行政書士 憲法 問13:適正手続・憲法31条・行政手続への適用
憲法第31条が定める適正手続の保障に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして**誤っているもの**はどれか。
- ア憲法第31条の「法律の定める手続によらなければ」という文言は、刑事手続だけでなく、刑事実体法(処罰される行為の内容・刑罰の内容)についても適正手続の要請が及ぶと解されている。
- イ第三者所有物没収事件において、最高裁は、被告人以外の第三者の所有物を没収するにあたって当該第三者に告知・弁解・防御の機会を与えないことは、憲法31条・29条に違反すると判示した。
- ウ憲法31条の適正手続の保障は、純粋に刑事手続にのみ適用があり、行政手続については一切及ばないとされている。正答
- エ成田新法事件において、最高裁は、憲法31条の保障が行政手続に及ぶとしても、行政手続の性質・目的等の違いに応じて手続保障の程度は異なりうると判示した。
- オ適正手続の保障の内容として、①適正な法律によって罪刑を定めること(罪刑法定主義)と②適正な手続によること(告知・聴聞等)の双方が含まれると解されている。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
ウが誤りです。成田新法事件(最大判平4.7.1)において最高裁は、憲法31条の保障が「行政手続に及ぶ場合がある」と判示しました。「一切及ばない」とする記述(ウ)は、この判例と正反対です。ただし、行政手続に及ぶ場合でも、行政手続の性質・目的によって手続保障の程度は異なりうるとされており(エが正しい)、刑事手続と同等の手続保障が常に必要とされるわけではありません。アは正しく(31条は実体規定にも及ぶ)、イは正しく(第三者所有物没収事件)、オは正しい(罪刑法定主義と手続の双方)。
憲法31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と定めます。この条文の意味については3つの論点があります。①実体規定への適用: 「手続」だけでなく刑事実体法(何が犯罪か・刑罰の内容)も適正でなければならないとする解釈が通説・判例です(アが正しい)。②第三者手続保障: 第三者所有物没収事件(最大判昭37.11.28)は、第三者への告知・聴聞の機会なしに財産を没収することが31条・29条に違反すると判示(イが正しい)。③行政手続への適用: 成田新法事件(最大判平4.7.1)は「31条の保障が行政手続に及ぶ場合がある」としつつ、行政手続の性質・目的によって手続保障の程度は変わりうるとしました(ウの「一切及ばない」が誤りで、エが正しい根拠)。行政手続法(1993年制定)が整備されたことで、行政手続への手続保障は立法レベルでも充実しています。
【理論的背景】
デュー・プロセス(適正手続)原則はアメリカ憲法第5修正・第14修正に由来し、①実体的デュー・プロセス(処罰される行為・刑罰の内容の適正性)と②手続的デュー・プロセス(告知・聴聞等の公正な手続)の二側面を持ちます。日本の憲法31条はこの趣旨を継受しており、通説・判例は手続だけでなく実体(罪刑法定主義の内容)にも適正手続の要請が及ぶと解しています(アが正しい理由)。
【実務・条文構造】
第三者所有物没収事件(最大判昭37.11.28)の意義:被告人に連座する形で第三者が所有する物が没収される場合、その第三者に対して告知・弁解・防御の機会を与えないことは、憲法31条(手続の適正)・29条(財産権保障)の要請に反するとしました。本判例は、憲法31条の保障が「直接の被告人以外の者(第三者)」にも及びうることを示した点で重要です。
成田新法事件(最大判平4.7.1)のポイント:新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(成田新法)に基づく工作物使用禁止命令を行政庁が発令する際に、聴聞手続を要求しない規定の合憲性が争われました。最高裁は「行政手続は、刑事手続とその性質において異なり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知・弁解・防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容・性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容・程度・緊急性等を総合較量して決定されるべき」とし、緊急性・公益の観点から聴聞なしでも合憲とする余地を認めました。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では、成田新法事件が「31条は行政手続にも及ぶが、行政手続の性質に応じて保障の程度は異なる」という命題で問われます。「31条は刑事手続のみ→×」「31条は行政手続にも無条件に刑事手続と同等の保障→×」「31条は行政手続にも及ぶが程度は異なる→○」という3段構えが頻出です。行政手続法との接続(立法による具体化)も重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。31条は「手続」だけでなく、罪刑法定主義の内容(実体)にも及ぶ(通説・判例)。
- イ: 正しい。第三者所有物没収事件(最大判昭37.11.28)。第三者への告知・聴聞機会なしの没収を31条・29条違反と判示。
- ウ: 誤り(正答)。成田新法事件(最大判平4.7.1)は「行政手続に及ぶ場合がある」と判示。「一切及ばない」は明確に誤り。
- エ: 正しい。成田新法事件の判旨。行政手続に31条が及ぶ場合でも、手続保障の程度は行政目的・緊急性等に応じて異なる。
- オ: 正しい。適正手続の二側面(実体の適正=罪刑法定主義・手続の適正=告知聴聞等)は通説の理解として正確。
【根拠条文】
日本国憲法 第31条(適正手続)、第29条(財産権)
【参照判例】
第三者所有物没収事件(最大判 昭和37年11月28日)、成田新法事件(最大判 平成4年7月1日)
【補足】
「31条が行政手続に及ぶか」→「及ぶ場合がある(成田新法事件)」「ただし程度は行政手続の性質次第」という二段階の答えを覚えること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第31条(適正手続) 判例: 第三者所有物没収事件(最大判 昭和37年11月28日)、成田新法事件(最大判 平成4年7月1日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。