憲法40報道・取材の自由・博多駅事件・北方ジャーナル事件

行政書士 憲法 問40:報道・取材の自由・博多駅事件・北方ジャーナル事件

報道・取材の自由に関する次の記述のうち、**最高裁判所の判例・通説の趣旨に照らして正しいもの**はどれか。

  • 最高裁判所は、博多駅テレビフィルム提出命令事件において、取材の自由について「報道の自由と全く同等の保障を受ける」と明示し、取材フィルムの証拠保全命令は憲法21条に違反すると判示した。
  • 最高裁判所は、博多駅テレビフィルム提出命令事件において、取材の自由は「尊重に値する」ものとしつつも、公正な刑事裁判の実現という公益との比較衡量の結果、テレビ局への取材フィルムの提出命令を適法と判示した。正答
  • 最高裁判所は、北方ジャーナル事件において、名誉毀損的表現に対する事前差し止めは「検閲」(憲法21条2項)に当たり、いかなる場合においても許されないと判示した。
  • 報道機関の編集・報道内容は、憲法21条の表現の自由として完全に保障されており、名誉毀損や犯罪の詳細報道等について一切の法的責任を問われることはない。
  • 取材源の秘匿(記者が取材先を明かさない権利)は、最高裁判所により憲法21条が保障する権利として明示的に確立しており、いかなる場合においても取材源の開示を強制することは許されない。
正答:最高裁判所は、博多駅テレビフィルム提出命令事件において、取材の自由は「尊重に値する」ものとしつつも、公正な刑事裁判の実現という公益との比較衡量の結果、テレビ局への取材フィルムの提出命令を適法と判示した。

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博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44.11.26)において、最高裁は①取材の自由は「十分尊重に値する」ものであり憲法21条の精神から認められると判示しましたが、「報道の自由と全く同等」とは言っておらず(アが誤り)、②公正な刑事裁判の実現という公益との比較衡量の結果、取材フィルムの提出命令を適法と判断しました(イが正答)。北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)については、最高裁は「一定の要件を満たす場合には名誉毀損的表現の事前差し止めも許容される(検閲には当たらない)」と判示しており(ウが「いかなる場合にも許されない」としている点が誤り)、検閲の定義を「行政権による事前審査制」に限定しました。

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報道・取材の自由に関する主要判例を整理します。①博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44.11.26):ベトナム反戦デモ取材時の映像をめぐり、刑事裁判での証拠として提出を命じることの可否が問われた事案。最高裁は「報道機関の報道の自由は、憲法21条が保障する表現の自由のうちでも特に重要なものとして、十分尊重されなければならない」と述べ、「報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」と判示しました。取材の自由は「尊重に値する」と述べるにとどまり(アが「報道の自由と全く同等の保障」としている点が誤り)、公正な刑事裁判との比較衡量の結果、提出命令を適法としました(イが正答)。②北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11):選挙立候補予定者に関する週刊誌記事の事前差し止めが問われた事案。最高裁は「名誉毀損的表現に対する事前差し止めは原則として許されないが、被害者が公的立場にない私人で、表現内容が真実でないことが明白で重大な損害が生じるおそれがある場合は例外的に許容される」と判示しました(ウが「いかなる場合にも許されない」としている点が誤り)。また「司法機関による事前差し止めは検閲(21条2項)に当たらない(検閲は行政権による事前審査制を指す)」とも判示しています。

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【理論的背景】

表現の自由(憲法21条)は民主主義・自己実現・真理の探求のために最も重要な権利の一つとされています。報道の自由はその受信者への情報提供という側面から21条の保障を受け、取材の自由は報道を可能にする事前活動として21条の精神から保護されます。ただし取材活動は報道そのものと異なり、他者の権利(プライバシー・財産権等)や公共の利益(刑事司法の適正な実現)と衝突する場面が多く、より強い制約に服することがあります。

