行政法24行政法総論

行政書士 行政法 問24:行政法総論

行政上の強制執行(行政代執行)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 行政代執行法による代執行は、法律(または法律に基づく命令)によって命じられた代替的作為義務を不履行の者に対してのみ行うことができ、非代替的作為義務(本人が自ら行うことを要する義務)については行政代執行の対象とならない。正答
  • 行政代執行を実施するにあたっては、戒告の手続を経ることが必要であるが、緊急の場合には戒告と代執行令書の送達を省略して直ちに代執行を実施することができる。
  • 行政代執行の費用は、代執行を行った行政庁が国費または地方費から支出するものとされており、義務者に費用を請求することはできない。
  • 即時強制とは、事前に義務を命ずることなく、行政機関が直接に私人の身体・財産に実力を行使することであり、行政代執行法に根拠規定が設けられている。
  • 直接強制とは、義務者が義務を履行しない場合に、行政機関が直接に義務の内容を強制的に実現する手段であり、行政代執行法は直接強制の一般的な手段として位置づけられている。
正答:行政代執行法による代執行は、法律(または法律に基づく命令)によって命じられた代替的作為義務を不履行の者に対してのみ行うことができ、非代替的作為義務(本人が自ら行うことを要する義務)については行政代執行の対象とならない。

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行政上の義務を強制的に実現する手段として、代執行・直接強制・執行罰・即時強制があります。

行政代執行法による代執行は最もよく使われる手段で、要件は次の通りです。①代替的作為義務(他人が代わって行うことができる義務)であること。②法律(または法律に基づく命令)によって命じられた義務であること。③義務者が義務を不履行であること。④他の手段で履行確保が困難または著しく公益を害すること。

アが正しい。 代執行は「代替的作為義務」にのみ使えます。非代替的作為義務(本人が直接しなければならない義務)には使えません。

イは誤り: 緊急の場合でも原則戒告は必要です。法は「急迫の場合」に令書の交付省略を認めていますが(行政代執行法3条3項)、戒告の完全省略は別の問題です。ウは誤り: 代執行費用は義務者から徴収します(行代法6条)。

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行政代執行の手続(行政代執行法3条):

1. 戒告: 相当の履行期限を定め、期限内に義務を履行しない場合は代執行する旨を文書で戒告する。

2. 代執行令書の送達: 代執行の時期・代執行責任者・費用概算額等を文書で義務者に通知する。

3. 代執行の実施: 代執行責任者が現場で実施(執行証票の携帯・提示義務あり)。

4. 費用の徴収: 代執行に要した費用は義務者から徴収する(行代法5条・6条・国税滞納処分に準じた徴収)。

緊急の場合の特則(行代法3条3項): 「非常の場合又は危険切迫の場合」には代執行令書の手続を省略できます。戒告についても同様の特則があります(行代法3条3項が戒告・令書双方の省略を認めている)。ただし本問イの「緊急の場合に戒告と令書を省略して直ちに実施できる」という表現は、要件(非常・危険切迫)を「緊急」と緩く表現している点と、「直ちに」という即時性が強すぎる点で正確ではありません。

即時強制と直接強制の区別(エ・オ誤りの根拠):

  • 即時強制: 義務を命ずることなく直接実力行使(警察官職務執行法の身柄保護等)。行政代執行法ではなく個別法に根拠。
  • 直接強制: 義務の不履行に対し直接実力で義務内容を実現(成田空港の強制代執行等)。一般法なし・個別法に根拠が必要。
  • 行政代執行: 直接強制ではなく「第三者が代わって実施」する方式。
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【理論的背景】

行政上の強制執行は、民事執行(私人が裁判所を通じて債務名義を取得し強制執行する)とは異なり、行政機関が裁判所を経由せずに義務の実現を図る自力執行の一形態です。これは迅速な行政目的の実現に資しますが、同時に私人の自由・財産権への侵害を伴うため、法律上の明確な根拠(法律の留保・侵害留保の原理)が必要です。

行政代執行法の位置づけ: 戦後の行政法改正で、戦前の行政執行法(広範な直接強制を認めていた)は廃止され、代替的作為義務についてのみ代執行を認める行政代執行法が制定されました。これにより日本では直接強制の一般法がなく、直接強制には個別法の根拠が必要という体制になっています。

【実務・条文構造】

行政代執行の要件(行代法2条)の詳細:

1. 「法律(法律の委任に基づく命令、規則及び条例を含む。)により直接に命ぜられ、又は法律に基づき行政庁により命ぜられた行為」であること。単なる行政指導による義務は含まれません。

2. 「他の手段によってその履行を確保することが困難」であること(補充性)。

3. 「その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められる」こと。

費用徴収(行代法5条・6条): 代執行に要した費用は義務者の負担とされ(5条)、国税滞納処分の例により強制徴収することができます(6条1項)。費用は義務者から徴収するので、ウの「行政庁が国費等から支出し義務者に請求できない」は完全な誤りです。

緊急代執行(行代法3条3項): 「非常の場合又は危険切迫の場合において、急速を要し」戒告・令書の手続をとる暇がないときは、これらを省略して実施できます。イの選択肢の「緊急の場合」という表現は曖昧であり、要件(非常の場合または危険切迫の場合)が厳格であることを踏まえると正確ではありません。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では「代執行の要件(代替的作為義務・法律の根拠)」「手続の順序(戒告→令書→実施→費用徴収)」「費用の負担(義務者負担・国税滞納処分に準じた徴収)」「即時強制・直接強制との区別」が頻出です。特に「費用は国費から」「非代替的義務にも使える」「行政代執行法が直接強制の根拠」という誤り選択肢のパターンを確実に識別できるようにしてください。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(正): 代替的作為義務の典型例は、命令に反して設置された違法工作物の除去・建築基準法違反建築物の除却等。非代替的義務(例: 特定の人物が自ら出頭する義務)には代執行不可。
  • イ(誤): 戒告省略は「非常の場合または危険切迫の場合」という厳格な要件のもとで認められます(行代法3条3項)。「緊急の場合」は要件が緩すぎます。
  • ウ(誤): 行代法5条「代執行に要した費用は義務者の負担とする」、6条「国税滞納処分の例により、これを徴収することができる」。
  • エ(誤): 即時強制は行政代執行法ではなく個別法(警察官職務執行法・感染症法等)に根拠を置きます。行政代執行法に即時強制の規定はありません。
  • オ(誤): 行政代執行は「代替的作為義務を第三者が代わって実行する」手段であり、直接強制(義務者自身の身体・財産に直接実力を加える)の一般的手段ではありません。日本に直接強制の一般法はなく、個別法の根拠が必要です。

【根拠条文】行政代執行法 第2条(代執行の要件)、第3条(代執行の手続)、第5条(費用の負担)、第6条(費用の徴収)

【補足】代執行の手順: 戒告→令書送達→実施→費用徴収(国税滞納処分準用)。費用は義務者負担。代替的作為義務のみ対象。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政代執行法 第2条(代執行の要件)、第3条(手続)、第5条(費用徴収)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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