ITパスポート 令和8年度 問27:business_strategyに関する問題
AIを、様々な課題に対して判断できる「強いAI」と、特定の課題だけを判断できる「弱いAI」に分類した場合、「弱いAI」の記述として、最も適切なものはどれか。
- a人間と同等の知能がコンピュータ上で再現され、人間のように判断することができるが、人間と同じような判断ミスをすることもある。
- b人間のように質問そのものの意味を理解したり、考えたりしているわけではないが、判断の結果を示すことはできる。正答
- c人間よりも賢く、人間の手助けがなくても自らの判断力を高めることができる。
- d自らがもつ知識や能力を自律的に適用することによって、柔軟に判断できる能力がある。
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答えは b です。
「弱いAI」とは、決められた1つの仕事だけが得意なAIのこと。たとえば「猫の写真を当てる」専用のAIは、当てるのは上手でも、なぜそれが猫なのか自分で“分かって”いるわけではありません。意味は理解していないけど、答えだけは出せる——これが弱いAIです。
👉 覚え方:弱いAI=「考えてるフリで答えだけ出す専門家」。
ほかの選択肢:a・c・d は「人間みたいに何でも考えられる」「自分で賢くなる」など、まるで本当の知能のような説明=これは「強いAI」の話なので×。
なぜこれが正解か
正解は b。弱いAI(特化型AI)は、特定領域の課題に対して結果を出せるが、人間のように「質問の意味そのものを理解・思考」しているわけではない。bの「意味を理解しているわけではないが、判断の結果は示せる」がこの定義に正確に合致する。
各選択肢の解説
- a:人間と同等の知能を再現し人間のように判断する→強いAI(汎用型AI)の説明。
- c:人間より賢く自ら判断力を高める→強いAIを超えた万能像で×。
- d:知識・能力を自律的に適用し柔軟に判断→人間並みの汎用性=強いAIの説明。
覚え方・ひっかけ注意
「強い=何でもできる汎用」「弱い=特定の仕事だけの特化」。現在実用化されているAI(画像認識・翻訳など)はすべて弱いAI。「人間のように」「自律的に」「自ら高める」という語が出たら強いAI寄りと疑う。
理論的背景
AIの「強い・弱い」という分類はジョン・サールが1980年に発表した論文「Minds, Brains, and Programs(心・脳・プログラム)」で提唱した哲学的概念に由来する。強いAI(Strong AI・AGI:Artificial General Intelligence)は「人間と同等もしくはそれ以上の汎用的知能を持ち、意識・意図・理解を持つコンピュータシステム」という理論的概念であり、2025年時点でまだ実現されていない。弱いAI(Narrow AI・Weak AI)は「特定の限定されたタスクにおいて人間に匹敵またはそれ以上の性能を発揮するが、その問題領域外では機能しない」AIシステムを指す。本問の選択肢bは弱いAIの本質を最も正確に述べている。「質問の意味を理解していないが結果を出せる」という記述は中国語の部屋(Chinese Room)論証(サール)の思考実験と整合し、現在のLLM・チェスAI・囲碁AIの実態を正確に表現している。
実務での使われ方
現代のAIシステムはすべて「弱いAI」の範疇に入る。GPT-4・Gemini Ultra・Claude 3.5などの最先端LLMでさえ「意味の理解・意識・汎用的問題解決」という観点では弱いAIに分類される。これらのモデルは統計的パターンマッチングに基づいて出力を生成しており、サールが批判したような「本当の理解」を持たないという議論が継続している。ただし実用的な観点では「意味を理解していないように見えても価値ある出力を生成できる」ことの方が重要で、弱いAIの産業活用は急速に進んでいる。強いAI(AGI)の実現時期についてはAIリサーチャーの間で大きな見解の相違があり、Sam Altman(OpenAI CEO)は「数年以内に実現可能性あり」、Yann LeCun(Meta Chief AI Scientist)は「現在のアーキテクチャでは不可能・根本的な突破口が必要」と主張している。
試験での位置づけ
強いAI・弱いAIの区別はITパスポートのAI分野でシラバル改訂(2022年以降)で追加されたテーマ。本問の識別ポイントは「意味を理解せず結果だけ出す」という弱いAIの本質的特徴を選択肢b以外が持っていない点にある。選択肢a「人間と同等の知能で人間と同じ判断ミスをする」は強いAIの記述に見えるが「同等の知能」という部分が強いAIの定義に近い。ただし「判断ミスをする」という記述は強いAIの特徴としては正確ではなく、混乱を招く選択肢。選択肢cは強いAIをさらに超えた「超知能(Superintelligence)」の説明に近い。選択肢dは「自律的に適用・柔軟な判断」という汎用性を示唆し強いAIの記述に近い。近年は「汎用AI・超知能のリスクとAIアライメント(AI安全性研究)」という文脈でのAI倫理問題も出題に取り込まれている。
選択肢の発展補足
現在の最先端LLM(弱いAI)の能力と限界を正確に理解することが実務で重要となる。LLMの典型的な限界:ハルシネーション(事実誤認の生成)・マルチステップ推論の誤り・因果関係の混同・数値計算の不得意。これらの限界は「意味を理解せずパターンマッチングで出力している」という弱いAIの本質に由来する。強いAI実現への技術的アプローチとして研究されているのは「シンボリックAI+深層学習の融合(Neurosymbolic AI)」「世界モデル(World Model)の構築」「自己改善型AI(Self-Improving AI)」など。AGI安全性研究機関としてAnthropicのAI安全チーム・OpenAIのSuperalignment・DeepMindのAI Safety Teamが研究を進めており、AGI実現と同時に「AIアライメント(人間の価値観と整合するAI行動)」の達成が不可欠とされる。基本情報ではAI・機械学習の技術用語(教師あり/なし/強化学習・過学習・ハイパーパラメータ等)まで出題される。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 ITパスポート試験 令和8年度 問27/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。