【実務・条文構造】

博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44.11.26)の判示の精確な内容を確認します。最高裁は「報道の自由は特に重要で十分尊重されなければならない」「取材の自由は憲法21条の精神に照らし十分尊重に値する」と述べつつ、「公正な刑事裁判の実現という憲法の要請を比較衡量した結果、取材フィルムの提出命令は適法」と結論しました(イが正答の根拠)。ここで重要なのは「尊重に値する」という表現が報道の自由とは異なる強さの保障を示唆している点です(アが「全く同等の保障」としている点が誤り)。北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)については次の論点を整理します。第1に、「検閲」(21条2項)の定義:最高裁は「検閲とは行政権が主体となって思想内容等の表現物を対象とし、その全部または一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき発表前にその内容を審査した上、不適当と認める場合にその発表を禁止することを特質とする制度」と定義し、「司法機関による事前差し止めは検閲に当たらない」と判示しました(ウが「一切許されない」としている点が誤り:裁判所による差し止めは検閲ではなく、一定要件下で許容される)。第2に、事前差し止めの要件:原則禁止だが例外的に許容される場合として「①被害者が公的立場にない私人、②表現内容が真実でないことが明白で重大な損害を生じるおそれがある場合(主に私人を名誉毀損した場合)」を挙げています。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での報道・取材の自由の出題ポイントは次の4つです。①博多駅事件:取材の自由は「尊重に値する」(報道の自由と同等ではない)・比較衡量で提出命令を適法とした。②北方ジャーナル事件:検閲は行政権による事前審査制に限定(裁判所の差し止めは検閲でない)・一定要件下での事前差し止めは許容(「絶対禁止」ではない)。③取材源秘匿:最高裁は重要な法益として一定程度認めているが「いかなる場合も開示を強制できない」という絶対的保障は認めていない(オが「いかなる場合も許されない」としている点が過剰)。④編集・報道内容への法的責任:名誉毀損・プライバシー侵害等による責任を問われることがある(エが「一切の法的責任を問われることはない」としている点が誤り)。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。博多駅事件は取材の自由を「十分尊重に値する」としたが「報道の自由と全く同等の保障」とは判示しなかった。また提出命令は「適法」とされており「違憲」という判示はない。
  • イ: 正答。博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44.11.26)の判旨を正確に表現。取材の自由は「尊重に値する」+公正な刑事裁判との比較衡量→提出命令適法。
  • ウ: 誤り。北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)は「一定要件を満たす場合には事前差し止めは許容される(検閲には当たらない)」と判示。「いかなる場合においても許されない」という絶対禁止の判示ではない。
  • エ: 誤り。報道内容が名誉毀損・プライバシー侵害にあたる場合は法的責任(不法行為等)を問われる可能性がある。「一切の法的責任を問われることはない」という断定は誤り。
  • オ: 誤り。取材源秘匿は一定程度保護されるが(民事訴訟法197条の「職業の秘密」等)、「いかなる場合においても開示を強制できない」という絶対的保障を最高裁が明示的に確立した先例はない。

【根拠条文】

日本国憲法 第21条第1項(表現の自由・報道の自由・取材の自由)、第21条第2項(検閲の禁止)

【参照判例】

博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決 昭和44年11月26日):取材の自由=「尊重に値する」・比較衡量

北方ジャーナル事件(最大判 昭和61年6月11日):検閲の定義(行政権の事前審査制)・一定要件下での事前差し止め許容

【補足】

「取材の自由=尊重に値する(報道の自由と同等ではない)」「検閲=行政権による事前審査制(裁判所の差し止めは検閲でない)」の2点が試験頻出の区別事項。北方ジャーナル事件の「事前差し止めは原則禁止・例外的許容」という構造も必ず押さえること。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第21条(表現の自由・検閲の禁止) 参照判例: 博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決 昭和44年11月26日)、北方ジャーナル事件(最大判 昭和61年6月11日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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