行政書士 行政法 問160:行政法(地方自治法)
地方自治法上の公の施設に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア普通地方公共団体は住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(公の施設)を設けるものとされており、公の施設の設置・廃止は条例で定めなければならない。
- イ普通地方公共団体は、公の施設の利用について、正当な理由がない限り住民が公の施設を利用することを拒んではならず、住民が不当に差別的な取扱いを受けてはならない。
- ウ指定管理者制度とは、地方公共団体が指定する法人その他の団体(指定管理者)に、条例の定めるところにより公の施設の管理を行わせることができる制度であり、指定管理者には民間事業者も含まれる。
- エ公の施設の利用者から徴収する使用料は、条例で定めなければならないが、指定管理者が管理する場合には、指定管理者が独自の基準で使用料を設定することができる。正答
- オ地方公共団体が普通地方公共団体以外の法人(たとえば広域連合等)に対して公の施設の利用を制限することは、合理的な理由があれば許容されるが、住民に対して他の市町村との比較で著しく不平等な利用条件を課すことは許されない。
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エが誤りです。地方自治法228条1項は使用料・手数料に関する事項を条例で定めるとし、公の施設の使用料は条例で定めることが要件です。指定管理者制度(244条の2)で利用料金制を採る場合でも、利用料金は「条例の定めるところにより、指定管理者が定める」ものとされ、かつ指定管理者はあらかじめ地方公共団体の承認を受けなければなりません(244条の2第8項・9項)。指定管理者が「独自の基準で(条例や団体の承認に拠らず)使用料を設定することができる」というエの記述は、この条例主義・承認制に反します(エ誤り)。ア(公の施設の設置・廃止の条例事項・244条の2第1項)は正しい記述です。イ(住民の公の施設利用の権利・244条2項・3項)は正しい記述です。ウ(指定管理者制度の概要・民間事業者の参入可能・244条の2第3項)は正しい記述です。オ(他の地方公共団体の住民への利用制限と合理的理由・244条の3等)は概ね正しい記述です。
地方自治法上の「公の施設」制度の体系を整理します。
公の施設の定義(244条1項): 「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(以下「公の施設」という)を設けるものとする」。公民館・図書館・公園・スポーツセンター・保育所等が典型例。
設置・廃止(244条の2第1項): 公の施設の設置及びその管理に関する事項は条例で定めます(ア正しい)。
住民の利用権(244条2項・3項): 普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならず(244条2項)、住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取扱いをしてはなりません(244条3項・イ正しい)。
指定管理者制度(244条の2第3項): 「普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体(以下「指定管理者」という)に、当該公の施設の管理を行わせることができる」。民間事業者も指定管理者となれます(ウ正しい)。
使用料(224条)と利用料金(244条の2第8項・9項): 公の施設の使用料は条例で定めます(224条)。なお、指定管理者制度では「利用料金制」を採ることができ、利用料金を指定管理者の収入として収受させることができます(244条の2第8項)。この場合でも、利用料金は「条例の定めるところにより、指定管理者が定める」ものであり、かつ指定管理者はあらかじめ利用料金について地方公共団体の承認を受けなければなりません(244条の2第9項)。したがって、エの「指定管理者が独自の基準で使用料を設定することができる」は、条例の定めや団体の承認という枠を無視した記述であり誤りです(エ誤り)。利用料金制を採る場合でも、指定管理者が条例の枠を離れて勝手に料金を決められるわけではありません。
【公の施設制度の機能と法的性格】
地方自治法244条以下の「公の施設」制度は、地方公共団体が住民の福祉増進のために設置・管理する施設の法的規律を定めます。「公の施設」は行政財産(地自法238条)の中でも「公用財産」とは異なり、住民の直接利用を目的とする「公共用財産」に相当します。法的性格として、住民の公の施設利用権は公法上の権利(地自法244条2項・3項による保護)と解されており、利用拒否・差別的取扱いに対しては行政不服申立て・取消訴訟(処分性の問題あり)・当事者訴訟(地位確認)等の救済手段が問題となります。
【指定管理者制度の詳細(ウの根拠)】
2003年地方自治法改正で「管理委託制度」(公共的団体等のみが受託可能)に代わり「指定管理者制度」が導入されました。主な変更点:
①受託可能な団体の拡大: 従来の「公共的団体」に限らず、株式会社・NPO法人・財団法人等の民間事業者も指定管理者になれます(ウ正しい)。
②指定手続: 議会の議決(指定の議決)が必要(244条の2第6項)。
③指定期間: 条例で定める期間(通常3〜5年・更新可能)。
④管理基準: 地方公共団体が条例・協定で定める管理の基準に従う。
【使用料・利用料金の条例規定の原則(エの詳細分析)】
公の施設の使用料は、地方自治法228条1項により条例で定めるべき事項とされています。さらに指定管理者制度では、244条の2第8項が「指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(利用料金)を当該指定管理者の収入として収受させることができる」(利用料金制)と定め、同条同項後段は「利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとする」とし、同条9項は「指定管理者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない」と規定しています。
この構造から、指定管理者が利用料金を「定める」場面はあるものの、それは①条例の定めるところにより、かつ②あらかじめ地方公共団体の承認を受けて行うものです。したがって、「指定管理者が独自の基準で(条例や承認を離れて)使用料を設定する」というエは、この条例主義・事前承認制に反する誤りです(エ誤り)。
【公の施設の利用制限と正当な理由(イの詳細)】
244条2項の「正当な理由がない限り利用拒否不可」の「正当な理由」として認められる例:
①施設の管理上の必要(定員超過・施設の危険な状態)
②公の秩序・公衆衛生・公衆道徳への著しい障害
③暴力的・非合法的な目的での利用
「思想・信条・政治的立場を理由とした利用拒否」は正当な理由に当たらないとするのが判例・行政実務の基本的立場です。泉佐野市民会館事件(最判平7.3.7)は、公の施設である市民会館の利用不許可について、「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であるという限定解釈を示しました。条例での「特定の集団への利用禁止」規定も244条2項・3項に反する可能性があります。
【他の地方公共団体の住民への利用(オの詳細)】
地方自治法244条の3は、地方公共団体が相互に公の施設を利用し合う協定を締結することを許容しています。オは「合理的な理由があれば普通地方公共団体以外の法人(広域連合等)への利用制限が許容される」とし、かつ「住民への著しく不平等な条件は不可」としており、これは条文趣旨と整合します。ただし、「住民に対して他の市町村との比較で著しく不平等な利用条件」の部分は244条の3の相互利用協定の文脈で問題になり、一般論としてオは正しい方向の記述です。
【行政書士試験での公の施設の出題傾向】
公の施設に関する頻出論点:①設置・廃止=条例事項、②住民の利用権(拒否禁止・差別禁止)、③指定管理者(民間可・議会議決必要・管理基準は条例・協定)、④使用料=条例事項(指定管理者でも同様)の4点を体系的に理解することが重要です。
【根拠条文】
地方自治法 第228条(使用料・手数料の条例規定)、第244条(公の施設の設置・住民の利用権・差別禁止)、第244条の2(公の施設の設置管理条例・指定管理者制度・議会議決・利用料金)、第244条の3(他の地方公共団体との協定)
最判平成7年3月7日(泉佐野市民会館事件・公の施設の利用不許可の判断枠組み)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第228条(使用料・手数料の条例規定)、第244条(公の施設の設置・利用権)、第244条の2(指定管理者制度・利用料金) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。