行政書士 憲法 問2:法の下の平等・非嫡出子相続分・再婚禁止期間
憲法第14条が保障する「法の下の平等」に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして**誤っているもの**はどれか。
- ア法の下の平等は絶対的平等を要求するものではなく、事柄の性質に応じた合理的な差別は許容される。
- イ嫡出でない子(非嫡出子)の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、最高裁大法廷決定(平成25年)により違憲とされた。
- ウ女性についてのみ一定期間の再婚禁止を定めていた民法の規定は、その全部が憲法に違反するものとして最高裁判所に否定された。正答
- エ尊属殺人に対して通常殺人より著しく重い刑罰を定めた旧刑法の規定は、立法目的は正当であっても刑罰の加重程度が合理的範囲を超えるとして違憲とされた。
- オ憲法第14条第1項後段に列挙された事由は例示であり、性別・社会的身分以外の事由による差別も同条の審査対象となる。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
ウが誤りです。再婚禁止期間については、最高裁大法廷(平成27年12月16日)は「100日を超える部分は違憲」と判断しましたが、100日以内の再婚禁止は合憲としており、全部違憲とは判断していません。「その全部が憲法に違反する」という記述が誤りです。アは正しく(合理的差別は許容)、イは正しく(非嫡出子相続分規定は違憲)、エは正しく(尊属殺重罰規定の加重程度が違憲)、オは通説・判例の立場として正しいです。
ウが誤りの理由を整理します。再婚禁止期間訴訟(最大判平27.12.16)において、最高裁は民法の旧再婚禁止期間規定(6か月間)を全部違憲とはせず、「父性推定の重複を避けるために必要な100日を超える部分は過剰な制約であり違憲」と判示しました。したがって、100日以内の部分は合憲とされています。「その全部が憲法に違反する」というウの記述は判例の趣旨に反します(※なお、2024年(令和6年)4月1日施行の民法改正により再婚禁止期間そのものが廃止されています。試験問題化の際は現行法に注意)。イの非嫡出子相続分(最大決平25.9.4)は、法律婚の尊重という立法目的が合理性を失い遅くとも平成13年7月の時点で違憲となっていたと判断。エの尊属殺重罰(最大判昭48.4.4)は刑罰の加重程度が合理的限度を超えると判示。いずれも正しい記述です。
【理論的背景】
憲法14条1項は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めます。最高裁は一貫して「合理的差別は許容される」という相対的平等説を採用しており、差別の合理性を審査基準として用います。後段列挙事由(人種・信条・性別・社会的身分・門地)は例示にすぎず(オが正しい理由)、審査強度については列挙事由に関わる場合に厳格度が高まるとする見解が有力です。
【実務・条文構造】
再婚禁止期間(最大判平27.12.16):旧民法733条が女性のみ6か月の再婚禁止を定めていた点につき、最高裁は「父性推定の重複回避」という目的の正当性を認めつつ、その目的達成に必要な期間は100日で足り、6か月は100日を超える部分において過剰な制約として憲法14条1項・24条2項に違反すると判示しました。「全部違憲」ではなく「100日超部分のみ違憲」が正確な判旨です。なお、2024年(令和6年)4月1日施行の民法改正(令和4年・法律102号)により女性の再婚禁止期間は廃止されており(民法733条削除)、現行法では再婚禁止期間そのものが存在しません。試験問題の論点としては「当時の判例の射程・判旨の正確な理解」を問う形で出題されます。
【試験での位置づけ】
行政書士試験の平等権問題では、以下の3判例が最頻出です。
1. 尊属殺重罰違憲(最大判昭48.4.4):「立法目的正当・但し加重度が過大で違憲」という二段階判断の構造を正確に理解する。
2. 非嫡出子相続分違憲決定(最大決平25.9.4):時点的判断(遅くとも平成13年7月時点で違憲)と遡及適用の問題。
3. 再婚禁止期間判決(最大判平27.12.16):「一部違憲」の構造。「全部」か「一部」かは試験の典型的引っかけポイント。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。絶対的平等(全人全部同一)ではなく相対的平等(合理的区別は許容)が通説・判例。
- イ: 正しい。最大決平25.9.4は、嫡出子と非嫡出子を区別して相続分を2:1とする民法900条4号ただし書(当時)を違憲と判断。既に法律も改正されている。
- ウ: 誤り。「全部違憲」ではなく「100日超部分が違憲」。最大判平27.12.16の正確な判旨を押さえること。
- エ: 正しい。尊属殺重罰規定(旧刑法200条)について、最大判昭48.4.4は「尊属への尊重・報恩という立法目的は正当」としつつ、「死刑又は無期懲役のみとする刑の加重の程度が甚だしく合理的限度を超える」として違憲と判断した。目的正当性と手段の過剰性の二段審査の嚆矢的判例。
- オ: 正しい。後段の5事由は例示(典型的差別事由として挙げたもの)であり、それ以外の事由(年齢・障害・国籍等)についても14条1項の保障が及ぶのが通説。
【根拠条文】
日本国憲法 第14条第1項(法の下の平等)
【参照判例】
尊属殺重罰規定違憲判決(最大判 昭和48年4月4日)、非嫡出子相続分違憲決定(最大決 平成25年9月4日)、再婚禁止期間一部違憲判決(最大判 平成27年12月16日)
【補足】
再婚禁止期間は2024年(令和6年)4月1日施行の民法改正(令和4年・法律102号)で廃止済み(成立・公布は2022年12月、施行は2024年4月1日)。判例問題として「100日超のみ違憲」という判旨の正確な理解を問われる点に注意。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第14条第1項 判例: 非嫡出子相続分違憲決定(最大決 平成25年9月4日)、再婚禁止期間違憲判決(最大判 平成27年12月16日)、尊属殺重罰規定違憲判決(最大判 昭和48年4月4日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。