行政書士 行政法 問48:再調査の請求・再審査請求の要件と相互関係
行政不服審査法が定める再調査の請求および再審査請求に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア再調査の請求は、行政庁の処分につき、法律(条例に基づく処分にあっては条例)に再調査の請求をすることができる旨の定めがある場合に限り、処分庁に対してすることができる。
- イ再調査の請求をした場合、再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。正答
- ウ再審査請求は、法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合に限り、審査庁による裁決に不服があるときに提起することができる。
- エ再審査請求は、原裁決(審査請求の裁決)または当該処分(原処分)のいずれをも対象として、法律に定める行政庁に対してすることができる。
- オ再調査の請求をした場合において、再調査の請求についての決定を経ないで、再調査の請求の提起をした日から3か月を経過したときは、審査請求をすることができる。
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イが誤りです。行審法5条2項は、再調査の請求をした場合でも、再調査の請求についての決定を経ないで審査請求をすることができる旨を定めています。具体的には、①再調査の請求をした日から3か月を経過したとき、②その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由があるとき、は決定前でも審査請求ができます(オが正しい)。再調査の請求と審査請求は原則として選択的関係にあり、再調査の請求を先に経ることが強制されるわけではありません。アは正しく、再調査の請求は法律(条例)に定めがある場合のみ認められます。
再調査の請求の位置づけ: 再調査の請求は2016年改正で旧法の「異議申立て」を一部継承した制度です。異議申立て(旧法)は当然に認められる一般的制度でしたが、再調査の請求は法律または条例に明文の定めがある場合のみ認められる例外的制度です(5条1項)。
審査請求との関係(イの誤りの詳細): 再調査の請求をした場合でも、審査請求は以下の場合に決定を待たずできます(5条2項):
1. 再調査の請求の日から3か月経過(オと対応)
2. 再調査の請求についての決定を経ないことに正当な理由があるとき
この設計は、再調査の請求が「処分庁自身が再審査する簡易な手続」であることから、長期化した場合に国民が審査請求に移行できるよう配慮したものです。
再審査請求(ウ・エ): 再審査請求も法律に定めがある場合のみ認められます(6条1項)。再審査請求の対象は、行審法6条2項により「原裁決(再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決)または当該処分(原処分)」とされ、両者を併せて「原裁決等」と定義されています。したがって、再審査請求人は原裁決を対象にすることも、原処分そのものを対象にすることもできます。エはこの6条2項を正確に述べた正しい記述です(誤りではありません)。なお、再審査請求が理由ある場合の認容裁決では、再審査庁は「原裁決等」の全部または一部を取り消します(65条1項)。「原裁決等」には原処分も含まれるため、再審査庁が原処分を取り消すことも条文上認められています。
【2016年改正と旧法との対比】
旧行審法では不服申立ての種類として、①異議申立て(処分庁への申立て)②審査請求(上級庁への申立て)の二本立てが基本で、いずれかを選択・併用できる場合もありました。2016年改正では:
- 異議申立て → 廃止(審査請求への一本化)
- 異議申立ての機能の一部 → 再調査の請求(ただし法律・条例の根拠がある場合のみ)
- 審査庁の裁決に対する不服 → 再審査請求(法律の根拠がある場合のみ)
再調査の請求が「法律または条例」の根拠を要件とするのは(アの根拠)、旧法の異議申立てが「当然に」認められる一般制度だったのを、例外的・限定的に残したという立法者意思を反映しています。現行法で再調査の請求が認められる典型例は、国税通則法上の更正の請求等です。
【再調査の請求の詳細要件】
再調査の請求ができる者: 行審法5条1項は「法令に違反する事実がある場合においてその是正のためにされた処分を行った行政庁」への申立てを想定しています。実務上は所管法律(国税通則法等)が再調査の請求の手続を具体的に定めます。
審査請求との選択: 再調査の請求ができる場合でも、最初から審査請求を選択することも可能です(5条1項の「することができる」は任意的)。つまり再調査の請求は義務的前置ではなく任意的前置であり、これがイの誤りの核心です。イの誤りは「再調査の請求についての決定を経た後でなければ審査請求できない」→これは「義務的前置」を意味しますが、行審法5条2項はこれを否定しています。
【再審査請求の独自性】
再審査請求は「法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合」に、法律に定める行政庁(再審査庁)に対してすることができます(6条1項)。再審査請求の対象は、6条2項により「原裁決(再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決)または当該処分(原処分)」であり、両者を併せて「原裁決等」と定義されます。すなわち再審査請求人は、原裁決の取消しを求めることも、原処分そのものの取消しを求めることもできます。エはこの6条2項の規律を正しく述べたものであり、誤りではありません。再審査請求が理由ある場合の認容裁決(65条1項)では、再審査庁は「原裁決等」(=原裁決または原処分)の全部・一部を取り消します。したがって「再審査庁は原処分の取消しをすることができない」という命題は条文上誤りであり、本問の選択肢エはそのような誤った命題を含まない正しい記述として作成しています(正答は、義務的前置を前提とするイ)。
【実践問題対策:審査請求・再調査・再審査の関係図】
```
処分に不服
├── 審査請求(一般的・必ず選べる)
│ └── 裁決に不服 → 再審査請求(法律の定めがある場合のみ)
└── 再調査の請求(法律・条例の定めがある場合のみ・任意的前置)
├── 決定後 → 審査請求(決定に不服のとき)
└── 3か月経過・正当な理由 → 決定を経ずに審査請求
```
この関係図で「審査請求への一本化」と「再調査の請求の任意性」を押さえることが試験の核心です。
【根拠条文】
行政不服審査法 第5条第1項(再調査の請求の要件)、第5条第2項(決定前の審査請求の許容)、第6条第1項(再審査請求の要件)、第6条第2項(再審査請求の対象=原裁決等:原裁決または原処分)、第65条第1項(再審査請求の認容裁決=原裁決等の取消し)
【補足】
再調査の請求は「法律・条例の定めがある場合のみ」「任意的前置(義務的前置ではない)」の2点が最重要。審査請求一本化原則との対比で整理する。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政不服審査法 第5条(再調査の請求)・第6条(再審査請求) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。