行政法38行政法総論

行政書士 行政法 問38:行政法総論

行政行為の分類に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。なお、以下の「許可」「認可」「特許」は、行政法学上の分類を指す。

  • 農地法3条に基づく農地の権利移動の許可は、学問上の「許可」(一般的禁止の解除)に当たり、農地委員会の許可がなくても農地売買の私法上の効力は影響を受けない。
  • 食品衛生法に基づく飲食店の営業許可は、学問上の「特許」(行政が新たな権利・法的地位を設定する行政行為)に当たる。
  • 河川の流水占用許可(河川法)は、学問上の「特許」に当たり、許可を受けた者は許可前にはなかった新たな権利(流水占用権)を取得する。正答
  • 建設業の許可(建設業法)は、学問上の「認可」(第三者の法律行為を補充してその効力を完成させる行政行為)に当たり、許可なしに締結した建設工事請負契約は私法上無効となる。
  • 医師免許(医師法)は、行政が申請者に「医師としての地位・権利」という新たな法的地位を設定するものとして、学問上の「特許」に当たる。
正答:河川の流水占用許可(河川法)は、学問上の「特許」に当たり、許可を受けた者は許可前にはなかった新たな権利(流水占用権)を取得する。

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学問上の分類と法令の名称が一致しないケースが最重要です。

  • 許可(禁止解除): 本来自由な行為を政策上一般に禁止し、要件を充たす者に禁止を解除。例: 運転免許・飲食店営業許可
  • 認可(効力補充): 私人間の法律行為の効力を行政が補充して完成させる。例: 農地売買の農地法3条許可(農地法の「許可」が学問上は「認可」)・銀行設立認可
  • 特許(新権利設定): 行政が相手方に新たな権利・法的地位を設定。例: 河川占用許可(河川法)・公有水面埋立免許

ウが正しい。 河川の流水占用許可は学問上「特許」です。自然流水を占用する権利は許可前には存在せず、許可によって新たに権利が付与されます。

ア(誤): 農地法3条許可は学問上「認可」です。許可なしの農地売買は農地法上無効(私法上の効力も影響受けます)。

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学問上の分類と法令名称の不一致(最重要):

| 法令上の名称 | 法令 | 学問上の分類 | 根拠 |

|---|---|---|---|

| 農地の権利移動の「許可」 | 農地法3条 | 認可 | 私人間の売買の効力補充(許可なしでは所有権移転の効力なし) |

| 飲食店の「営業許可」 | 食品衛生法 | 許可 | 飲食業という一般的禁止(衛生管理上)の解除 |

| 流水占用「許可」 | 河川法23条 | 特許 | 公水の占用権という新たな権利の設定 |

| 建設業の「許可」 | 建設業法 | 許可 | 建設業という一般的禁止の解除(許可なしでは罰則) |

| 医師「免許」 | 医師法 | 特許 または 許可 | 争いあり(医師という地位の設定か禁止解除か) |

各選択肢の正誤:

  • ア(誤): 農地法3条許可は学問上認可。許可がない農地売買は農地法3条違反として私法上も無効(農地法3条6項: 許可なしの売買は効力なし)。
  • イ(誤): 飲食店営業許可は学問上許可(一般的禁止の解除)。特許ではありません。
  • ウ(正): 河川占用許可は学問上特許。占用権は許可前にはない権利です。
  • エ(誤): 建設業の許可は学問上許可(禁止解除)。認可ではありません。また建設業許可なしの工事請負契約は私法上必ずしも無効にはなりません(建設業法は公法上の規制であり、私法上の契約の効力は別に検討)。
  • オ(要検討): 医師免許の学問上の分類は「許可」か「特許」か学説上の争いがあります。医師として診療する行為を一般に禁止して、要件を充たす者に解除する(許可説)か、医師という法的地位を新たに設定する(特許説)かで見解が分かれます。
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【理論的背景】

行政行為の類型論は、ドイツ公法学からの輸入ですが、日本の判例・立法は法令用語と学問的分類を必ずしも一致させていません。特に「農地法の許可が学問上認可である」点は、試験でも実務でも最重要の知識です。この不一致が生まれる理由は、立法技術上「許可」「認可」「特許」という用語の選択に一貫性がないためです。

認可の本質(農地法3条許可が認可である根拠): 認可は「私人間の法律行為の効力を行政が補完する」という効果を持ちます。農地法3条は、農地の権利移動(売買・贈与・賃貸借等)について農業委員会の許可を効力要件としており、許可なしの権利移動は農地法3条6項により「効力を生じない」とされています。この「私人間の法律行為の効力を補完する」機能は学問上の認可です。

【実務・条文構造】

建設業許可なしの契約の私法上の効力: 建設業法は公法上の規制として許可なしの施工を禁止しますが(建設業法3条)、許可なしで締結した工事請負契約の私法上の効力については、判例(最判昭和57年7月8日等)は有効と解する傾向にあります(公法規制違反が直ちに私法上の無効をもたらすわけではない・強行規定か取締規定かの区別の問題)。エの「私法上無効となる」は誤りで、認可の説明としても建設業許可の説明としても誤りです。

医師免許の学問上の分類問題: 医師免許(医師法2条)については、①医師として診療行為をすることは本来自由であり、医師法が一般に禁止して要件充足者に解除する(許可説)、②医師という特別な法的地位(免許という地位)は許可前には存在せず、免許によって新たに設定される(特許説)という見解の対立があります。試験では「争いがある」として問いを避けるか、文脈上いずれかを正解とする出題がなされます。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では「農地法3条許可=学問上認可」「河川占用許可=学問上特許」「飲食店営業許可=学問上許可」という具体的な対応関係が毎年出題されます。法令名称と学問分類の不一致が最大の出題ポイントです。また「認可なしの私法上の効力(農地は無効・建設業は有効)」の違いも重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(誤): 農地法3条許可なしの農地売買は学問上認可(効力補充)ゆえ、許可なしでは「私法上も効力なし」(農地法3条6項の明文)です。「影響を受けない」という選択肢の表現は完全な誤り。
  • イ(誤): 飲食店営業許可は「衛生管理上の規制(一般的禁止)の解除」であり学問上許可。特許は新権利の設定で、飲食業の権利は許可前から存在する(憲法22条の営業の自由として)。
  • ウ(正): 河川法23条の流水占用許可は特許。河川水の占用権は許可前には存在しない権利で、許可によって新たに設定されます。
  • エ(誤): 建設業許可は学問上許可(禁止解除)であり認可ではありません。また許可なしの請負契約は判例上私法上有効(取締規定違反)。
  • オ(要検討・争いあり): 医師免許の分類は学説上争いがあります。試験では文脈による判断が必要ですが、本問では「新たな法的地位の設定=特許」と説明されており、これが誤りとは言い切れません。ただし許可説もあります。

【根拠条文】農地法 第3条第1項(農地の権利移動の許可)・第6項(許可なしの権利移動は効力なし)、河川法 第23条(流水占用許可)、食品衛生法(営業許可)、建設業法 第3条(建設業の許可)、医師法 第2条(医師免許)

【補足】農地法3条「許可」→学問上認可(効力補充・許可なしは私法上も無効)。河川占用「許可」→学問上特許。飲食店「営業許可」→学問上許可(禁止解除)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政行為の類型論(通説・学説)、農地法、食品衛生法、河川法、建設業法、医師法。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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