行政書士 行政法 問41:行政手続法
行政手続法が定める聴聞手続の当事者・参加人・代理人に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア聴聞の「当事者」は、不利益処分の名宛人となるべき者に限られ、不利益処分の相手方との間に利害関係を有する第三者であっても、当事者として参加することはできない。
- イ聴聞の「参加人」は、行政庁の許可なく自由に聴聞手続に参加することができる。
- ウ当事者は、聴聞手続において代理人を選任することができ、代理人は当事者と同様に意見を述べる権限を有する。正答
- エ当事者が聴聞の期日に出頭できない場合であっても、陳述書(意見を記載した書面)を提出することは行政手続法上認められていない。
- オ聴聞調書は主宰者が作成するものであるが、その内容について当事者が誤りがあると主張した場合、主宰者はその申し立てを必ず採用して調書を訂正しなければならない。
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聴聞手続の登場人物を整理します。
- 当事者: 不利益処分の名宛人(行手法15条)。自動的に当事者として参加。
- 参加人: 利害関係を持つ第三者。行政庁の許可を得て参加できる(行手法17条)。
- 代理人: 当事者が選任できる(行手法16条)。代理人は当事者と同様の権利を持つ。
ウが正しい。 当事者は代理人を選任でき(行手法16条)、代理人は意見陳述等の権限を持ちます。
ア(誤): 利害関係を持つ第三者は「参加人」として参加を申し出ることができます(ただし行政庁の許可が必要)。「当事者として」ではなく「参加人として」の参加は認められています。
イ(誤): 参加人は行政庁の「許可」が必要です(行手法17条1項)。自由に参加できるわけではありません。
エ(誤): 当事者は聴聞の期日に出頭できない場合でも、あらかじめ陳述書・証拠書類等を提出することができます(行手法21条1項)。
オ(誤): 調書の訂正は主宰者の判断によります。当事者の申し立てを「必ず採用」する義務はありません。
聴聞の当事者・参加人・代理人の権利一覧:
| 権利・行為 | 当事者 | 参加人 | 代理人 |
|---|---|---|---|
| 意見陳述(口頭) | 可 | 可(主宰者の許可内) | 可(当事者と同様) |
| 証拠書類等の提出 | 可 | 可 | 可 |
| 処分庁職員への質問 | 可(主宰者の許可) | 可 | 可 |
| 文書閲覧の請求 | 可(18条) | 可(18条) | — |
| 陳述書の提出 | 可(21条1項) | 可 | — |
参加人の要件(イが誤りの根拠):
行手法17条1項「当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者の求め」に対し、行政庁は「これを許可することができる」。参加人になるには行政庁の許可が必要であり、自由参加ではありません。
陳述書の提出(エが誤りの根拠):
行手法21条1項「当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる」。欠席の場合でも陳述書の提出は認められています。
調書の訂正(オが誤りの根拠):
行手法24条4項は「当事者又は参加人は、調書の閲覧を求め、その記載の正確性について主宰者に申し出ることができる。主宰者は、当該申し出があった場合において、その申し出に理由がある場合は、調書を正確なものに改めなければならない」と定めています。「申し出に理由がある場合」にのみ訂正義務が生じるのであり、申し出を必ず採用するわけではありません。
【理論的背景】
聴聞手続における当事者・参加人・代理人の権利保護体系は、「当事者の武器の平等(行政庁と名宛人の間での情報・反論の機会の均衡)」という適正手続の理念を実現するためのものです。特に代理人の選任を認めることで、法律知識に乏しい相手方も弁護士等を通じて実質的に防御を行えます。
参加人制度の意義: 不利益処分は名宛人だけでなく第三者(競業者・隣人・住民等)にも影響を与える場合があります。例えば競業者の業務停止処分がなされると、競業者(名宛人)と同一地域の別業者(第三者)に市場競争上の影響が生じます。参加人制度はこのような第三者の意見・情報を聴聞手続に取り込むことで、より精確な判断材料を行政庁に提供します。
【実務・条文構造】
代理人の資格(行手法16条): 代理人には特別の資格要件が定められておらず、弁護士以外の者(親族・信頼できる知人等)を代理人とすることも可能です。代理人は当事者と同様の権限を持ちますが、「特別の授権を要する行為」(和解等)については別途授権が必要となる場合があります。
調書・報告書の関係(行手法24条):
- 調書: 聴聞の期日における審理の内容(事実の記録)を記載。主宰者が作成。
- 報告書: 当事者の主張に「理由があるかどうかについての意見」を記載(主宰者が判断を示す)。主宰者が作成。
- 行政庁は不利益処分の決定にあたり、調書と報告書を「十分に参酌」しなければならない(行手法26条)。
調書の正確性の確保(行手法24条4項): 当事者・参加人は調書の閲覧を求め、不正確な記載について申し出ることができます。主宰者は「申し出に理由がある」場合に調書を訂正します。訂正の可否は主宰者の判断(申し出の理由の有無)に依存し、申し出を必ず採用するわけではありません。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では「参加人は行政庁の許可が必要(自由参加ではない)」「代理人の選任可能(当事者と同様の権限)」「欠席時の陳述書提出(21条1項)」「調書の訂正申し出(理由があれば訂正)」が頻出です。参加人と当事者の違い(参加人は第三者・許可が必要)を混同した選択肢は典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア(誤): 利害関係を持つ第三者は「参加人」として聴聞に参加を求めることができます(行手法17条)。「当事者として」参加はできませんが「参加人として」参加は可能。ただし行政庁の許可が必要。
- イ(誤): 行手法17条1項で行政庁の「許可」が必要と明記。自由参加ではありません。
- ウ(正): 行手法16条(代理人の選任)・20条(代理人が期日に出頭して意見陳述等ができる)のとおり。
- エ(誤): 行手法21条1項(陳述書・証拠書類等の提出)は当事者の期日出頭に代えることができると明記。
- オ(誤): 行手法24条4項(調書の正確性の申し出)は「申し出に理由がある場合」にのみ訂正義務。「必ず採用」は誤りです。
【根拠条文】行政手続法 第16条(代理人)、第17条(参加人・行政庁の許可)、第21条(陳述書等の提出)、第24条第4項(調書の正確性の申し出・訂正)
【補足】参加人=行政庁の許可が必要(第三者)。代理人=当事者と同様の権限。欠席でも陳述書提出可。調書訂正は「理由がある場合」のみ(必須ではない)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第16条(代理人)、第17条(参加人)、第21条(陳述書等)、第24条(調書)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。