衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問62:情報機器作業
厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年改訂)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア情報機器作業には、パソコンを用いた作業のほか、タブレット端末・スマートフォン・監視モニター等の情報機器を使用する作業が含まれる。
- イ一連続作業時間は1時間を超えないようにし、連続作業の間に10〜15分の休止時間を設けることが推奨されている。また、1時間の連続作業中に1〜2回の小休憩(1〜2分程度)を取ることも推奨される。
- ウディスプレイ画面上の照度については、500ルクス以上に維持することが推奨されており、それ以下では作業効率が低下するとされている。正答
- エ健康診断として、配置前検診および定期検診(1年以内ごと)には、眼疲労・筋骨格系症状の有無・既往歴の調査に加えて、視力・調節機能などの眼科的検査が含まれる。
- オ机・椅子の高さ・座面の調整、キーボード・マウスの位置設定など、作業者の体格・作業姿勢に合わせた作業環境の個別調整が推奨されている。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。
誤りはウです。ディスプレイ画面上の照度基準は「500ルクス以下」(上限値)であり、「以上」ではありません。照度が高すぎると画面への映り込み(グレア)が増加して文字が読みにくくなるため、画面上の照度には上限が設けられています。書類・キーボード面の照度は「300ルクス以上」(下限値)なので、方向(以上/以下)の区別が重要です。
ア(対象機器の範囲)・イ(連続作業時間と休憩)・エ(健康診断の内容)・オ(作業環境の個別調整)はすべて正しい内容です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 令和元年改訂のガイドラインでは対象作業が拡張され、パソコンだけでなくタブレット端末・スマートフォン・マルチメディア端末・監視モニターなど、広義の情報機器を用いる作業全般が対象となりました。モバイルデバイスの普及に対応した改訂です。
- イ(正): 連続作業時間の上限を「1時間以内」とし、その後10〜15分の休止時間を確保することが推奨されています。さらに1時間の連続作業の中でも1〜2回の小休憩(1〜2分程度の目の休息・軽いストレッチ)が推奨されており、眼精疲労・肩こり・腰痛の予防につながります。
- ウ(誤): ディスプレイ画面上の照度の推奨値は「500ルクス以下」(上限値)です。「500ルクス以上」は誤りです。画面への外光・照明の映り込みを防ぐため上限が設けられています。書類・キーボード面の照度は「300ルクス以上」(下限値)であり、画面と書類面で「以下」「以上」が逆になることが引っかけポイントです。
- エ(正): 配置前検診(新たに情報機器作業に従事する際)および定期検診(1年以内ごとに1回)では、自覚症状調査・既往歴・眼科的検査(視力・調節機能・近視・遠視・乱視等)・筋骨格系の状態確認が含まれます。
- オ(正): 机・椅子の高さ調整(肘が直角に曲がる高さ・足裏が床につく座面高さ)・ディスプレイの高さ・距離(視距離40cm以上・眼と画面上端の角度)・キーボード・マウス位置の個別調整がガイドラインで推奨されています。
【理論的背景】
情報機器作業(VDT作業)は1990年代以降、事務職を中心に急速に普及し、眼精疲労・頸肩腕症候群・腰痛・メンタルヘルスへの影響が問題化しました。厚生労働省は2002年にVDT作業ガイドラインを策定し、令和元年(2019年)にスマートフォン・タブレット等の多様なデバイスの普及に対応した「情報機器作業ガイドライン」として改訂しました。
照度と眼への影響:
ディスプレイ画面上の照度に上限が設定される理由は、近代の液晶・有機ELディスプレイが自発光デバイスであるためです。周囲の照明が強いと画面に外光が映り込んで視認性が低下し、コントラスト低下→眼の調節緊張→眼精疲労という悪循環が生じます。一方で作業書類・キーボード面は十分な照度(300lx以上)がないと暗く見えにくくなるため、下限が設定されます。
