行政法140行政法(行政事件訴訟法)

行政書士 行政法 問140:行政法(行政事件訴訟法)

行政処分における違法性の承継に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして**正しいもの**はどれか。

  • 違法性の承継とは、先行処分の取消訴訟で勝訴した原告が、後行処分に対して先行処分の違法を主張できる制度をいう。
  • 違法性の承継は、先行処分と後行処分が同一の法律効果を目的とする一連の処分として行われる場合には認められるが、手続的関連性がなければ認められない。
  • 最高裁判例によれば、先行処分に対して不服申立ての機会があったにもかかわらず争わなかった場合には、後行処分の取消訴訟においてその先行処分の違法を主張することは、一律に許されない。
  • 東京都建築安全条例に基づく安全認定とその後の建築確認について、最高裁判例は、両者がそれぞれ別個の行政機関により独立に行われる以上、安全認定が取り消されていない限り、建築確認の取消訴訟で安全認定の違法を主張することはできないとした。
  • 最高裁判例は、先行処分が出訴期間の経過により不可争力を取得していても、後行処分の取消訴訟において先行処分の違法を主張することが許されるか否かは、一連の処分の目的・構造・相手方の不服申立て機会の保障等を総合的に考慮して判断されるとする。正答
正答:最高裁判例は、先行処分が出訴期間の経過により不可争力を取得していても、後行処分の取消訴訟において先行処分の違法を主張することが許されるか否かは、一連の処分の目的・構造・相手方の不服申立て機会の保障等を総合的に考慮して判断されるとする。

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オが正しい記述です。違法性の承継とは、先行処分の不可争力が生じていても、一定の場合に後行処分の取消訴訟において先行処分の違法を主張できるとする法理です。最高裁判例(最判平21・12・17)は、先行処分が不可争力を取得していても、一連の処分の目的・構造および相手方の手続保障(不服申立て機会が実質的にあったか)を総合的に考慮して、違法性の承継の可否を判断するとしています(オ正しい)。アは違法性の承継の定義が誤りで、先行処分の取消訴訟での勝訴は前提ではありません(先行処分の不可争力が生じた後の後行処分の取消訴訟で先行処分の違法を主張する場面が典型です)。イは「手続的関連性がなければ認められない」という絶対的条件が誤りです。ウは「一律に許されない」が誤りです。エは、最判平21・12・17が安全認定と建築確認について違法性の承継を肯定し、安全認定が取り消されていなくても建築確認の取消訴訟で安全認定の違法を主張できるとしたのと結論が真逆であり、誤りです。

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違法性の承継の法理と判例の立場を整理します。

違法性の承継とは: 先行処分が出訴期間を経過して不可争力を取得した後も、後行処分の取消訴訟において先行処分の違法事由を後行処分の違法として主張できる法理です。通常、一度不可争力が生じた処分の違法は後続処分で争えないとされますが(各処分の独立性・出訴期間の遵守という制度趣旨)、一定の場合に例外が認められます。

判例の判断基準(最判平21・12・17): 違法性の承継が認められるかどうかは、①先行処分と後行処分が同一目的を実現するための一連の処分であるか(実体法的観点)、②相手方が先行処分の段階で適切な不服申立て機会を実質的に持っていたか(手続法的観点)、という要素を総合的に考慮して決定されます(オ正しい)。同判決は、東京都建築安全条例上の安全認定と建築確認について、両処分が避難・通行の安全確保という同一目的に向けられた一連の手続であり、かつ安全認定の段階では周辺住民等に十分な手続保障がなかったこと等を理由に、違法性の承継を肯定しました。

ウの誤り: 判例は「不服申立ての機会があっても争わなかった場合は一律に主張できない」とは述べておらず、不服申立て機会の有無は考慮要素の一つに過ぎません。

エについて: エは、最判平21・12・17が安全認定と建築確認の違法性の承継を「肯定」し、安全認定が取り消されていなくても建築確認の取消訴訟でその違法を主張できるとした結論を、「主張できない」と真逆に述べている点で誤りです。なお、土地収用における事業認定と収用裁決の間についても、通説・伝統的判例は両者が一連の手続として違法性の承継を肯定すると解しています。

