衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問44:採光・照明
職場における照明設計に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア直接照明は照明効率が高く、局所的に高い照度を得やすい利点がある一方、光源が直接視野に入ることによる不快グレア(まぶしさ)が生じやすく、影が強く出るという欠点がある。
- イ間接照明は、光を天井や壁に反射させて室内全体を照らす方式であり、直接照明に比べて柔らかな光質を得やすいが、照明効率が低く、同じ照度を得るためにより大きな電力を必要とする。
- ウグレア(まぶしさ)は、視野内に過度に明るい光源や反射光が存在する場合に生じ、視力低下・目の疲労・安全上のリスク(見えにくくなることによる事故等)を引き起こすことがある。
- エ作業面の照度を高くするほど視力・作業能率が常に向上するため、照度は際限なく高い方がよく、事務所衛生基準規則の照度基準はあくまでも最低限であり、照度の上限規定は存在しない。正答
- オ作業面の照度だけでなく、作業面と周囲(作業台・床・天井等)との間の輝度比(コントラスト)が適切であることが重要であり、作業面が周囲と比べて極端に明るすぎたり暗すぎたりすると眼精疲労の原因となる。
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誤りはエです。「照度は際限なく高い方がよい」という記述が誤りです。照度が高すぎるとグレア(まぶしさ)が生じ、視力・作業能率が低下します。また高照度でのちらつき・疲労感が増す場合があります。適切な照度範囲があり、過度な照度は好ましくありません。
また「照度の上限規定は存在しない」という部分も、照明設計ではグレア防止・適切な輝度比を目標とした上限的な配慮が必要であることを否定するため実質的に誤りです。照明は「適切な量と均一性」が重要であり、高ければ高いほど良いわけではありません。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 直接照明(光源の光が直接作業面に当たる方式)は照明効率が高い(光のロスが少ない)ですが、光源が視野に直接入る場合に不快グレアが生じやすく、局所的に影が強くなる欠点があります。デスクワークでは蛍光灯や電球が直接視野に入らないよう配置することが重要です。
- イ(正): 間接照明は天井・壁への反射を利用するため、柔らかく均一な光を得やすく、グレアが少ないという利点があります。一方、反射の過程で光エネルギーが消費されるため照明効率が低く、同じ照度を得るためにより多くの電力が必要です。ホテルのロビー・展示スペース等に多く用いられます。
- ウ(正): グレアには「不快グレア(不快感・視力低下)」と「失能グレア(目の前が見えなくなる)」があります。いずれも視作業の妨げとなり、工場・建設現場・道路での失能グレアは事故の直接原因となります。グレア防止対策として、光源のシールド(ルーバー・グローブの装着)・作業者の視線方向への光の制限が行われます。
- エ(誤): 照度が過剰になると、グレア・ちらつき・周囲との輝度差の増大により視力・作業能率が低下します。視覚生理学的に、ある照度レベルを超えると視作業能率の向上が頭打ちになり、不快感・疲労感が増す「照度の閾値」が存在します。「照度は高いほどよい」「際限なく高くすべき」というのは誤りです。適正な照度範囲内での管理が重要です。
- オ(正): 照明設計では作業面の照度だけでなく「作業面と周囲との輝度比(コントラスト)」の管理が重要です。一般的に作業面(精密作業)と周囲環境の輝度比は3:1以下、視野の輝度比の上限は10:1程度が目安とされています。作業面だけが極端に明るいと、周囲を見るたびに目が明暗順応を繰り返して疲労します。
【理論的背景】
照明の目的は「視認性の向上(必要なものが見えるようにすること)」と「快適性の確保(目の疲労・不快感を防ぐこと)」の両立です。単純に照度(lux)を上げるだけでは不十分であり、照度の均一性・グレア制御・輝度比の管理・色温度・演色性などの複合的な要因が重要です。
グレアの分類:
1. 不快グレア(Discomfort Glare): 視野内の高輝度光源による不快感・目の痛み。視力低下は軽微だが長時間の露出で眼精疲労が増す。
2. 失能グレア(Disability Glare): 視野内の高輝度光が瞳孔内の光散乱を引き起こし、コントラスト感度が著しく低下する状態。自動車の対向車のヘッドライトが典型例。作業現場での安全事故の原因となる。
3. 反射グレア(Reflected Glare): ディスプレイ・金属面・光沢紙等からの鏡面反射による眩しさ。VDT作業での問題。
