衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問21:食中毒・感染症
ノロウイルスに関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アノロウイルスはウイルス性食中毒の代表的な原因であり、主な感染源は汚染された二枚貝(カキ等)の生食や半生食、および感染者の糞便・嘔吐物で汚染された食品・水である。
- イノロウイルスの消毒に最も効果的な薬剤は次亜塩素酸ナトリウムであり、嘔吐物の処理・施設消毒には濃度0.1%(1,000ppm)程度の次亜塩素酸ナトリウムを用い、手指消毒にはエタノール(アルコール)が同様に有効である。正答
- ウノロウイルスは感染力が非常に強く、少量(10〜100個程度)のウイルスでも感染が成立する。また乾燥した環境でも一定期間生存可能で、二次感染(ヒトからヒトへの感染)が起こりやすい。
- エノロウイルス感染症の主症状は悪心・嘔吐・下痢・腹痛であり、発熱は軽度のことが多い。潜伏期間は24〜48時間程度で、症状は通常1〜3日程度で回復する(健常者の場合)。
- オノロウイルスは加熱によって不活化できるため、カキ等の二枚貝を中心部まで85〜90℃以上で90秒以上加熱することで、ウイルスを失活させることができる。
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誤りはイです。「手指消毒にエタノール(アルコール)が同様に有効」という部分が誤りです。ノロウイルスはアルコール(エタノール)消毒に抵抗性があり、アルコール消毒だけでは十分に不活化できません。手指には石けんと流水による十分な手洗いが最も重要で、アルコールはある程度の補助的効果はありますが「次亜塩素酸ナトリウムと同様に有効」という表現は誤りです。
施設・器具の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.02〜0.1%)が有効です。他の選択肢(ア・ウ・エ・オ)はすべて正しい内容です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): ノロウイルスの感染源は大きく2つ:①汚染された二枚貝(カキ・ハマグリ・アサリ等)の生食・半生食(ウイルスが貝の消化器官に蓄積)②感染者の糞便・嘔吐物で汚染された食品・調理器具・調理者の手指。食品取扱者がノロウイルスに感染した状態で調理することで集団食中毒が起こります。
- イ(誤): ノロウイルスはアルコール消毒(70%エタノール等)に対して抵抗性があります。施設・器具・嘔吐物処理には次亜塩素酸ナトリウム(嘔吐物除去後の面の消毒: 0.1%/食器・手洗い場: 0.02%)が有効です。手指消毒にはアルコールは「一定の補助的効果」はあるものの、石けんと流水による手洗いの方が確実で、「次亜塩素酸ナトリウムと同様に有効」という表現は誤りです。
- ウ(正): 感染量10〜100個という少量での感染成立は、集団感染・二次感染が起こりやすい理由です。乾燥した嘔吐物・糞便が粉末状になって空気中に漂い吸入感染する事例(エアロゾル感染)も報告されています。
- エ(正): ノロウイルス感染症の典型的な経過です。潜伏期間24〜48時間・主症状は嘔吐(突然の激しい嘔吐が特徴)・下痢・軽度発熱。1〜3日で回復(健常者)。高齢者・乳幼児では脱水症状が重症化するリスクがあります。
- オ(正): ノロウイルスの加熱不活化条件(85〜90℃以上90秒以上)は厚生労働省が示す基準です。カキの生食によるノロウイルス感染予防として「中心部まで十分に加熱」が推奨されています。
【理論的背景】
ノロウイルス(Norovirus)はカリシウイルス科ノロウイルス属に分類される一本鎖RNAウイルスです。培養系が確立されていないため、ウイルス学的研究に制限がありますが、ヒト腸管オルガノイドを使用した研究が進んでいます。
ノロウイルスのアルコール抵抗性の機序:
ウイルスの構造上、エンベロープ(脂質二重膜)を持たないノンエンベロープウイルスです。アルコールの不活化作用の主な標的はエンベロープ(脂質膜)であるため、エンベロープがないノロウイルスにはアルコールの効果が限定的です。
アルコール感受性の違い(消毒剤選択の根拠):
- アルコール感受性「高」: インフルエンザウイルス・HIV・コロナウイルス(エンベロープあり)→アルコール消毒有効
- アルコール感受性「低」: ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルス(ノンエンベロープ)→次亜塩素酸ナトリウムが有効
【実務・条文構造】
ノロウイルス対策の標準手順(厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」・「食中毒予防マニュアル」):