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【違法性の承継の法的根拠と問題の所在】

違法性の承継の問題は、先行処分が出訴期間の経過により不可争力(行訴法14条の出訴期間制度から生じる効果)を取得した後に、後行処分の取消訴訟で先行処分の違法を主張できるか、という問題です。これは「不可争力の遮断効果(先行処分の違法を後で蒸し返せないという効果)を、一連の処分の一体性ゆえに例外的に解除してよいか」という論点であり、出訴期間制度と取消訴訟の排他的管轄(行訴法3条2項)の趣旨をめぐる問題です。なお、行訴法10条1項は「取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない」と規定し主張制限を定めますが、これは違法性の承継とは別の論点(主観訴訟性の問題)であり、混同しないよう注意が必要です。

【原則:違法性の承継は否定が原則】

行政処分は原則として相互に独立した法律効果を持ち、各処分は別個の出訴期間内に争われなければなりません。先行処分が不可争力を取得した後は、その違法は後行処分の取消訴訟では主張できないのが原則です(各処分の独立性・法的安定性・出訴期間制度の趣旨)。例外として違法性の承継が認められるのは、一連の処分が実質的に一体をなす特別な場合です。

【判例の展開】

承継が否定される典型(原則): 課税処分(賦課決定)と滞納処分(差押え等)の間のように、各処分が別個の法律効果・目的をもち、相互に独立している場合には、先行処分が不可争力を取得した後はその違法を後行処分の取消訴訟で主張できないのが原則です。各処分の独立性・出訴期間制度の趣旨(法的安定性)がその根拠です。

承継が肯定される典型: 土地収用における事業認定と収用裁決、農地買収計画と買収処分、都市計画事業の認可と仮換地処分等は、いずれも一連の手続として同一目的の実現に向けられているため、通説・判例は違法性の承継を肯定しています。

最判平21.12.17(東京都建築安全条例・安全認定と建築確認): 最高裁は、安全認定(接道義務の例外を認める認定)と建築確認は別個の行政機関がそれぞれの権限に基づき行うものであるが、もともと一体的に行われていたものであり、避難・通行の安全確保という同一目的を達成するためのものであること、安全認定について周辺住民等が争訟によって争う手続的機会が実質的に保障されていなかったこと等を理由に、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において安全認定が違法であると主張することを認めました(違法性の承継を肯定)。この判決は、①実体法的観点(処分の目的・効果の一体性)と②手続法的観点(先行処分段階での争訟機会の実質的保障)を総合的に考慮する判断枠組みを示した重要判例です(オの根拠)。

【オの正確な意義】

オは「一連の処分の目的・構造・相手方の不服申立て機会の保障等を総合的に考慮して判断される」と述べており、これは平成21年判決が示した総合的判断基準(実体法的観点+手続法的観点)に対応します。「一律に許されない(ウ)」でもなく「手続的関連性のみで決まる(イ)」でもなく、複数の要素を総合的に考慮するという立場がオの正確な記述です。

【アの誤りの分析】

アは「先行処分の取消訴訟で勝訴した原告が後行処分に先行処分の違法を主張できる制度」と定義していますが、これは違法性の承継の典型的場面ではありません。違法性の承継が問題になるのは、むしろ先行処分の出訴期間が経過して争えなくなった(または実際に争わなかった)後に、後行処分の取消訴訟において「先行処分の違法を理由として後行処分も違法」と主張する場面です。先行処分で勝訴していれば、先行処分の取消判決の拘束力(33条)によって処理できるため、違法性の承継という法理を使う必要がありません。

【行政書士試験における出題傾向】

違法性の承継は、行政書士試験・司法試験ともに、土地収用の事業認定と収用裁決、建築確認と除却命令、農地転用許可と強制換地等の具体的事例で問われます。「一体性のある一連の処分」かどうか、「相手方が先行処分段階で不服申立てを現実的に期待できたか」という2点を軸に考えると整理しやすいです。

【根拠条文・判例】

行政事件訴訟法 第3条第2項(処分の取消しの訴え)、第14条(出訴期間・不可争力の根拠)

最判平成21年12月17日(東京都建築安全条例・安全認定と建築確認:違法性の承継を肯定)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政事件訴訟法 第3条第2項(処分の取消しの訴え) 判例: 最判平成21年12月17日(東京都建築安全条例・安全認定と建築確認の違法性の承継:承継肯定) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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