登録販売者 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識 問9:医薬品に共通する特性と基本的な知識
過去に発生した薬害に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アサリドマイド事件では、催奇形性を持つ成分が整腸薬として販売され、妊娠初期に服用した妊婦から四肢の形成不全(アザラシ肢症等)を持つ子どもが生まれた。
- イキノホルムは鎮静薬(睡眠薬)として使用されていたが、副作用として脊髄が障害されるスモン病を引き起こし、薬害として認定された。
- ウ薬害エイズ事件では、非加熱の血液凝固因子製剤を使用した血友病患者がHIVに感染したことが問題となり、加熱製剤への切替えが遅れた責任が問われた。正答
- エサリドマイドはS体のみに催奇形性があるため、R体のみを分離して使用する方法で催奇形性を完全に防ぐことができ、現在は安全な医薬品として再承認・使用されている。
- オCJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)薬害では、ウイルスに汚染されたワクチンが原因となり、多数の患者が感染した。
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正答はウです。
薬害エイズ事件は、非加熱の血液凝固因子製剤(血液凝固第VIII因子・第IX因子製剤)を使用した血友病患者がHIVに感染したことが原因です。加熱製剤が安全と知られていたにも関わらず非加熱製剤の使用が続いたことが問題とされました。(※フィブリノゲン製剤はC型肝炎=薬害肝炎の原因製剤であり、薬害エイズの原因製剤とは区別すること。)
アは誤りです。サリドマイドは整腸薬ではなく、睡眠薬・鎮静薬・妊婦のつわり防止目的で使用されました。イも誤りで、キノホルムは整腸薬(消化器感染症薬)として使用されており、鎮静薬ではありません。エは誤りで、サリドマイドはR体とS体が体内で互いに変換(ラセミ化)するため、R体のみを分離しても意味がありません。オは誤りで、CJD薬害はウイルスではなくプリオン(異常タンパク質)に汚染された硬膜移植(ヒト乾燥硬膜)が原因です。
各選択肢の解説:
- ア(誤): サリドマイドは1960年代に鎮静薬・睡眠薬として、また妊婦のつわり防止に使用されました(整腸薬ではありません)。催奇形性(特にアザラシ肢症・心臓奇形等)が問題となった医薬品で、妊娠初期(器官形成期)に服用した妊婦から奇形児が多数生まれました。光学異性体(R体・S体)の問題もありますが、「整腸薬」という記述が誤りです。
- イ(誤): キノホルム(クリオキノール)は消化器感染症に対する整腸薬・抗原虫薬として使用されていました(鎮静薬ではありません)。副作用として亜急性脊髄視神経症(スモン病)が生じ、視力障害・歩行障害・神経障害を引き起こしました。「整腸薬」が正しく、「鎮静薬」は誤りです。
- ウ(正): 薬害エイズ事件では、加熱処理をしていない血液凝固因子製剤(血液凝固第VIII因子・第IX因子製剤)を使用した血友病患者がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染しました。すでに加熱製剤の安全性が確認されていたにもかかわらず、非加熱製剤の切替えが行政・企業側で遅延したことが問題とされ、国・製薬会社双方の責任が問われました。(手引きでは「ヒト免疫不全ウイルスが混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤」と記載。フィブリノゲン製剤はC型肝炎=薬害肝炎の原因製剤であり混同しないこと。)
- エ(誤): サリドマイドにはR体(催奇形性なし)とS体(催奇形性あり)の光学異性体があります。しかし体内ではR体とS体は相互変換(ラセミ化)するため、R体のみを投与してもS体に変換されます。したがって「R体のみを分離すれば安全」は正しくありません。現在サリドマイドは多発性骨髄腫等に再利用されていますが、妊婦への使用は厳格に禁止され、管理された条件下でのみ使用されます。
- オ(誤): CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)の薬害は、ウイルスではなくプリオン(感染性タンパク質・通常の滅菌では不活化されない)に汚染されたヒト乾燥硬膜(脳手術後の硬膜補填材料)を移植した患者が発症したものです。ワクチンは原因ではありません。
【薬害の歴史から学ぶ:医薬品安全管理の原則】
日本の薬害史は医薬品安全管理体制の確立に大きな影響を与えました。主要な薬害事件とその教訓を整理します。
1. サリドマイド事件(1950年代末〜1960年代初)
