行政書士 商法・会社法 問4:商号・商号選定の自由と制限
商号に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア商人は原則として自由に商号を選定できるが、会社でない者が商号中に「会社」という文字を使用することは禁じられている。
- イ他人が登記した商号と同一の商号は、その営業所(会社にあっては本店)の所在場所が当該他人の商号登記に係る所在場所と同一であるときは、登記することができない。
- ウ他の商人の商号であっても、不正競争の目的がなければ同一または類似の商号を使用することは一切制限されない。正答
- エ会社の商号には、その種類(株式会社・合同会社等)に応じた文字を含めることが会社法上の義務とされている。
- オ商人が不正の目的をもって他の商人と誤認させるような商号を使用した場合、その商人は差止請求および損害賠償請求を受けることがある。
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商号とは、商人が営業上自己を表す名称です。商号選定は原則自由ですが(商法11条)、重要な制限があります。①不正の目的で他の商人と誤認させる名称・商号の使用禁止(商法12条)。②同一の所在場所における同一商号の登記禁止(商業登記法27条)。③「会社」等の文字を使用した誤認させる商号の禁止(会社法7条・8条)。ウが誤りで、「不正競争の目的がなければ一切制限されない」は誤りです。不正の目的がない場合でも、同一所在場所での同一商号登記は禁止されており、不正競争防止法による規制も別途存在します。アは会社法7条ベースで正しく、イは商業登記法27条の趣旨(同一性のある商号の登記制限)に基づき正しい記述です。
商号の選定と制限の体系を整理します。自由の原則: 商人は氏名その他の名称を商号として選定できますが(商法11条)、以下の制限があります。①会社種類文字の義務: 株式会社・合同会社・合資会社・合名会社はそれぞれ種類名称を商号に含めることが会社法6条2項・3項で義務付けられています(エ正しい)。②誤認商号の禁止: 会社でない者が商号中に「会社」と使うことを会社法7条が、会社が他の種類の会社と誤認させる商号を使うことを会社法8条が禁止しています(ア正しい)。③同一所在場所での同一商号登記禁止: 他人が登記した商号と同一の商号を、同一の所在場所で登記することは商業登記法27条により禁止されています(イ正しい)。④不正目的による誤認商号使用禁止: 商法12条1項は「何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」と規定し、同条2項で営業上の利益を侵害される(おそれのある)商人の差止請求権が認められます(オ正しい・損害賠償は不正競争防止法・民法709条等で別途追及可)。ウが誤りで、「不正競争目的がない場合は一切制限されない」わけではなく、同一商号の登記禁止(③)や不正競争防止法による規制が別途存在します。
【理論的背景】
商号は、商人のアイデンティティを外部に示す機能(識別機能)と、その信用・顧客吸引力(のれん)を体現する機能(信用機能)を持ちます。商号保護の根拠は、第一に、長年にわたって積み上げた信用・ブランドを保護する財産権的観点、第二に、消費者・取引相手が商号によって相手方を識別し安全な取引ができるようにする取引安全の観点にあります。商号の選定が原則自由である理由は、商人の営業の自由・表現の自由の観点から不必要な制限を課さないことにあり、一方で制限が設けられるのは「他者の信用・取引相手の混同防止」という公共的利益のためです。不正競争防止法との競合については、商法12条による商人間の規律と不正競争防止法による一般的な競争秩序維持との二層構造があります。
【条文構造】
会社法6条2項は「会社は、その種類に従い、その商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない」と規定し、商号中に種類文字を含めることを義務付けています(同条3項は他の種類と誤認される文字の使用禁止)。会社法7条は「会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない」、会社法8条は「何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」と規定します。商法12条1項は不正の目的による他の商人との誤認名称・商号使用を禁じ、同条2項で侵害された商人の差止請求権を認めています(違反は商法13条で100万円以下の過料)。同一商号の登記禁止は商業登記法27条が「他人が登記した商号と同一の商号を、その営業所(会社にあっては、本店)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、登記することができない」と規定しています(旧商法19条の「同一市区町村・同種営業」要件は会社法・商業登記法への移行に伴い「同一所在場所」基準に改められている)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では商号の問題は、①会社種類文字の義務、②「会社」等の誤認使用禁止、③不正競争目的の効果(差止・損賠)、④同一商号登記禁止の範囲(市区町村・同種)の4点から問われます。本問ウの「不正競争目的がなければ一切制限なし」という誤りは典型的な引っかけです。商号が選定後に登記されることで対抗力が生じる点(商業登記との接続)も重要です。また、会社法と商法の適用関係(会社には会社法が優先適用され商法は補完的に適用)も整理しておくべき論点です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。会社法7条により、会社でない者が「会社」等の誤認させる文字を商号に使うことは禁止されている(違反した場合、差止・損賠の対象になりうる)。
- イ: 正しい。商業登記法27条による同一所在場所での同一商号の登記禁止。ただし「類似」商号は登記禁止の対象外(不正の目的がある場合は別途商法12条で規制)。
- ウ: 誤り。不正の目的がない場合でも、①同一所在場所での同一商号登記禁止(商業登記法27条)、②不正競争防止法による規制が適用される場合があり、「一切制限されない」は過剰。
- エ: 正しい。会社法6条2項が種類文字(株式会社・合名会社等)を商号に含める義務を規定している。
- オ: 正しい。商法12条1項(不正の目的による誤認名称・商号使用禁止)・同条2項(差止請求)。損害賠償は不正競争防止法・民法709条で追及可。会社法8条(不正目的による誤認商号使用禁止)も同趣旨。
【根拠条文】
商法 第11条(商号の選定)
商法 第12条第1項・第2項(不正の目的による誤認名称・商号使用の禁止・差止)
商業登記法 第27条(同一所在場所での同一商号の登記禁止)
会社法 第6条第2項・第3項(会社の商号・種類文字の義務)
会社法 第7条(会社でない者の誤認商号使用禁止)
会社法 第8条(不正目的による他の会社誤認商号使用禁止)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 商法第11条(商号の選定)、商法第12条(他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止・差止)、商業登記法第27条(同一商号・同一本店の登記禁止)、会社法第6条(会社の商号)、会社法第7条・第8条(会社と誤認させる商号等の使用禁止) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。