憲法67憲法

行政書士 憲法 問67:憲法

内閣の行政権行使と内閣総理大臣の権限に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 憲法65条は「行政権は、内閣に属する」と規定しているが、内閣が全ての行政権を直接行使するわけではなく、各省・外局等の行政機関がそれぞれ独自の判断で行政権を行使することが憲法上認められている。
  • 内閣総理大臣は「内閣の首長」(66条1項)として、各大臣に対して行政各部を指揮監督する権限(72条)を持つが、閣議を経ないで独自の判断で行政各部を指揮する権限は一切持たない。
  • 最高裁は、内閣総理大臣が閣議を経ないで行政各部に指示・命令をすることができるかという問題に関し、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合には、内閣の明示の意思に反しないときであっても、行政各部に対して指導・助言を含め一切の働きかけをする権限を持たない」と判示した。
  • 内閣の意思は閣議によって形成されるが、閣議は全員一致を要件とする慣行があることから、一人の国務大臣が反対することによって閣議の意思決定を阻止できる。ただし、この慣行は憲法上の要請ではなく、憲法明文には閣議の議決方法は規定されていない。正答
  • 行政権の主体は内閣であるため、内閣総理大臣が任命した各省大臣は、法律上独立した「行政庁」として行政処分を行う地位を持たず、すべての処分は内閣の名において行われる。
正答:内閣の意思は閣議によって形成されるが、閣議は全員一致を要件とする慣行があることから、一人の国務大臣が反対することによって閣議の意思決定を阻止できる。ただし、この慣行は憲法上の要請ではなく、憲法明文には閣議の議決方法は規定されていない。

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内閣の行政権行使と内閣総理大臣の権限について整理します。エの「閣議は全員一致の慣行があり一人の反対で阻止できる・ただしこれは憲法上の要請ではなく明文規定なし」という記述は、閣議の実態(全員一致の慣行)と憲法の文言(議決方法の明文規定なし)を正確に表現しており正答です。アの「各省が独自の判断で行政権を行使できる」は誤りです(各省は内閣の統轄のもとで行政権を行使)。イの「閣議を経ないで行政各部を指揮する権限が一切ない」は誤りです(最高裁ロッキード事件丸紅ルート判決は、内閣総理大臣が内閣の明示の意思に反しない限り行政各部に指導・助言する権限を持つと認めています)。ウは「閣議決定方針がなければ内閣の明示の意思に反しないときでも一切の働きかけ権限を持たない」としていますが、これは判旨と正反対で誤りです。オの「すべての処分は内閣の名で行われる」は誤りです(各大臣・行政庁が独立した権限で行政処分を行うことが制度上認められています)。

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内閣総理大臣の権限と閣議について整理します。①閣議の議決方法(エ):憲法は閣議の議決方法(多数決・全員一致等)を明文で規定していません。実務(慣行)として「全員一致」が採用されており、これにより一人の大臣が反対すれば閣議の意思決定が阻止されうるという状態が生じます(エが正答の根拠)。②内閣総理大臣の指揮監督権(72条):内閣総理大臣は「行政各部を指揮監督する」権限を持ちます。これが「閣議を経なければ行政各部を指揮できないか」という問題について、最高裁(ロッキード事件丸紅ルート・最大判平7.2.22)は「内閣総理大臣は、少なくとも内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導・助言等の指示を与える権限を有する」と判示しました。ウは「閣議決定方針がなければ内閣の明示の意思に反しないときでも一切の働きかけ権限を持たない」としており、これは判旨(内閣の明示の意思に反しない限り指導・助言する権限を持つ)と正反対であり誤りです(イが「閣議を経ないで一切指揮できない」とする点も同様に誤り)。③アについて:各省大臣等の行政機関は内閣の統轄のもとにありますが、内閣が「独立した判断で行政権を行使できる」というわけではなく、内閣の統轄・監督のもとで権限を行使します(アが「独自の判断で行政権を行使できる」としている点は誤り)。オの「すべての処分は内閣の名で」という命題は誤りで、各省大臣等は行政庁として独自に処分を行う権限を持ちます。

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【理論的背景】

内閣の意思形成と閣議は日本の行政実務における最重要な仕組みです。憲法は閣議の設置を明示的に規定していませんが(内閣法4条が規定)、内閣の意思決定の場として慣行的に確立しています。「全員一致の慣行」は明治憲法時代から引き継がれた実務慣行であり、憲法上の明文的要請ではないとされます(エが正答の根拠の一つ)。この全員一致原則は、内閣の「連帯責任(66条3項)」の要請から、内閣が一体として政策を決定することの反映とも解されています。内閣総理大臣の首長的地位(66条1項)と行政各部の指揮監督権(72条)については、「閣議を経なければ指揮できない」という厳格な解釈と「内閣の意思に反しない範囲で独自の指導権限がある」という柔軟な解釈の対立があり、最高裁はロッキード事件丸紅ルート(最大判平7.2.22)において後者の方向の判示を行っています。

