衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問43:温熱環境・作業環境測定
建築物・事務所の換気方式の分類に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア第1種換気方式は、給気(外気の取り込み)のみを機械換気で行い、排気は自然換気(窓・換気口等からの自然排出)に委ねる方式であり、一般住宅に最もよく用いられる。
- イ第2種換気方式は、機械で給気を行い、排気は自然換気に委ねる方式であり、室内を正圧(外気より高い気圧)に保つことができるため、手術室・クリーンルームなど外気の汚染物質の侵入を防ぎたい清潔空間に適している。正答
- ウ第3種換気方式は、給気と排気の両方を機械換気で行う方式であり、室内を正圧・負圧どちらにも設定でき、最もエネルギー消費が少ない換気方式として事務所建築に広く採用されている。
- エ自然換気(自然採換気)は、機械換気より確実な換気量を確保できるため、事務所衛生基準規則において自然換気のみで換気量を満たすことが原則として推奨されている。
- オ換気回数(時間当たりの換気回数: ACH: Air Changes per Hour)は室内の汚染物質濃度の管理に用いられる指標であり、換気回数が高いほど単位時間当たりに室内空気が外気と入れ替わる量が多くなる。
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正しいのはイです。第2種換気方式は給気を機械(送風機)で行い・排気は自然に委ねる方式です。機械で空気を送り込むため室内が外気より高い気圧(正圧)になり、外からの汚染空気の侵入を防げます。そのため手術室・クリーンルーム・無菌室など清潔さが求められる環境に適しています。
アは誤りです(第1種は給排気ともに機械)。ウも誤りです(第3種は排気のみ機械)。エも誤りです(自然換気は安定した換気量の確保が難しい)。オは正しい内容です。本問での正答はイです。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 「給気のみ機械」という記述は第2種換気の説明です。第1種換気方式は給気・排気の両方を機械換気で行う方式です(「1(一)種全部機械」と覚えると混乱しません)。全熱交換器(ロスナイ等)を組み込むことで排気の熱を給気に回収でき、省エネ性が高いため病院・工場・大規模オフィス等に用いられます。
- イ(正): 第2種換気方式(機械給気・自然排気)により室内が正圧(プラス圧)になるため、隙間から外気が侵入することなく、クリーンな状態を維持できます。手術室・ICU・クリーンルーム・製薬工場の清潔区域等に適しています。
- ウ(誤): 第3種換気方式は排気のみを機械換気で行い、給気は自然換気(給気口・隙間)に委ねる方式です(「3(三)種排気のみ機械」)。室内が負圧になるため、汚染物質が外に漏れにくいという特徴があり、トイレ・浴室・厨房・排気が必要な作業場に適しています。エネルギー消費が最も少ないのは第3種(排気機械のみ)ですが、第1種(全熱交換器付き)もエネルギー効率が高い場合があります。
- エ(誤): 自然換気は風向・風速・室内外温度差等の自然条件に依存するため、機械換気より換気量が安定しないという欠点があります。事務所衛生基準規則は「機械換気装置を設ける場合は一定の換気量を確保すること」を求めており、自然換気を優先する規定ではありません。
- オ(正): 換気回数(ACH)は「1時間当たりに室内全容積を外気と入れ替える回数」を示す指標です。例えばACH=6であれば、室内の空気が1時間に6回全量入れ替わる(10分に1回)ことを意味します。一般に事務所では6〜10回/時間程度が推奨されます。
【理論的背景】
換気方式の分類(第1〜3種)は建築基準法に基づく日本特有の分類体系です。各換気方式は給気・排気の機械/自然の組み合わせにより異なる圧力状態を室内に形成し、その圧力状態が適切な設置場所を決定します。
換気方式の分類(3種類):
| 種別 | 給気 | 排気 | 室内圧力 | 適用場所 |
|---|---|---|---|---|
| 第1種換気 | 機械(送風機) | 機械(排風機) | 正圧・負圧・中立 設定可能 | 病院・工場・大規模オフィス・全熱交換型空調 |
| 第2種換気 | 機械(送風機) | 自然(給気口・隙間) | 正圧 | 手術室・クリーンルーム・無菌室・製薬工場清潔区域 |
| 第3種換気 | 自然(給気口・隙間) | 機械(排風機) | 負圧 | トイレ・浴室・厨房・化学実験室・ヒューム発生箇所 |
圧力と換気の目的の対応:
- 正圧(外気圧より高い): 外から内への空気の流入を防ぐ → 清潔空間の維持 → 第2種
