憲法49憲法

行政書士 憲法 問49:憲法

法の下の平等(憲法14条)に関する次の記述のうち、**最高裁判所の判例の趣旨に照らして正しいもの**はどれか。

  • 憲法14条1項は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定しており、同項後段の列挙事由による区別は絶対に許されない。
  • 最高裁判所は、刑法旧200条の尊属殺重罰規定について、尊属を敬愛するという立法目的は正当であるが、その目的を達成するための手段(死刑・無期刑のみ)は著しく不合理な差別的取扱いに当たるとして違憲と判断した。正答
  • 法の下の平等は、法の適用の平等のみを意味し、法律の内容自体が不平等であっても立法府の広範な裁量に委ねられているため、裁判所は法律内容の平等性を審査することができない。
  • 憲法14条1項後段が列挙する「社会的身分」とは、人が社会において占める地位のうち、自己の意思では変えることのできない固定した身分に限られるとするのが通説・判例の確立した見解である。
  • 憲法14条の平等原則は、事実上の不平等(実質的不平等)を全て是正する義務を国家に課すものであり、社会経済的格差が存在する場合には国家は積極的に是正措置を講じなければならない。
正答:最高裁判所は、刑法旧200条の尊属殺重罰規定について、尊属を敬愛するという立法目的は正当であるが、その目的を達成するための手段(死刑・無期刑のみ)は著しく不合理な差別的取扱いに当たるとして違憲と判断した。

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法の下の平等(憲法14条1項)は「絶対的平等」を要求するのではなく「相対的平等」を保障するものです。合理的な区別は許容されますが、合理的根拠のない差別は禁止されます。イの尊属殺重罰規定(旧刑法200条)違憲判決(最大判昭48.4.4)は、「尊属を敬愛する」という目的は正当としつつも、「死刑または無期懲役のみ」という刑の加重の程度が著しく不合理として違憲と判断した重要判例です。イはこの判例の趣旨を正確に表現しており正答です。アの「列挙事由による区別が絶対に許されない」は誤りです(例えば「性別」による区別でも、合理的なものは許容されます)。ウの「法律内容を審査できない」も誤りです(尊属殺判決がまさに法律内容の違憲審査)。

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尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)は、日本の憲法訴訟史上初めて法律規定を違憲と宣言した最高裁大法廷判決として極めて重要な位置を占めます。旧刑法200条(現在は削除済み)は「自己又は配偶者の直系尊属を殺した者は死刑又は無期懲役に処す」と規定し、普通殺(当時の199条:死刑・無期・3年以上の懲役)と比較して刑を著しく加重していました。最高裁は、「立法目的(尊属を敬愛・尊重する)自体は正当」としつつも、「普通殺に比べて刑の加重の程度が著しく不合理であり、差別的取扱いの限度を超えている」として14条1項違反と判断しました(イが正答の根拠)。この判決の構造(目的の正当性 vs 手段の均衡性)は後の違憲審査基準論と連動します。アについて、14条1項後段の列挙事由(人種・信条・性別・社会的身分・門地)による区別は「原則として疑わしい(特に厳格な審査を要する)」というのが有力説ですが、絶対に許されないわけではなく(性別・年齢による選挙権制限等で合理性が認められることもある)、アの「絶対に許されない」は誤りです。エの「社会的身分」の定義については、「固定した地位に限る」説と「広く社会における身分的地位一般を含む」説があり、判例上確立した定義があるとは言い切れません(エが「通説・判例の確立した見解」としている点が誤り)。

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【理論的背景】

法の下の平等(14条1項)の解釈には、①「法の適用の平等(法を適用する段階での平等)のみを保障する」という見解と、②「法の内容の平等(立法内容自体も平等であること)も保障する」という見解の対立があります。通説・判例は②の「法の内容の平等」も保障するという立場を採り、裁判所が立法内容の合理性を審査することを認めています(ウが「審査できない」とする点が誤りである根拠)。もっとも「平等」は「絶対的同一」を意味せず、合理的な区別は許容されるという相対的平等論が確立した立場です。何が「合理的な区別」かを判定する際の審査基準として、①列挙事由(人種・信条・性別・社会的身分・門地)による区別は特に厳格な審査を要する(厳格審査)、②それ以外の区別は合理的関連性があれば許容(緩やかな審査)、という二層構造が学説で有力です。

