憲法37憲法改正・96条・発議要件・国民投票

行政書士 憲法 問37:憲法改正・96条・発議要件・国民投票

憲法改正の手続(憲法96条)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 憲法改正の発議は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成によって行われる。この「総議員」の意味については、在籍議員全員を指すという説が通説であり、欠員がある場合でも定数を基準にするという解釈は採られていない。
  • 憲法改正の国民投票は、特別の投票または議員総選挙の際に行われる投票において、有権者の過半数の賛成を得ることが必要である。
  • 国民投票による承認後、内閣総理大臣が直ちに公布するが、公布の期限については憲法96条に特に定めはない。
  • 最高裁判所は、日本国憲法の基本原理(国民主権・平和主義・基本的人権の保障)は「改正限界」として改正の対象にはなりえず、これらを変更する憲法改正は一切許されないと明示的に判示している。
  • 日本国憲法96条の改正手続(各議院の3分の2以上の発議・国民投票による承認)は、通常の立法手続よりも厳重な要件が課されており、この性格から日本国憲法は「硬性憲法」に分類される。正答
正答:日本国憲法96条の改正手続(各議院の3分の2以上の発議・国民投票による承認)は、通常の立法手続よりも厳重な要件が課されており、この性格から日本国憲法は「硬性憲法」に分類される。

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憲法96条は、①各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、②特別の国民投票または総選挙の際に行われる投票において、有効投票の過半数の賛成を得て、③天皇が国民の名で直ちに公布するという手続を定めています。この手続は通常の法律制定手続(法律案は出席議員の過半数で可決)よりも厳格であり、こうした改正が難しい憲法を「硬性憲法」と呼びます(オが正答)。イは「有権者の過半数」としている点が誤りです(「有効投票の過半数」が正しく、棄権者は分母に含まれない)。ウは「内閣総理大臣が公布する」としている点が誤りです(天皇が公布します)。エについて、最高裁が改正限界を「明示的に判示した」という事実はなく誤りです。

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憲法96条の改正手続を正確に整理します。①発議要件:各議院の総議員の3分の2以上の賛成(衆参両院それぞれで3分の2以上が必要)。「総議員」の解釈については、在籍議員全員とする説(欠員を含まない現員数説)と定数全員とする説(欠員分も含む定数説)があり、いずれが通説かについては争いがあります(アが「在籍議員説が通説・定数説は採られていない」と断定している点が正確でない)。②国民投票による承認:「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票」において、「その過半数の賛成」を必要とします(96条1項)。条文上「過半数」は有効投票の過半数と解されており(国民投票法)、「有権者の過半数」ではありません(イが誤りである根拠)。③公布:天皇が国民の名で直ちに公布(96条2項)。公布は内閣総理大臣ではなく天皇(ウが誤りである根拠)。改正限界論(エ)については、学説上「改正限界あり説(基本原理は改正不可)」と「改正無限界説(96条の手続を経れば何でも改正可能)」が対立しますが、最高裁が明示的に判示した判例はなく(エが「最高裁が明示的に判示している」としている点が誤り)、学説上の議論にとどまります。オは硬性憲法の定義として正確です。

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【理論的背景】

憲法改正手続(96条)は、日本国憲法が「硬性憲法」であることの制度的表れです。硬性憲法とは「通常の立法手続より厳格な手続によってのみ改正できる憲法」を指し、軟性憲法(通常の立法手続で改正できる憲法・英国型)と対比されます。硬性憲法制を採用する理由は「憲法の基本的価値(基本的人権・権力分立・法の支配等)を一時的な多数決の政治的意思から守り、安定的に維持する」ためです。

【実務・条文構造】

96条の「総議員の3分の2以上」という要件について、①「総議員」の意味(在籍議員全員(欠員を除く現員数)か、定数全員か)という解釈論があります。国会法の規定との整合性から、通説の内部でも見解が分かれており、アが「在籍議員説が通説・定数説は採られていない」と断定している点は正確ではありません。②「その過半数の賛成」(96条1項)について、国民投票法(2007年制定・その後複数回改正)は「投票総数(有効投票)の過半数」と規定しており、棄権票は分母に含まれません(イが「有権者の過半数」としている点が誤り)。これは「最低投票率制度を設けないかどうか」という政策論とも関連し、国民投票法の議論でも重要な論点です。公布権者(96条2項)について、「天皇が、国民の名で、この憲法と一体をなすものとして直ちに公布する」と規定されており、公布は天皇の国事行為(7条1号・法律の公布)と類似しますが、96条は独立した規定として天皇の名における公布を定めています(ウが「内閣総理大臣が公布」としている点が誤り)。改正限界論(エ)について、学説は①改正限界肯定説(基本原理は改正不可・改正手続自体も改正不可)と②改正無限界説(96条の手続を経れば何でも改正可能)が対立しています。最高裁は改正限界について正面から判示した判例はなく、エが「最高裁が明示的に判示している」としている点は事実と異なり誤りです。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での憲法改正の出題ポイントは次の4つです。①発議要件:各議院の総議員の3分の2以上(衆参それぞれ)。②国民投票:有効投票の過半数(有権者の過半数ではない)。③公布:天皇が「国民の名で」直ちに公布。④硬性憲法:改正手続が通常の立法より厳格な憲法(日本国憲法は硬性憲法)。「有権者の過半数(イ)」vs「有効投票の過半数(正解)」、「内閣総理大臣が公布(ウ)」vs「天皇が公布(正解)」が典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り(精度の問題)。「在籍議員全員説が通説・定数説は採られていない」という断定は、「総議員」の解釈論に複数の見解があり通説が一致していないことから誤り。
  • イ: 誤り。96条1項の「その過半数」は有効投票の過半数(国民投票法参照)。有権者の過半数(棄権者も分母に含む)とすると、棄権者が多い場合は成立が極めて困難になる・国民投票法はこの立場を採っていない。
  • ウ: 誤り。公布は「天皇が国民の名で直ちに公布する」(96条2項)。内閣総理大臣が公布するのは通常の法律(7条1号・内閣の助言と承認のもと天皇が公布)と混同した誤り。
  • エ: 誤り。改正限界は学説上の問題であり、最高裁が「明示的に判示している」判例は存在しない。改正限界肯定説が多数説ではあるが、最高裁の判断は示されていない。
  • オ: 正答。96条の発議要件(3分の2以上)が通常の立法(過半数)より厳格であることから、日本国憲法は硬性憲法に分類されるという正確な記述。

【根拠条文】

日本国憲法 第96条(憲法改正の発議・国民投票・公布)、第98条(最高法規性・硬性憲法の制度的根拠)

国民投票法(2007年制定・憲法96条の具体化・投票総数の過半数で承認)

【補足】

「国民投票の過半数=有効投票の過半数(有権者の過半数ではない)」「公布=天皇が国民の名で」「日本国憲法は硬性憲法(改正要件が立法より厳格)」の3点を確実に押さえること。改正限界論は学説問題(最高裁の明示的判例なし)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第96条(憲法改正の発議・国民投票・公布)、第98条(最高法規性) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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