- 原因薬: サリドマイド(商品名: コンテルガン等)
- 用途: 睡眠薬・鎮静薬・妊婦のつわり防止
- 被害: 妊娠初期(4〜9週)服用で四肢短縮・欠損(アザラシ肢症)・心臓奇形・聴覚障害等の奇形。世界で約1万人以上の被害者。
- 光学異性体の問題: S体に催奇形性があるが、体内でR↔S変換(ラセミ化)が起こるため、R体のみでも安全でない。
- 日本での教訓: ヨーロッパより販売中止が遅れ、被害が拡大。製薬企業の情報対応の問題が指摘された。
- 後日談: 多発性骨髄腫・らい病(ハンセン病)等に再利用。サリドマイド管理手順(TERMS)のもと、妊婦への絶対禁止・避妊管理を徹底した条件で処方。
2. キノホルム・スモン病事件(1950〜1970年代)
- 原因薬: キノホルム(クリオキノール)
- 用途: 消化器感染症の整腸薬(アメーバ赤痢等の治療)
- 被害: 亜急性脊髄視神経症(SMON)。視力障害・歩行困難・感覚障害等。日本で約1万人以上の患者。
- 教訓: 原因究明が遅れた背景に「感染性ウイルス説」等の誤った仮説が長期間主流だったこと。薬剤と疾患の因果関係を科学的に確認することの重要性。
3. 薬害エイズ事件(1980〜1990年代)
- 原因: 非加熱の血液凝固因子製剤(血液凝固第VIII因子・第IX因子製剤)によるHIV感染
- 被害: 血友病患者を中心に多数がHIV感染・AIDS発症。
- 製剤名の注意: HIV(薬害エイズ)の原因は「血液凝固因子製剤」。フィブリノゲン製剤はC型肝炎(薬害肝炎)の原因製剤であり、両者を混同しないこと(手引きでも別の薬害として記載)。
- 問題の核心: 加熱製剤の安全性が確認された後も非加熱製剤を継続使用することを行政・企業が認容したこと。「早期回収・切替えの遅延」が最大の問題。
- 法的帰結: 国・製薬企業の責任を認める和解・賠償。薬事行政改革の契機。
4. CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)薬害(1980〜1990年代)
- 原因: CJD患者・ハイリスク者のヒト乾燥硬膜(Lyodura等)を脳手術後の補填材料として使用
- 病原体: プリオン(異常型プリオンタンパク質)。通常の滅菌法(加熱・紫外線・エタノール等)では不活化されない特殊な性質を持つ。
- 被害: 移植を受けた患者が数年〜数十年後にCJDを発症し死亡。
- 教訓: プリオンという未知の病原体に対する認識の遅れ。感染源となる医療材料の適切な管理・使用中止の重要性。
【薬害から生まれた制度・教訓】
| 薬害 | 生まれた対策・制度 |
|---|---|
| サリドマイド | 薬物の催奇形性試験の義務化・妊婦への投与管理強化 |
| スモン(キノホルム) | 市販後安全対策(PMS)の強化・副作用報告制度の整備 |
| 薬害エイズ | 血液製剤の安全管理強化・厚労省の情報公開義務化・副作用被害救済制度の充実 |
| CJD | ヒト由来医療材料の使用規制・プリオン不活化手順の確立 |
【試験での位置づけ】
薬害の歴史は「原因薬」「疾患名・症状」「薬の用途」「教訓」の4点セットで覚えることが鉄則です。「サリドマイド=整腸薬」「キノホルム=鎮静薬」「CJD=ウイルス」という誤記述パターンは典型的なダミーです。本問のように、用途・原因・病原体を正確に覚えているかを確認する出題が頻出です。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章第4節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 重大修正実施。①薬害エイズ(HIV)の原因製剤を「フィブリノゲン製剤等」→「血液凝固第VIII因子・第IX因子製剤」に修正(beginner/standard/advanced 3箇所)。手引き令和8年4月版は「ヒト免疫不全ウイルスが混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤」と記載。フィブリノゲン製剤はC型肝炎=薬害肝炎の原因製剤であり、薬害エイズの原因として記述するのは事実誤認のため区別する注記を追加。②設問アはサリドマイドを「整腸薬として販売」を誤りとする選択肢で論旨は正しい(解説で睡眠薬・鎮静薬・つわり止めと正答記述・手引きと整合)。③CJDのプリオン記述・キノホルムのスモン記述は手引きと整合確認済み。正答ウは一意に確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第1章 第4節「医薬品の適正使用と安全対策」(薬害の歴史) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。