商法・会社法5支配人の権限・表見支配人

行政書士 商法・会社法 問5:支配人の権限・表見支配人

支配人および表見支配人に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 支配人の選任および代理権消滅は商業登記の対象であり、登記することができる。正答
  • 支配人は、商人の許可なく、自己または第三者のために営業の部類に属する取引をすることができる。
  • 支配人は商人に代わって営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有するが、その権限に内部的制限を加えた場合には、その制限を知らない第三者にも対抗できる。
  • 本店または支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人(表見支配人)について、その使用人と取引した相手方は、常に支配人と同一の権限を有したものとして保護される。
  • 支配人は商人から選任された者のみが就任でき、法人が支配人となることは認められていない。
正答:支配人の選任および代理権消滅は商業登記の対象であり、登記することができる。

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支配人とは、商人から選任され、その営業に関する包括的代理権を付与された商業使用人です(商法21条)。支配人の代理権は包括的であり、内部的制限は善意の第三者に対抗できません(商法21条3項)。したがってウは誤りです。支配人は競業禁止義務を負い(商法23条)、商人の許可なく自己・第三者のために営業の部類に属する取引はできないのでイは誤りです。表見支配人(商法24条)は、主任等の名称を付けた使用人で、善意の第三者には支配人と同一の権限を有するとみなされますが、悪意者は保護されないためエは「常に」という点が誤りです。アが正しく、支配人の選任・代理権消滅は商業登記の登記事項(商法22条)です。

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支配人制度の各論点を整理します。支配人の権限(商法21条1項):商人に代わって、その営業に関する「一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」包括的権限。同条3項:「支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」。つまり内部制限があっても外部には対抗不可(ウ誤り)。競業禁止(商法23条):支配人は商人の許可を受けなければ、自己・第三者のために営業の部類に属する取引や他の会社・商人の支配人・使用人を兼任することができない(イ誤り)。支配人の登記(商法22条):支配人の選任および代理権の消滅が登記事項として定められており、登記前は善意の第三者に代理権消滅を対抗できない(ア正しい)。表見支配人(商法24条):本店・支店の事業の主任者であることを示す名称(部長・店長・支店長等)を付した使用人は、相手方が悪意(権限のないことを知っていた)でない限り支配人と同一権限を有するとみなされます(エ:「常に」は誤り・悪意者は除外)。支配人に法人が就任できるかは規定上排除されていませんが(商法は「者」と規定)、実際には法人が使用人となることは通常ありません(オ:一般に制限規定はなく法人も理論上は可)。

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【理論的背景】

支配人制度は、商人が多数の営業所を展開し直接指揮監督できない場面で、商人に代わって包括的権限を持つ代理人を置くことで取引の迅速性・確実性を確保するための制度です。支配人の権限が包括的(裁判上・裁判外・一切の行為)である理由は、取引相手が「この支配人は何ができるか」を一々確認する必要をなくし、取引の円滑を促進するためです。表見支配人(商法24条)は、実際には支配人の選任手続を経ていないが、主任者であることを示す名称(「〇〇部長」「〇〇支店長」等)を付けられた使用人について、その外観(apparent authority)を信頼した取引相手を保護する制度です。英米法のapparent authorityに類似した機能を持ちますが、日本法では「悪意」の場合に保護を否定する点が特徴です。競業禁止義務は、支配人が商人の内部情報・顧客情報・ノウハウを持つことから、利益相反防止のために課されています。

【条文構造】

商法21条は支配人の権限を規定し、1項(包括的権限)・2項(数商人の共同支配人の場合)・3項(内部制限の善意第三者への非対抗)の3項構成です。商法22条は登記事項として「支配人の選任及び代理権の消滅」を定め、これは強制登記事項(義務的登記)です。商法23条は競業禁止を定め、許可なき競業取引・兼業を禁止しています(違反した場合は商人は当該取引を自己のためにした取引とみなせる「介入権」を行使できます:同条2項)。商法24条は表見支配人を規定し、「営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす」とした上で、「相手方が悪意であったときは、この限りでない」とする但書を置いています。表見支配人にみなされる権限は裁判外の行為に限られる点(真正の支配人=裁判上・裁判外の一切の行為と異なる点)に注意が必要です。悪意とは権限の欠如を「知っていた」場合をいい、過失があるだけでは悪意にはあたりません(ただし重過失を悪意と同視する解釈もあり)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での支配人の問われ方は、①包括的権限と内部制限の非対抗(21条3項)、②競業禁止(23条)、③支配人登記の効力(22条)、④表見支配人と悪意の第三者(24条ただし書)の4点が典型です。本問では特に①(内部制限は善意者に対抗不可→ウが誤り)と④(表見支配人は悪意者は保護されない→エの「常に」が誤り)がポイントです。正答はア(支配人の選任・代理権消滅=商業登記の登記事項)。支配人と表見支配人の区別、表見支配人と民法の表見代理(民法109条・110条・112条)との比較も整理しておくべき論点です(商法24条は名称による外観の保護という特別規定であり、民法の表見代理とは別に機能します)。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。商法22条が支配人の選任・代理権消滅を登記事項として定める。強制登記事項であり、未登記の間は善意の第三者に代理権消滅を対抗できない。
  • イ: 誤り。商法23条1項が競業禁止を規定。許可なく営業の部類に属する取引・他の会社の取締役等を兼任することは禁止。違反時は商人が介入権を行使できる(同条2項)。
  • ウ: 誤り。商法21条3項「支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」。内部制限があっても善意の第三者には対抗不可(「制限を知らない第三者にも対抗できる」は逆で誤り)。
  • エ: 誤り。商法24条ただし書「相手方が悪意であったときは、この限りでない」として悪意者の保護を否定。「常に」保護されるわけではない。
  • オ: 誤り。商法は支配人を「者」(自然人・法人両方を含む)と規定しており、法人が支配人に就任することを明示的に禁止する規定はない。ただし実務上は自然人が選任される。

【根拠条文】

商法 第21条第1項・第3項(支配人の権限・内部制限の非対抗)

商法 第22条(支配人の登記)

商法 第23条第1項・第2項(競業禁止・介入権)

商法 第24条(表見支配人・悪意者の除外)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 商法第21条(支配人の権限)、商法第22条(支配人の登記)、商法第23条(競業の禁止)、商法第24条(表見支配人) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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