行政法76国賠法1条・公権力の行使の意義

行政書士 行政法 問76:国賠法1条・公権力の行使の意義

国家賠償法第1条第1項に定める「公権力の行使」に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 「公権力の行使」は権力的な強制作用に限られるため、行政指導のような任意協力を求める非権力的行為は、これに含まれない。
  • 公立学校の教師が授業中に生徒を殴打した行為は、職務行為として外形的に認められないため、国家賠償法第1条の適用対象とはならない。
  • 国または公共団体が私人と同一の立場で行う純粋な私経済作用(物品の売買契約等)は、「公権力の行使」に当たらず、同法1条ではなく民法の不法行為規定が適用される。正答
  • 「公権力の行使」には国家賠償法第2条が適用対象とする営造物の設置・管理作用も含まれるため、道路の瑕疵による損害は1条と2条のいずれで請求してもよい。
  • 公権力の行使に当たる行為には、作為のみが含まれ、不作為(行政庁が規制権限を行使しないこと)は原則として含まれない。
正答:国または公共団体が私人と同一の立場で行う純粋な私経済作用(物品の売買契約等)は、「公権力の行使」に当たらず、同法1条ではなく民法の不法行為規定が適用される。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

国家賠償法1条1項の「公権力の行使」は、広く解釈されています。権力的な強制作用だけでなく、行政指導などの非権力的行為も含まれるとするのが判例・通説の立場です(アが誤り)。ただし、国や公共団体が完全に私人と同じ立場で行う純粋な私経済作用(物品の売買・賃貸借等)は「公権力の行使」に含まれません。その場合は民法の不法行為規定(709条)が直接適用されます(ウが正しい)。不作為(規制権限の不行使)も公権力の行使に含まれ、一定の要件のもとで国家賠償責任が成立します(オが誤り)。

標準試験対策の基準レベル

国家賠償法1条の「公権力の行使」の範囲が争点です。広義説(通説・判例)によれば、公権力の行使には次のものが含まれます。①権力的強制作用(行政処分・行政代執行等)、②行政指導などの非権力的作用(事実上の権力的影響を持つもの)、③立法作用・司法作用。これに対し、国や公共団体が純粋に私人と同じ立場で行う行為——物品購入契約・不動産の売買等の私経済作用——は「公権力の行使」に当たらず、国賠法1条ではなく民法709条による責任が問われます(ウが正しい根拠)。

各選択肢の誤りポイントを確認します。アは「行政指導は非権力的だから含まれない」としていますが、判例・通説は広義に解釈し行政指導も含む立場です。イは公立学校の教師が授業中に生徒を殴打した行為について「外形的に職務行為と認められない」としていますが、外形標準説によれば、授業中という時間・場所・状況から外形上職務の範囲内と評価されます(むしろ1条が適用される典型例です)。エは「1条と2条のいずれで請求してもよい」としていますが、営造物の設置・管理の瑕疵は2条が専用の特別規定として適用されます(両者は適用領域が分かれています)。オは「不作為は含まれない」としていますが、判例は規制権限の不行使についても一定要件のもとで1条責任を認めています。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景】

国家賠償法は1947年(昭和22年)に制定され、明治憲法時代の「国家無答責の原則(国家は不法行為責任を負わない)」を廃し、日本国憲法17条の「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」を具体化した法律です。「公権力の行使」の解釈については、①狭義説(権力的強制作用のみ)、②中間説(非権力的事実行為も含む)、③広義説(純粋な私経済作用を除く一切の行政作用)が対立しますが、判例・通説は広義説を採用しています。これにより行政指導・事実行為・不作為など幅広い行政活動が1条の射程に入ります。

【実務・条文構造】

1条と2条の適用区分が実務上の重要な論点です。1条は「公権力の行使」に当たる作用における公務員の故意・過失を要件とする過失責任です。2条は営造物(道路・河川・公共施設等)の設置・管理の瑕疵による損害賠償を定める無過失責任(過失不要)です。道路の陥没・街灯の故障・落石等は2条が専用規定として適用されます(エの誤りの根拠)。純粋な私経済作用(国が企業として物品を購入する場合等)は国賠法の対象外となり、民法709条が直接適用されます。この私経済作用の除外は国賠法の立法趣旨(公権力作用による被害救済)に由来します。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では「公権力の行使の範囲」「1条と2条の適用区分」「私経済作用への国賠法不適用」が定番の問われ方です。特に「行政指導は非権力的だから国賠法1条の対象外」(×:広義説で対象内)と「道路管理の瑕疵は1条でも2条でも選択可能」(×:2条が特別規定)という2種類の誤りが繰り返し出題されます。不作為の国家賠償責任については、最高裁判例(筑豊じん肺訴訟・最判平16.4.27等)が規制権限不行使の違法性を認定するなど蓄積があり、より発展的な論点として出題されることがあります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(誤): 広義説・通説に反する。行政指導による損害(過度な行政指導による営業損害等)も1条の射程内。もっとも行政指導は任意であるため、拒否できる場合には損害との因果関係が問題となる。
  • イ(誤): 外形標準説の理解の誤り。公立学校教師の職務中の暴行は外形上職務行為と評価され、1条責任の対象となる(教師個人への直接請求は判例上原則不可)。
  • ウ(正): 純粋な私経済作用(物品売買等)は国賠法1条の「公権力の行使」に当たらず、民法709条が適用されます。これは広義説のもとでも認められる例外的除外領域です。
  • エ(誤): 道路等の営造物の瑕疵は2条の専用領域。1条と2条は適用区分が分かれており、「どちらでもよい」という選択制はありません。なお公務員の故意・過失(1条要素)が並行して問題となる場合もありますが、これは別途の問題です。
  • オ(誤): 不作為型の国家賠償責任は判例上認められています。要件は「その権限を行使すれば損害を回避できた」「権限不行使が著しく不合理」等。筑豊じん肺訴訟(最判平16.4.27)は国の規制権限不行使の国賠責任を認定した代表例。

【根拠条文】

国家賠償法 第1条第1項(公権力の行使による損害賠償)、民法 第709条(不法行為による損害賠償)

【参照判例】

筑豊じん肺訴訟(最判 平成16年4月27日・規制権限不行使の国賠責任)

【補足】

「公権力の行使」の広義説を前提に「私経済作用だけが除外される」という構造を正確に理解すること。1条と2条の適用区分(過失責任 vs 無過失責任・営造物の専用規定)も必ずセットで覚える。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第1条第1項、民法 第709条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

国賠法1条・公権力の行使の意義頻出度A

行政法の他の問題

1
行政行為の分類・許可・認可・特許の区別
2
行政行為の効力・公定力・国家賠償との関係
3
行政手続法・申請に対する処分・審査基準・理由提示
4
不利益処分・聴聞・弁明の機会の付与
5
行政手続法・行政指導
6
行政不服審査法・審査請求期間・現行法の審査請求中心主義

全365問・科目別に解いて、行政書士に最短合格

行政法・民法・憲法を科目別に攻略。各問に根拠条文・判例とAI解説(3レベル)付き。