【実務・条文構造】

尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)の判断枠組みを整理します。

  • 問題の構造: 尊属殺人(旧200条)と普通殺人(旧199条)の刑の差異が14条1項に反するか
  • 立法目的の判断: 尊属を敬愛・尊重する道義的感情の保護→「正当」と認める
  • 手段の均衡性の判断: 「死刑または無期懲役のみ(執行猶予も不可)」という加重の程度→「著しく不合理」として違憲
  • 結論: 旧200条を14条1項違反として違憲・無効

この判決の判断構造(立法目的の正当性を認めつつ、手段の均衡性で違憲とする手法)は、後の薬事法距離制限事件(最大判昭50.4.30)の「必要性・合理性の基準」とも共通する論理を持ちます。なお、旧刑法200条は本判決後も条文自体は削除されず(違憲判断は旧200条の規定を法律上存在しないとするのではなく、適用において198条を適用する処理がとられた)、1995年の刑法改正で正式に削除されました。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での本論点の出題ポイントは次の4つです。①14条1項の相対的平等(合理的区別は許容)vs 絶対的平等(同一取扱い)。②尊属殺重罰規定違憲判決:「目的は正当・手段(加重度)は著しく不合理→違憲」という判断構造。③法の内容の平等も保障(立法内容の違憲審査は可能)。④列挙事由に基づく区別の審査基準(特に厳格な審査を要するというのが有力説)。尊属殺判決は「最初の違憲判決」として象徴的な地位を持ち、試験でもその判断構造(目的の正当性と手段の均衡性)が問われます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。14条1項の平等原則は「相対的平等」であり、後段列挙事由による区別も合理的根拠があれば許容されることがある。「絶対に許されない」は誤り。有力説は後段列挙事由を厳格審査の対象とするが、絶対禁止ではない。
  • イ: 正答。尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)の判旨:立法目的(尊属の敬愛・尊重)は正当と認めつつ、死刑・無期懲役のみという刑の加重の程度が著しく不合理として違憲。目的の正当性を認めた上で手段の均衡性で違憲という判断構造を正確に表現しており正答。
  • ウ: 誤り。判例(通説)は法の内容の平等も14条1項が保障するとし、立法内容の合理性についての違憲審査を認めている(尊属殺判決がその典型)。「法律内容を審査できない」は誤り。
  • エ: 誤り。「社会的身分」の定義については、(a)出生によって決定され自己の意思で変えられない社会的地位に限る狭義説、(b)人が社会において一時的でなく占めている地位とする広義説、(c)その中間説(高齢・前科等を含むか)など諸説があり、最高裁も尊属殺判決を含め「社会的身分」の意義を狭義説で確定的に判示してはいない。エは「自己の意思では変えることのできない固定した身分に限られるとするのが通説・判例の確立した見解」と断定するが、このように確立した見解は存在しないため誤り。
  • オ: 誤り。憲法14条は「機会の平等(形式的平等)」を基本として保障するものであり、事実上の不平等(実質的不平等)を全て国家が是正する義務を課すものではない。実質的平等の追求は生存権(25条)・教育を受ける権利(26条)等の社会権による政策的アプローチが担う側面がある。

【根拠条文】

日本国憲法 第14条第1項(法の下の平等・差別の禁止)

【参照判例】

尊属殺重罰規定違憲判決(最大判 昭和48年4月4日):立法目的の正当性を認めつつ手段(刑の加重度)の著しい不合理を理由に違憲

【補足】

本判決は日本初の法律規定の違憲判決として憲法訴訟史上の画期的意義を持つ。「目的正当・手段著しく不合理→違憲」という判断構造を正確に理解すること。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第14条第1項(法の下の平等) 参照: 尊属殺重罰規定違憲判決(最大判 昭和48年4月4日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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