照度と視作業能率の関係(フェヒナーの法則):
一般に視作業能率は照度の対数に比例して向上しますが、一定の照度以上では向上が鈍化(頭打ち)します。さらに過剰な照度ではグレアと不快感が増して能率が低下します。適正照度範囲は作業の精密度・対象物のコントラスト・作業者の年齢・視力等によって異なります。
【実務・条文構造】
事務所衛生基準規則(令和4年12月改正後の照度基準):
- 一般的事務作業: 照度 300lx以上(改正前: 300lx以上 [精密作業は1,000lx以上])
- 付随的事務作業(倉庫・通路等): 照度 150lx以上
なお、平成17年改正前の安衛則第604条(廃止)では精密・普通・粗の3区分(750lx以上・300lx以上・70lx以上)が規定されていましたが、現在の事務所衛生基準規則は上記2区分です。試験では現行の数値(300lx以上・150lx以上)を使用することに注意してください。
照明設計の推奨基準(JIS Z 9110等):
- 精密作業(組立・検査・製図等): 1,000〜2,000lx
- 事務作業(書類作成・パソコン作業等): 500〜1,000lx
- 一般作業: 200〜500lx
- 通路・廊下: 100〜200lx
輝度比の推奨値:
- 作業面と周囲環境: 3:1以下(作業面が周囲より3倍明るい程度まで)
- 視野全体の最大輝度比: 10:1以下
- 作業面と直接視野外の高輝度光源: 40:1以下
これらの輝度比基準は、視野内の明暗差が大きすぎると瞳孔の調節が追いつかず、視力低下・疲労が生じるという生理学的根拠に基づいています。
【試験での位置づけ】
照明設計の問題では「直接照明と間接照明の違い(効率・グレア・光質)」「グレアの定義と影響(視力低下・疲労・事故)」「適切な照度範囲の存在(高すぎもよくない)」「輝度比の管理」が出題されます。エのように「照度は高いほどよい・上限は不要」という誤りは、照度の閾値効果・グレアの概念を否定する典型的な引っかけです。また改正後の照度基準(事務所則: 300lx以上・150lx以上)を確認することが重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 直接照明のグレア対策として、ルーバー(遮光板)・ディフューザー(拡散板)・グローブ(覆い)の取り付けが有効です。LEDシーリングライトにはルーバー内蔵型・乳白色カバー型があり、グレアを大幅に低減しています。また光源の取付け角度・高さを工夫することで直接視野に光源が入らないよう配置することも重要です。
- イ: 間接照明の演色性(色の見え方)は、使用するランプ・光源の種類によって異なります。白熱灯(演色指数Ra=100に近い)は自然光に近い色再現性を持ち、博物館・美術館では白熱灯または高演色LEDが好まれます。蛍光灯(Ra=70〜90程度)は色再現性が白熱灯より低く、作業環境では Ra=80以上が推奨されます。
- ウ: 失能グレアは夜間運転・航空・海上交通での重大事故原因として知られています。職場での具体例として、製造ラインでの溶接アーク光・クリーンルームの強烈な紫外線照明・暗所での点検ライトの直接照射等が挙げられます。ハード面のグレア対策(シールド・ルーバー)とソフト面(安全ガラス・遮光保護具の着用)の両面からの対策が必要です。
- エ: 照度の過剰(オーバーライティング)は、省エネの観点からも問題です。適切な照度範囲内でのLED照明の活用は、過剰照明を避けつつ高効率で適正照度を維持できます。照度センサー・人感センサーの活用により、必要な場所・時間だけ必要な照度を確保するインテリジェント照明制御も普及しています。
- オ: 輝度比の管理は特にVDT(ディスプレイ)作業で重要です。ディスプレイ画面の輝度と周囲の壁・机の輝度比が大きいと、画面から周囲に視線を移すたびに明順応・暗順応が繰り返されて疲労します。ディスプレイの輝度を下げ・周囲照明を適切に調整することで輝度比を最小化することが推奨されています。
【根拠】医学的事実(視覚生理学・照明工学)。事務所衛生基準規則(令和4年改正後の照度基準: 300lx以上・150lx以上)。JIS Z 9110(照明設計推奨照度基準)。
【補足】直接照明は高効率・グレア大。間接照明は柔らかい光・効率低。照度は高すぎると逆効果(グレア・疲労増)。作業面と周囲の輝度比管理が重要(3:1程度)。現行照度基準: 一般事務作業300lx以上・付随的事務150lx以上。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(視覚生理学)・事務所衛生基準規則。高照度の過剰な光は眩惑・不快グレアにより視作業能率を低下させる。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。