【実務・条文構造】
情報機器作業ガイドラインの主要規定(令和元年改訂):
作業時間管理:
| 規定事項 | 基準値・推奨値 |
|---|---|
| 一連続作業時間 | 1時間を超えない |
| 連続作業後の休止時間 | 10〜15分 |
| 連続作業中の小休憩 | 1時間中に1〜2回(1〜2分程度) |
照度基準:
| 測定位置 | 基準値・推奨値 | 方向 |
|---|---|---|
| ディスプレイ画面上 | 500ルクス | 以下(上限) |
| 書類・キーボード面 | 300ルクス | 以上(下限) |
作業環境の物理的設定:
- ディスプレイと眼の距離: 40cm以上(画面サイズに応じて調整)
- ディスプレイ上端の位置: 眼の高さと同等以下(見下ろす姿勢が標準)
- グレア対策: 高輝度光源・窓が視野に入らない配置・画面の傾き調整・ブラインドの活用
健康診断の構成(情報機器作業ガイドライン別表):
配置前検診・定期検診(1年以内ごと)の内容:
1. 既往歴・業務歴の調査
2. 自覚症状(眼疲労・首肩腕腰の不快感・精神症状)の調査
3. 眼科的検査(視力・調節機能・屈折・眼位等)
4. 筋骨格系の機能検査(頸肩腕・腰部)
5. ストレス症状等の調査
【試験での位置づけ】
情報機器作業ガイドラインの問題では「ディスプレイ画面上500lx以下(上限)と書類面300lx以上(下限)の区別」「連続作業1時間以内・休止10〜15分」「対象機器(スマートフォン・タブレット等も含む)」「健康診断(年1回・眼科的検査を含む)」が最頻出です。ウのように「500lx以上」と「以下」「以上」を逆にした選択肢は非常によく出題される引っかけパターンです。画面への映り込み防止=上限(以下)という論理的理解で区別することが重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 令和元年の改訂前(VDTガイドライン・2002年)は主にCRTディスプレイ・液晶モニターを接続したパソコンが対象でしたが、スマートフォン・タブレットの普及に伴い対象を大幅に拡張しました。特にスマートフォンを業務で使用する機会が増えたテレワーク・フィールドワーク従事者への適用が明確化されています。
- イ: 1時間の連続作業後に10〜15分の休止を設けることは、眼の調節筋(毛様体筋)の疲労回復と、頸肩部・腰部の筋肉の血流回復のために重要です。この際、「遠くを見る(窓の外の景色など)」ことで近見調節の解除(毛様体筋の弛緩)を促すことが眼精疲労予防に特に有効です。
- ウ: ディスプレイ画面上の500lx以下という基準は、液晶・有機ELディスプレイの自発光輝度(通常200〜400cd/m²)に対して周囲照度が過剰にならないための基準です。照度500lxを超えると画面のコントラスト比が低下し、文字判読のために眼を緊張させる時間が増えます。オフィスの一般照明を300〜500lxに設定し、作業台の局所照明(手元照明)で書類面を補うことが推奨されます。
- エ: 情報機器作業の健康診断で検出される主な異常は「視力低下・調節機能低下」「頸肩部の筋肉緊張・圧痛」「腰部の柔軟性低下」です。これらを早期に発見して作業環境の改善・作業時間の調整・治療への誘導を行うことが定期検診の目的です。
- オ: 座面高さは「足裏が床に完全に接地し、膝関節が約90度に屈曲する高さ」が基本です。デスクの高さは「肘を直角に曲げた状態でキーボードを自然に操作できる高さ」が目安です。身長差が大きい場合は調整可能な椅子・フットレストの活用が推奨されています。
【根拠】厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日付基発0712第3号)。
【補足】ディスプレイ画面上の照度=500lx以下(上限)。書類・キーボード面=300lx以上(下限)。連続作業時間=1時間以内・休止10〜15分。対象機器=スマートフォン・タブレットも含む。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日付基発0712第3号)。ディスプレイ画面上の照度は「500ルクス以下」(上限値)が規定されており、「以上」は誤り。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。