手洗いの手順:
1. 石けんを用いて流水で30秒以上手洗い(指の間・爪の間・手首も洗う)
2. 流水でよくすすぐ
3. 清潔なタオル・ペーパータオルで拭く
4. 補助的にアルコール消毒(あくまで補助)
嘔吐物処理の手順(集団施設での標準手順):
1. マスク・手袋・ガウンを着用(防護具なしで処理しない)
2. 嘔吐物をペーパータオル等で外側から中心に向けて拭き取る
3. 拭き取り後、0.1%次亜塩素酸ナトリウムで汚染面を消毒
4. 処理したペーパータオル・手袋はビニール袋に密封して廃棄
5. 処理後に石けんで丁寧に手洗い
調理器具・食器の消毒:
- 熱水消毒: 85℃以上・1分以上
- 次亜塩素酸ナトリウム: 0.02%(200ppm)で浸漬・または0.1%(1,000ppm)で拭き取り
二次感染予防の環境整備:
- 嘔吐した場所の半径2mは汚染されている可能性あり(エアロゾル感染対策)
- 空調を切って(エアロゾル拡散を防ぐ)換気する
- 感染者のトイレ・洗面台は別途消毒
ノロウイルスの疫学(試験関連知識):
- 発生時期: 11〜3月(冬季)にピーク(ただし年間を通じて発生)
- 感染経路: 経口感染(糞口経路)・接触感染・飛沫感染(嘔吐時のエアロゾル)
- 潜伏期間: 24〜48時間
- 感染成立菌量: 10〜100個程度(極めて少量)
【試験での位置づけ】
ノロウイルスの問題では「アルコール消毒への抵抗性(次亜塩素酸ナトリウムが有効)」「少量(10〜100個)での感染成立」「乾燥・低温への抵抗性」「加熱不活化条件(85〜90℃90秒以上)」「嘔吐物処理の手順」が最頻出です。イのような「アルコールが同様に有効」という誤りは、「アルコール消毒 = 万能」という思い込みを利用した典型的な引っかけであり、衛生管理者試験で繰り返し出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: カキはノロウイルスの重要な感染源です。カキは海水を濾過して餌(プランクトン)を取り込む際に、海水中のノロウイルスも濃縮・蓄積します(生物濃縮)。カキ養殖場の近くに下水処理が不十分な海域がある場合、特にリスクが高くなります。カキの生食・半生食を避けることがノロウイルス感染の個人的な最大の予防策です。
- イ: WHO(世界保健機関)もノロウイルスに対するアルコール消毒の限界を認識しており、「石けんによる手洗い」を第一選択として推奨しています。食品取扱施設では、ノロウイルス症状のある従業員を就業させない(就業禁止)こと・症状消失後48時間は食品に直接触れる業務を避けることが重要な感染対策です。
- ウ: ノロウイルスの乾燥耐性は施設管理上重要です。乾燥した嘔吐物・糞便は粉末状になって空気中に漂い(エアロゾル形成)、吸入による感染(飛沫核感染に近い経路)が起こります。これが「嘔吐した周囲2mが汚染されている」という根拠であり、エアロゾルへの曝露を防ぐための防護具(マスク)着用と、窓開け換気・空調を一時停止しての換気が推奨される理由です。
- エ: ノロウイルス感染症の「突然の激しい嘔吐」は特徴的な症状で、嘔吐物が周囲に飛散することによって二次感染が起こります。高齢者施設での集団感染では、1人の感染者が数十人への感染拡大を引き起こした事例があります。高齢者・乳幼児・免疫低下者では脱水症状(経口補水療法)・誤嚥性肺炎(嘔吐物の誤嚥)のリスクがあり注意が必要です。
- オ: 「85〜90℃以上90秒以上」という加熱条件は、通常の食品加熱(75℃1分)より高温・長時間であることに注意が必要です。これはノロウイルスが他の食中毒原因菌より高温耐性を持つためであり、「十分に加熱したはずのカキでノロウイルス食中毒」という事例の多くは、この加熱条件を満たしていなかった場合です。
【根拠】医学的事実(確立した感染症学・ウイルス学)。厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」・「食中毒予防マニュアル」準拠。
【補足】ノロウイルスはアルコール消毒に「抵抗性」あり(エタノールが同様に有効という表現は誤り)。次亜塩素酸ナトリウムが有効。手指は石けんと流水で手洗い。加熱不活化: 85〜90℃以上90秒以上。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した感染症学・ウイルス学)。ノロウイルスはアルコール消毒(エタノール)への抵抗性を有する。厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」準拠。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。