労働衛生(有害業務以外)26メンタルヘルス・健康保持増進

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問26:メンタルヘルス・健康保持増進

職場のメンタルヘルス対策における「4つのケア」に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • セルフケアとは、労働者自らがストレスに気づき、それに対処するための知識・技術を身に付けることであり、事業者は労働者が行うセルフケアを支援するための情報提供や教育研修を実施することが求められる。
  • ラインによるケアにおける「ライン」とは、労働者を直接管理・監督する管理監督者(職場の上司・管理職等)を指し、部下の変化への気づき・相談対応・職場環境の改善・医療機関等への紹介が主な役割である。
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケアの実施主体は、産業医・保健師・衛生管理者であり、人事・労務部門や職場の先輩・同僚は含まれない。正答
  • 事業場外資源によるケアには、産業保健総合支援センター(さんぽセンター)・外部EAP機関・医療機関・地域の精神保健センター等の活用が含まれ、特に内部に専門職がいない中小企業での活用が重要である。
  • 「4つのケア」はそれぞれが独立したものではなく、相互に連携・補完しながら継続的かつ効果的に機能することが重要であり、事業者はこれら4つのケアが適切に実施されるよう体制を整備することが求められる。
正答:事業場内産業保健スタッフ等によるケアの実施主体は、産業医・保健師・衛生管理者であり、人事・労務部門や職場の先輩・同僚は含まれない。

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誤りはウです。「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」の実施主体には、産業医・保健師・衛生管理者に加えて、人事・労務部門も含まれます。「職場の先輩・同僚は含まれない」という部分も人事・労務部門を否定した点が誤りです。

厚生労働省指針では、事業場内産業保健スタッフ等として「産業医等の産業保健スタッフ・人事労務管理スタッフ」が明示されています。人事部門はメンタルヘルス対策・休職・復職判定において重要な役割を担います。ア(セルフケア)・イ(ラインケア)・エ(事業場外資源)・オ(4つのケアの相互連携と事業者の体制整備)は正しい内容です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): セルフケアの内容は①ストレスへの気づき②ストレスの解消(休養・相談等)③専門機関への相談。事業者の支援として「セルフケアに関する教育研修・情報提供」「相談窓口の整備」が指針に明記されています。
  • イ(正): ラインによるケアの「ライン」=管理監督者(ラインマネジャー)。管理監督者の役割は①部下の状態の変化への気づき②相談への対応と傾聴③職場環境等の把握・改善④医療機関等への受診勧奨と連絡調整⑤職場復帰支援(復帰後のフォローアップ)です。
  • ウ(誤): 厚生労働省指針では事業場内産業保健スタッフ等として「産業医等・衛生管理者等・保健師等の産業保健スタッフ」に加えて「人事労務管理スタッフ」が明示されています。産業医・衛生管理者だけでなく、人事部門(労務管理・休職・復職判定を担う)も重要な実施主体です。「人事・労務部門は含まれない」は誤りです。
  • エ(正): 産業保健総合支援センター(さんぽセンター)は各都道府県に設置され、50人未満の小規模事業場への産業保健サービス提供を担います。中小企業での外部専門資源の活用は特に重要です。
  • オ(正): 4つのケアは相互に連携・補完しながら継続的・効果的に機能することが重要であり、事業者はこれらが適切に実施されるよう体制を整備する責任を負います。指針の趣旨に沿った正しい記述です(4者に「最も重要」という序列や「補助的」という位置づけは指針には設けられていません)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

「4つのケア」は、職場のメンタルヘルス対策を個人レベルから組織・社会レベルまでの多層構造で捉えた枠組みです。2006年に策定された厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において提示され、2015年の改正(ストレスチェック制度義務化に合わせた改正)でも基本的な枠組みは維持されています。

4つのケアの詳細(指針の規定):

1. セルフケア(Self-care):

  • 主体: 労働者本人
  • 内容: ストレスへの気づき、ストレス解消技術の習得、自主的な相談
  • 事業者の役割: 教育研修・情報提供(セルフケア研修の実施)

2. ラインによるケア(Line care):

  • 主体: 管理監督者(職制ライン)
  • 内容: 部下の変化への気づき・傾聴・対応・職場環境改善・医療機関への紹介・職場復帰支援
  • 事業者の役割: 管理監督者へのラインケア研修実施

