「物理的欠陥がなければいかなる場合も瑕疵なし」は誤りです。
無過失責任(アが正しい根拠): 国賠法2条は過失を要件とせず、営造物の設置・管理の瑕疵(客観的な安全性の欠如)と損害の間の因果関係があれば国等が損害賠償責任を負う「無過失責任」です。1条責任(公権力の行使)が過失責任であるのと対照的です。
公の営造物(イが正しい根拠): 判例は「公の営造物」を公法人が公の目的のために供した人的・物的設備の総合体と解し、道路・河川等の不動産のほか、警察の拳銃・パトカー等の動産も含まれます。
求償権(オが正しい根拠): 国賠法2条2項は「損害の原因について他にその責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する」と規定しており、第三者の行為が損害の原因である場合に国等は当該第三者へ求償できます(オは正しい)。なお国賠法3条2項は、賠償した者と内部的に費用を負担すべき者との間の求償を定める別の規定です。
【理論的背景】
国家賠償法2条は、公の営造物の設置・管理の瑕疵による損害について国・地方公共団体が賠償責任を負う規定であり、フランス公役務責任法に由来します。民法717条(工作物責任)に対応する規定ですが、2条の特徴は①国・地方公共団体の責任、②過失不要(無過失責任)、③公の営造物(公物・公共施設)という対象の特殊性です。高知落石事件(最判昭和45年8月20日)は2条の「瑕疵」を「当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と定義した最重要判例であり、この客観的な安全性基準が現在も適用されています。
【実務・条文構造】
国賠法2条の構成要件:
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 公の営造物 | 国・地方公共団体等が行政目的のために供した物的施設(動産・不動産を問わない) |
| 設置または管理の瑕疵 | 通常有すべき安全性を欠いていること(客観的基準・過失不要) |
| 損害 | 財産的損害・人身損害等 |
| 因果関係 | 瑕疵と損害の相当因果関係 |
「瑕疵」の類型(エが誤りの根拠の詳細):
1. 設置上の瑕疵(原始的欠陥): 設計・施工段階での安全性欠如(橋の構造欠陥・道路の設計ミス等)
2. 管理上の瑕疵(後発的欠陥): 設置後の維持管理における安全性欠如
- 物理的損傷の放置(道路の陥没・橋の腐食等を発見しながら修繕しない)
- 機能的・使用上の瑕疵(物理的損傷はないが安全確保のための措置が不十分な場合)
例: 急カーブで視界が悪い道路に適切なカーブミラー・ガードレールを設置しない
例: 危険な崖近くの道路に転落防止措置を講じない
天災と不可抗力(抗弁):
天変地異等の不可抗力は、国等の賠償責任を否定する事情となりえます(「通常有すべき安全性を欠いているとはいえない」として瑕疵の不存在を主張)。ただし、予測可能な天変地異への事前対応を怠った場合は不可抗力の主張が認められないことがあります。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では国賠法2条の無過失責任(1条との対比)、「公の営造物」の範囲(動産含む)、「設置・管理の瑕疵」の客観的基準(物理的欠陥なしでも瑕疵になりうる)が頻出です。高知落石事件の判旨(「通常有すべき安全性を欠く」という客観的基準)は条文とともに覚える必要があります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。国賠法2条は過失を要件とせず客観的な瑕疵と損害の因果関係で責任が生じる無過失責任。1条責任(過失責任)との対比で整理。
- イ: 正しい。「公の営造物」は道路・河川等の不動産に限らず、国・地方公共団体が行政目的のために供した物的施設全般(警察の拳銃・パトカー等の動産を含む)。
- ウ: 正しい。「設置または管理の瑕疵」の判断は客観的基準(通常有すべき安全性を欠くか否か)であり、主観的過失要件ではない。高知落石事件の判旨と一致。
- エ: 誤り(正答)。「物理的欠陥がなければいかなる事情があっても管理の瑕疵には当たらない」は誤り。物理的損傷がない場合でも、安全確保のための措置を怠った機能的・使用上の瑕疵として2条責任が生じる場合がある。
- オ: 正しい。国等が2条に基づき賠償した後、損害が第三者の行為(例:道路への故意の障害物設置)に起因する場合は当該第三者への求償権が認められる(国賠法2条2項)。
【根拠条文】
国家賠償法 第2条第1項(公の営造物の設置・管理の瑕疵による損害賠償責任:無過失責任)
国家賠償法 第2条第2項(損害の原因について他に責に任ずべき者があるときの第三者への求償権)
国家賠償法 第3条第2項(賠償した者と内部的に費用を負担すべき者との間の求償)
【参照判例】
高知落石事件(最判 昭和45年8月20日)——「通常有すべき安全性を欠いている」という客観的基準を確立
【補足】
国賠法2条の核心:無過失責任(過失不要)・客観的安全性基準(「通常有すべき安全性を欠く」)・物理的欠陥なしでも機能的瑕疵で責任あり。1条(過失責任)との対比が最重要。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第2条(公の営造物の設置・管理の瑕疵による賠償責任)、高知落石事件(最判昭和45年8月20日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。