行政法92長と議会の関係・再議・不信任議決・解散権

行政書士 行政法 問92:長と議会の関係・再議・不信任議決・解散権

地方自治法に定める地方公共団体の長と議会の関係(再議・不信任議決・解散)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 普通地方公共団体の長は、議会の議決が違法であると認めるときだけでなく、その議決が長の意に沿わないと判断した場合にも、再議に付することができる(一般的拒否権)。
  • 議会が長の提出した予算について修正議決を行った場合、長はその議決を受け入れるか、再議に付するかを選択できるが、再議においても同じ内容の議決がなされた場合、長はその議決に従わなければならない。
  • 議会が長に対する不信任議決を行うためには、議員の総数の過半数が出席し、その3分の2以上の同意があれば足りる。
  • 議会が長に対する不信任議決を行った場合、長は10日以内に議会を解散することができ、議会を解散した場合には失職を免れる。しかし解散後の議会が再度不信任議決をした場合には、長は失職する。正答
  • 普通地方公共団体の長は、地方自治法第178条に基づく議会の不信任議決による解散権(不信任解散)のほかに、議会の議決に不服がある場合に任意に議会を解散する権限(自由解散権)も有する。
正答:議会が長に対する不信任議決を行った場合、長は10日以内に議会を解散することができ、議会を解散した場合には失職を免れる。しかし解散後の議会が再度不信任議決をした場合には、長は失職する。

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エが正しい記述です。地方自治法178条に基づく長と議会の関係を整理します。①議会が不信任の議決を行う(要件:議員総数の3分の2以上出席・出席議員の4分の3以上の同意)→②長は10日以内に議会を解散することができる→③解散しなかった場合または解散後の選挙を経て再構成された議会が再度不信任議決を行った場合(この場合は出席議員の過半数の同意で足りる)→④長は失職する。エの記述(10日以内の解散権・再度の不信任議決で失職)はこの手続きを正確に説明しています。ウは「過半数出席・3分の2以上の同意」としていますが、不信任議決の要件は「議員総数の3分の2以上の出席・出席議員の4分の3以上の同意」であり、数字が誤りです。オは「自由解散権」を認めていますが、長には自由解散権はなく、解散できるのは不信任議決があった場合のみです。

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長と議会の関係における主要規定を整理します。再議(ア・イの関連): 長が議会の議決に異議がある場合、理由を示して再議に付することができます(地自法176条1項)。これを「一般的拒否権(一般再議)」といいます。アは「意に沿わない場合にも」再議できるとしており、この点は一般的拒否権の範囲では正しいですが、「違法であるときだけでなく」という限定的な書き方が正確ではありません——長は議決が不当と考えれば再議に付することが認められています(より広い)。ただし再議(再議決)で同じ内容の議決がなされた場合、長はその議決に従わなければなりません(イ正しい・ただしイ自体は複合的な論点)。不信任議決と解散権(ウ・エ・オの関連): 不信任議決の要件は「議員総数の3分の2以上の出席・出席議員の4分の3以上の同意」です(地自法178条3項)。ウは「過半数出席・3分の2以上同意」としており数字が誤りです。長の解散権は「10日以内」(地自法178条1項・エ正しい)。解散後の選挙で構成された議会が再度不信任議決をした場合は「出席議員の過半数の同意」で足り(再議決の要件緩和)、長は失職します(地自法178条3項・エ正しい)。長の自由解散権(オ誤り): 長には一般的な自由解散権はありません。解散できるのは不信任議決があった場合のみ(地自法178条)。これは国会の解散権(内閣の69条解散・7条解散が認められている)と異なる地方自治法の特徴です。