【実務・条文構造】

主要条文の整理:

  • 65条: 行政権は内閣に属する(行政権の帰属主体は内閣)
  • 66条1項: 内閣は内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織(首長は内閣総理大臣)
  • 66条3項: 内閣は行政権行使について国会に連帯して責任を負う
  • 72条: 内閣総理大臣は内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務と外交関係について国会に報告し、行政各部を指揮監督する

内閣法4条(内閣の意思決定手続):「内閣がその職権を行うのは閣議による」と規定しており、内閣としての意思形成は閣議で行われます。ただし内閣総理大臣個人の指揮監督権の行使範囲については、ロッキード事件丸紅ルート判決が示した「内閣の明示の意思に反しない限り、随時、指導・助言する権限」という判断が参考になります(イが「閣議を経ないで指揮する権限が一切ない」とする点が誤りである根拠)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での本論点の出題ポイントは次の4つです。①閣議の全員一致慣行:実務慣行であり憲法の明文規定ではない。②内閣総理大臣の行政各部指揮監督権(72条):閣議を経なければ一切できないとは言えない(指導・助言の権限は閣議外でも可能)。③行政権の帰属:内閣が主体であるが、各省大臣等が行政庁として独自の処分権限を持つ。④内閣の連帯責任(66条3項)と全員一致慣行の関係。「閣議は全員一致が憲法の要請(誤り)」「内閣総理大臣は閣議を経なければ行政各部を指揮できない(誤り)」「全ての処分は内閣の名で(誤り)」が典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。各省等の行政機関は内閣の統轄(内閣の監督)のもとで行政権を行使するものであり、「独自の判断で行政権を行使する」という表現は内閣の統轄・監督関係を無視した誤り。65条(行政権は内閣に属する)と行政組織の実態から、各省は内閣の統轄下にある。
  • イ: 誤り。最高裁(ロッキード事件丸紅ルート・最大判平7.2.22)は内閣総理大臣が「内閣の明示の意思に反しない限り」「随時」行政各部に「一定の方向で処理するよう指導・助言する権限」を持つと判示しており、「閣議を経ないで指揮する権限が一切ない」という断定は誤り。
  • ウ: 誤り。ロッキード事件丸紅ルート判決(最大判平7.2.22)は「内閣総理大臣は、少なくとも内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導・助言等の指示を与える権限を有する」と判示した。ウは「閣議決定方針がなければ内閣の明示の意思に反しないときでも一切の働きかけ権限を持たない」とするが、これは判旨と正反対であり誤り。判例は明示の意思に反しない限り権限を肯定している。
  • エ: 正答。閣議の全員一致が「実務上の慣行」であって「憲法上の明文規定ではない」という二点を正確に述べている。「一人の大臣の反対で阻止できる」という実態も正確。これが最も明確・正確な正答。
  • オ: 誤り。各省大臣等の行政庁は行政事件訴訟・行政不服申立ての「処分庁」として独立した権限で行政処分を行う(行政事件訴訟法11条等参照)。「すべての処分は内閣の名で行われる」という命題は行政組織の実態に反し誤り。

【根拠条文】

日本国憲法 第65条(行政権の帰属)、第66条(内閣の組織・連帯責任)、第72条(内閣総理大臣の権限・行政各部の指揮監督)

内閣法 第4条(閣議による意思決定)

【参照判例】

ロッキード事件丸紅ルート(最大判 平成7年2月22日):内閣総理大臣の「内閣の明示の意思に反しない限りの指導・助言権限」を認める

【補足】

「閣議全員一致は慣行・憲法の明文なし」「内閣総理大臣の指導・助言権限は閣議外でも可能(内閣の明示の意思に反しない限り)」「各省大臣は独立した行政庁として処分権限を持つ」の3点が最重要。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第65条(行政権の帰属)、第66条(内閣の組織・連帯責任)、第72条(内閣総理大臣の権限・行政各部の指揮監督) 参照: ロッキード事件丸紅ルート(最大判 平成7年2月22日)(内閣総理大臣の指揮監督権に関連する判示) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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内閣総理大臣の権限・行政各部の指揮監督・55年体制・議院内閣制頻出度B

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