3. 事業場内産業保健スタッフ等によるケア:

  • 主体: 産業医・保健師等産業保健スタッフ+人事労務管理スタッフ
  • 内容: 具体的なメンタルヘルスケアの実施・支援、職場環境等の評価と改善、労働者および管理監督者への支援、就業上の配慮
  • ※人事部門は休職・復職手続き・就業上の配慮の実施において中心的役割を担う

4. 事業場外資源によるケア:

  • 主体: 外部機関(さんぽセンター・EAP機関・医療機関・精神保健センター等)
  • 内容: 専門的な相談対応・治療・職場復帰支援の連携

【実務・条文構造】

4つのケアの相互連携(重要な実務的観点):

4つのケアは独立した機能ではなく、連携・補完関係にあります:

  • セルフケアで「おかしい」と気づいた労働者が、ラインケアで上司に相談
  • 上司が産業保健スタッフ(事業場内)に相談・連絡
  • 産業医が面接・就業上の配慮を提案
  • 人事部門が配慮の実施・休職手続き
  • 必要に応じて外部医療機関・EAPとの連携

人事労務管理スタッフの具体的な役割:

  • 休職・復職の事務手続きと管理
  • 就業規則に基づく就業制限・短時間勤務等の配慮実施
  • 健康保険・傷病手当金等の手続き支援
  • ハラスメント相談対応(メンタルヘルスの原因としてのハラスメント管理)

EAP(Employee Assistance Program)の機能:

  • 外部専門機関による労働者・家族への専門的相談支援
  • 電話・対面・オンラインカウンセリング
  • 飲酒問題・DV・育児ストレス等を含む生活全般の課題対応
  • 事業場への組織コンサルテーション

【試験での位置づけ】

4つのケアの問題では「ラインケアの主体(管理監督者)」「事業場内産業保健スタッフには人事労務管理スタッフも含む(産業医・衛生管理者のみではない)」「セルフケアは労働者本人が主体」「事業場外資源(さんぽセンター・EAP・医療機関)」「4者の連携が重要」が出題ポイントです。ウのような「人事・労務部門は含まれない」という誤りは、指針の詳細な規定を正確に理解しているかを問う引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: セルフケア研修の具体的な内容には、ストレスの知識・ストレス対処スキル(コーピング)・睡眠の大切さ・EAP等の相談窓口の案内・マインドフルネス等が含まれます。セルフケアは「1次予防(発症予防)」に位置づけられます。
  • イ: 管理監督者のラインケアで最も重要な行動の一つが「早期の気づき」です。「最近遅刻が増えた」「以前より表情が暗い」「ミスが増えた」「休暇が増えた」などの変化に気づき、「最近調子はどうですか?」と声をかけることが入口となります。また「傾聴」(アドバイスではなく聴くこと)の姿勢が重要で、解決策を急いで提示するのではなく、まず話を聴くことが求められます。
  • ウ: 人事部門がメンタルヘルス対策に関与することで「制度的なサポート(休職・復職制度・就業配慮)」が機能します。産業医が医学的な観点から「軽作業から始めること」を提案しても、人事部門が具体的な就業ルールを定めて実行しなければ意味がありません。産業保健スタッフと人事部門の協働が職場のメンタルヘルス対策の実効性を高めます。
  • エ: 産業保健総合支援センター(さんぽセンター)は50人未満の小規模事業場向けに産業保健に関する情報提供・産業保健スタッフへの研修・個別相談を無料で提供しています。衛生管理者・産業医の確保が困難な中小企業にとって重要な外部資源です。
  • オ: 4つのケアに優先順位はなく、すべてが重要で相互補完的に機能します。事業者はこれら4つのケアが継続的・効果的に実施されるよう、教育研修・情報提供・職場環境改善・相談体制の整備など全体の体制を整える責任を負います。特に「事業場外資源によるケア」は、中小企業や専門的なケアが必要な重症例では不可欠な資源であり「補助的」という位置づけは適切ではありません。

【根拠法令・指針】厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月策定・平成27年11月改正)。

【補足】事業場内産業保健スタッフには産業医・衛生管理者・保健師だけでなく「人事労務管理スタッフ」も含まれる(「人事は含まれない」は誤り)。4つのケアは相互連携・補完が重要。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年・改正平成27年)。事業場内産業保健スタッフには人事・労務部門も含まれる。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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