憲法17学問の自由・大学の自治・東大ポポロ事件

行政書士 憲法 問17:学問の自由・大学の自治・東大ポポロ事件

学問の自由(憲法23条)及び大学の自治に関する次の記述のうち、**最高裁判所の判例の趣旨に照らして正しいもの**はどれか。

  • 憲法23条が保障する学問の自由には、研究の自由・研究成果発表の自由・教授の自由が含まれるが、大学以外の初等中等教育機関の教師にも完全に同一の教授の自由が保障される。
  • 大学の自治は、教授その他の研究者からなる教授会が自主的に行うものとされ、その主体は教授会であって、学生は大学の自治の主体ではない。正答
  • 警察官が大学構内に立ち入って学生集会を監視・捜査することは、大学の自治の保障のもとにある学問の研究に直接支障をきたすものではないため、大学側の要請がなくても許容される。
  • 学問の自由は「学者・研究者」にのみ保障される権利であり、一般市民や企業は憲法23条の保護を受けることができない。
  • 大学における学生の集会は、その目的が学問的な研究・討論であるか実社会の政治的社会的活動であるかを問わず、大学構内で行われる以上は常に大学の自治の保護が及ぶ。
正答:大学の自治は、教授その他の研究者からなる教授会が自主的に行うものとされ、その主体は教授会であって、学生は大学の自治の主体ではない。

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憲法23条は学問の自由を保障し、その制度的保障として「大学の自治」が認められています。東大ポポロ事件(最大判昭38.5.22)において、最高裁は「大学の自治の主体は教授その他の研究者であって、学生は大学の自治の主体ではない」と判示しました。これがイの根拠です。アは「初等中等教育機関の教師にも完全に同一の教授の自由が保障される」としている点が誤りです(旭川学テ事件で教師の教授の自由は一定の制限に服するとされています)。ウは警察が大学側の要請なく立ち入れるとしている点が誤りです。オは「学生の集会は目的を問わず常に大学の自治の保護が及ぶ」としている点が誤りです。ポポロ事件は、学生集会が真に学問的研究・発表のためのものでなく実社会の政治的社会的活動にあたる場合には大学の自治の保護を受けないと判示しており、「目的を問わず常に保護が及ぶ」わけではありません。正答はイです。

標準試験対策の基準レベル

東大ポポロ事件(最大判昭38.5.22)は、東京大学内で行われた演劇団体「ポポロ」の公演に警察官が私服で立ち入り情報収集を行ったことの可否が問われた事件です。最高裁は以下の重要な判示をしました。①「大学の自治は大学における学問の自由を保障するためのものであり、その主体は教授その他の研究者であって、学生は大学の自治の直接の主体ではない」(イの根拠)。②「学生集会が真に学問的研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の自治の保護を受けることができない」。この判旨からすると、ウ(大学側の要請なく警察が立ち入れる)は誤りであり、原則として警察が大学内に立ち入るには大学側の要請・承認が必要です。ただし、当該集会が純粋に政治的・社会的活動にすぎないと認められる場合は別論です。オについて、「目的を問わず常に大学の自治の保護が及ぶ」というのは上記②の判旨(政治的社会的活動には保護が及ばない)に反するため誤りです。正答はイです。

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【理論的背景】

憲法23条「学問の自由」は、①学術研究の自由(思想の自由の学術版)、②研究成果発表の自由、③教授の自由(研究者が教育機関で自由に教授する権利)の3要素からなるとされます。大学の自治は、大学が外部勢力(国家・政治権力)の干渉から自律的に学術活動を行えるよう保障するための制度的保障です。歴史的背景として、軍国主義時代の学問弾圧(天皇機関説事件等)への反省から憲法23条が明文化された経緯があります。

【実務・条文構造】

東大ポポロ事件(最大判昭38.5.22)は大学の自治の主体と範囲を画定した先例です。判旨の骨格は次の3点です。第1に、大学の自治の主体は「教授その他の研究者」であり、学生はその主体ではない(イが正答である根拠)。第2に、大学構内への警察の立入り・捜査は、大学の自治の侵害となりうるため、原則として大学当局の要請・承認がない限り許されない(ウが誤りである根拠)。第3に、学生集会が実質的に政治的活動にすぎないのであれば、大学の自治の保護を受けられない。この事件では、演劇公演が実質的に政治集会であったと判断され、警察官の立入りは違法ではないとされました(結論的には警察の立入りを容認しましたが、それは大学の自治の「主体不存在」ではなく「集会の性質」を理由とした判断です)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における学問の自由・大学の自治の出題ポイントは3つです。①大学の自治の主体は「教授・研究者」であり「学生ではない」(最頻出)。②初等中等教育の教師の教授の自由は大学教授のそれより制限される(旭川学テ事件・最大判昭51.5.21。アが誤りである根拠)。③警察の大学内立入りには原則として大学の同意が必要。アについて補足すると、旭川学テ事件は「初等中等教育の教師にも一定の教授の自由が保障されるが、完全な自由ではなく、学習指導要領等による規制に服する」という立場を採り、大学教授の教授の自由とは性質・範囲が異なるとしています。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。旭川学テ事件(最大判昭51.5.21)は、初等中等教育の教師の教授の自由は大学教授のそれとは異なり、国家の教育内容への関与(学習指導要領等)は一定の範囲で許容されると判示した。「完全に同一」という断定が誤り。
  • イ: 正答。東大ポポロ事件(最大判昭38.5.22)の判旨を直接再現したもの。「大学の自治の主体は教授その他の研究者であって、学生は主体ではない」。
  • ウ: 誤り。大学の自治の保障から、警察の大学内立入りには原則として大学当局の要請・承認が必要。ポポロ事件では当該集会が政治的活動であると判断されたから警察の立入りが許容されたのであり、「大学側の要請がなくても許容される」という一般命題は誤り。
  • エ: 誤り。学問の自由は「学者・研究者」のみに限定された権利ではなく、すべての人が学問的研究を行う自由を持つ(市民の学術活動も憲法23条の保護を受けうる)。ただし、大学の自治の制度的保障は大学組織に特有のもの。
  • オ: 誤り。ポポロ事件は、学生集会が真に学問的研究・発表のためのものでなく実社会の政治的社会的活動にあたる場合には大学の自治の保護を受けないと判示している。「目的を問わず常に大学の自治の保護が及ぶ」とするオは、この判旨に反するため誤り。

【根拠条文】

日本国憲法 第23条(学問の自由)

【参照判例】

東大ポポロ事件(最大判 昭和38年5月22日)

旭川学テ事件(最大判 昭和51年5月21日)

【補足】

大学の自治の「主体は教授・研究者であって学生ではない」という命題はポポロ事件の核心。学生の集会が大学の自治の保護を受けるためには「真に学問的目的」であることが必要という要件も正確に押さえること。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第23条(学問の自由) 参照判例: 東大ポポロ事件(最大判 昭和38年5月22日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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