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【理論的背景】

地方自治法における長と議会の関係は、「二元代表制」(長と議会の双方が住民によって直接選挙される)を採用しています。これは国会・内閣の「議院内閣制(内閣は議会の信任に基づく)」と根本的に異なります。二元代表制では、長と議会の両方が住民から直接の民主的正当性を得るため、長は議会の不信任にも対抗できる解散権を持ちます。一方、長に自由解散権を認めると議会を恣意的に解散できてしまうため、解散権は「不信任議決があった場合に限る(178条)」に限定されています(オが誤りとなる理由)。長が解散権を行使して選挙で再構成された議会が再度不信任議決を行った場合、それは住民の意思が「長より議会の立場を支持する」と判断されたとみなし、長は失職します(民主的正当性の再確認)。

【実務・条文構造】

長・議会の関係の主要条文を体系的に整理します。①長の一般的拒否権・任意的再議(176条1項〜3項): 長の不服による再議。再議に付された条例・予算は出席議員の3分の2以上の賛成で再議決すれば原案確定→長は従う。②権限超過・違法議決等の義務的再議(176条4項〜8項): 議決・選挙が権限を超え又は法令・会議規則に違反すると認めるとき、長は再議に付し又は再選挙させなければならず、なお違反するときは総務大臣・知事への審査申立て・出訴ができる。③義務費等の削除減額への義務的再議(177条): 義務費・非常災害費等を議会が削除・減額した場合の再議。④不信任議決と長の解散権(178条): 不信任議決の要件(議員総数の3分の2以上出席・出席議員の4分の3以上同意)→10日以内に長が解散可→解散後の議会再構成→再度の不信任議決(出席議員の過半数で足りる)→長失職。⑤専決処分(179条): 議会が議決すべき事項を議決しない場合等に長が専決処分できる。再議の「3分の2以上」と不信任議決の「4分の3以上」という数字の区別が試験の核心です。

【試験での位置づけ】

長と議会の関係は行政書士試験の頻出論点です。特に「不信任議決の要件(3分の2出席・4分の3同意)」「10日以内の解散権」「再度の不信任で長失職」「長に自由解散権なし(不信任解散のみ)」の4点が毎年問われます。再議の「3分の2以上の議決で原案維持→長は従う」も頻出です。国の議院内閣制(内閣の解散権・69条解散・7条解散)と地方の二元代表制(不信任解散のみ)の対比も意識してください。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(ほぼ正・ただし不正確): 長は「意に沿わない場合」も「違法と考える場合」も再議に付することができます。ただし「意に沿わないときだけでなく違法なときも」という書き方は論点の区別を曖昧にしています。一般的拒否権(176条1項)と違法・越権議決の義務的再議(176条4項)は別規定で異なる性質を持ちます。
  • イ(正): 再議で同じ内容の議決がなされた場合(再議決)には長は従う義務があります(一般再議では再議決で3分の2以上の賛成が必要)。
  • ウ(誤): 不信任議決の要件は「議員総数の3分の2以上の出席・出席議員の4分の3以上の同意」(地自法178条3項)。ウの「過半数出席・3分の2以上同意」は数字が誤りです。なお解散後の議会による再度の不信任議決は「出席議員の過半数」で足ります(同条3項後段)が、最初の不信任議決の要件と混同させる引っかけです。
  • エ(正・正答): 不信任議決後の解散権(10日以内)と再度の不信任議決による長の失職という手続きを正確に一貫して説明しています。
  • オ(誤): 長に自由解散権はありません。解散権は不信任議決があった場合(178条)のみ。国の内閣が持つ7条解散(任意解散)のような制度は地方自治法にはありません。

【根拠条文】

地方自治法 第176条(長の拒否権・一般的再議)、第178条(不信任議決と長の解散権・失職)

【補足】

「不信任議決=3分の2以上出席・4分の3以上同意」「解散権行使は10日以内」「再度の不信任(過半数)→長失職」「長に自由解散権なし(不信任解散のみ)」の4点セットを正確に暗記。再議の3分の2と不信任の4分の3の数字を混同しないこと。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第176条(再議)、第178条(不信任議決と長の解散・失職) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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