- 負圧(外気圧より低い): 内から外への空気の漏れを防ぐ → 汚染物質の拡散防止 → 第3種
- 中立(内外の圧力差がない): 特定の要求がない場合 → 第1種の一形態
医療施設における換気圧力の実例:
- 手術室・ICU(清潔エリア): 正圧(第2種的運用)→ 外からの菌・塵埃の侵入防止
- 結核病室・感染症病室: 負圧(第3種的運用)→ 室内の感染性飛沫核の室外漏出防止
- 廊下(一般エリア): 中立
【実務・条文構造】
換気に関する法令・基準:
1. 建築基準法第28条の2・施行令第20条の2〜9: 居室の換気設備の規定。換気方式の定義と設計基準。シックハウス対策のために必要換気量(0.5回/時間以上)が規定されている。
2. 事務所衛生基準規則第3条(換気):
- 空気調和設備または機械換気設備を設けている場合: CO₂濃度1,000ppm以下を維持
- 一酸化炭素(CO)濃度: 10ppm以下
- 上記基準を満たすための換気量を確保すること
3. 必要換気量の算出:
基本式: Q = M / (Ci - Co)
- Q: 必要換気量(m³/h)
- M: CO₂発生量(m³/h)(人の呼吸量×人数: 1人当たり約0.020〜0.022m³/h)
- Ci: 室内許容CO₂濃度(1,000ppm = 0.001)
- Co: 外気CO₂濃度(約400ppm = 0.0004)
例: 在室者1人当たりの必要換気量 = 0.020 ÷ (0.001 - 0.0004) = 0.020 ÷ 0.0006 ≈ 33.3 m³/h/人
4. 全熱交換器(エネルギー回収型換気):
第1種換気に全熱交換器(ロスナイ等)を組み込むことで、排気の熱エネルギーと水分(潜熱)を給気に回収し、冷暖房エネルギーを大幅に削減できます。省エネ建築に広く採用されています。
【試験での位置づけ】
換気方式の問題では「第1種: 給排気ともに機械」「第2種: 機械給気・自然排気・正圧・クリーンルーム向き」「第3種: 自然給気・機械排気・負圧・トイレ・厨房向き」の三分類の正確な記憶が重要です。アのように「第1種を給気のみ機械」とする選択肢、ウのように「第3種を給排気ともに機械」とする選択肢は、各種別の定義を入れ替えた典型的な引っかけです。第2種換気の「正圧→清潔空間」という対応関係は実務でも重要であり、医療施設・食品工場・クリーンルームの換気設計の基本知識です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 一般住宅に広く使われているのは主に第3種換気(機械排気・自然給気)です。特にシックハウス対策のために2003年(平成15年)以降、居室への機械換気設備の設置が義務化されており、多くのマンション・戸建て住宅では換気回数0.5回/時間以上を満たす第3種換気(換気扇)が設置されています。
- イ: 正圧維持の具体例として、ICチップ製造のクリーンルームでは、わずかな塵埃も製品不良の原因となるため、第2種換気により室内を正圧に保ち、隙間からの外気(粉塵)の侵入を完全に防ぎます。清浄度クラス(ISO 14644-1)によってはULPAフィルター・ラミナーフロー(層流)による完全置換換気が用いられます。
- ウ: 第3種換気(機械排気・自然給気)の代表的な適用例はトイレです。トイレの臭気・湿気・細菌を室外に排出し、廊下・周辺室に広がらないよう負圧に保つことで衛生的な環境を維持します。厨房・ガレージ(排気ガス)・有機溶剤使用場所でも同様の理由で第3種換気が適用されます。
- エ: 自然換気は風・熱浮力(暖かい空気が上昇する「温度差換気」)を利用するため、外気温・室内外温度差・風向・建物の開口部配置に大きく依存します。夏季・無風の日には換気量が著しく低下し、CO₂濃度が1,000ppmを超えることがあります。このため、事務所衛生基準規則は機械換気設備の使用を前提とした換気基準を設けています。
- オ: 換気回数(ACH)は室内空気質管理の基本指標です。感染症対策(COVID-19等)の文脈でも「1時間に6回以上の換気(ACH≥6)」が医療施設・学校等で推奨されました。ACHを上げるほどCO₂や汚染物質は希釈されますが、冷暖房エネルギーコストも増加します。
【根拠】建築基準法施行令第20条の2〜9(換気設備の基準)。換気方式(第1〜3種)の定義は建築設備基準に準拠。
【補足】第1種換気: 給排気ともに機械。第2種換気: 機械給気・自然排気・正圧→クリーンルーム。第3種換気: 自然給気・機械排気・負圧→トイレ・厨房。自然換気は換気量が不安定。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 建築基準法施行令・建築設備の換気設計基準(第1〜3種換気の定義は建築基準法に準拠)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。